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勇者召喚と聞いたのに目覚めたら魔王の嫁でした  作者: 大豆小豆
第1章魔王妃になんかなりたくない
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閑話:メイドたちの思惑

前話で記載した修正箇所について、後書きに記載しました。

 マイナたちが大使館に住むことが決まって、大使館には備え付けの設備が用意されていたのだが、マイナたちは元は町娘でメイドとしても働いていて、一箇所に定住する生活に慣れている。

 そのために、冒険者として長期間過ごした者たちとは違って生活拠点で快適に住み続けるのにいろいろと買い足したいものがあった。

 サーフディアに着いて3日目、部屋の雰囲気を自分の好みに合ったものに変える調度品や衣類を購入して片付けも終わって、ようやくマイナたちは冒険者としての活動を再開した。


 育った環境や仕事からして、マイナたちは元々それほどレベルが高かった訳ではないが、魔王の眷属(けんぞく)の称号を得てレベルに補助が入り基本ステータスが急激に伸びるようになって、冒険者としての活動により嵩上げして、現在はレベル400前後のE級になっていた。

 冒険者としては一人前とみなされるが、それほど強い訳ではない。

 それが国王から直々に王家とセイラの支援を命じられ、早急にレベルを上げて侵略者との実戦に耐えられる強さを手に入れることがマイナたちの喫緊(きっきん)の課題となった。


 当面、マイナたちの冒険者の活動再開はレベルをどうやって早く上げるか、その方策を探ることが中心になる。

 大使館に住んでいることで衣食住は確保されており、依頼の達成料による生活資金獲得を考えなくてよいので制約もなく、むしろ幾許(いくばく)かの費用で強くなることができるのならば、王家からの支援も期待できる恵まれた環境が整備されていて、マイナたちは冒険者ギルドで自分たちのレベル上げに役に立ちそうな依頼がないかを探しに来ていた。


「んー、分かんないわねえ。新しい土地に来て周辺の地理と地域の危険度が分かってないから、討伐対象の難易度の割に達成料が高かったり安かったりしているのが、依頼料として妥当かどうかの判断すら付かないよ。」

 ノーメがマイナに(こぼ)す。

 サーフディアはガルテム王国の王都より気温が高く雨量も多いために植生や生き物の生態が結構違っており、それに応じて魔獣や魔物の種類も違っているのだが、ガルテム王国の王都しか知らないマイナたちには予備知識がない。

 取ろうとしているリスクの度合いが分からずに困惑していた。


「下手に危険度がわかりもしない依頼を受けて強くなろうとするよりかさ、ティムニアさんたちに相談して、地域の情報をサポートしてくれる人か私たちの訓練をしてくれる人を探して雇ってもらうのが良いんじゃない?

 それで経費がかかったとして、それも込みでティムニアさんに頼めば良いんじゃん。」

 マイナもユルアの意見に賛同して、ギルドでは拠点移動の登録だけをして大使館へと戻り、ティムニアに相談することになった。


 ティムニアはすぐに大使館の職員に問い合わせて、地元冒険者の情報など持ち合わせていなかった大使館はサーフディアに相談して、めぼしい人物を数人選定してくれたのだが、ティムニアはそのうちの1人に目を付けた。


「マイナさん、良い人がいるわ。」

 もらった情報のファイルを渡しながらティムニアがマイナに情報を開示する。

「セルジュさんといって、40歳と年は少し召してられるんだけど、S級冒険者で剣と魔法に精通している方よ。何より努力して実力を積み重ねられた方だし、アスモダ方面の土地鑑も持っておられる。

 ただね、話を持っていった場合の相手の反応は未知数だわ。」


 選んでくれたのがまさかのS級冒険者。

 王国がやることだし、これくらい平気なのかもしれないが、雲の上の存在に訓練を付けてもらうという提案にマイナたちは身構えた。

 それに、ティムニアさんがやや丁寧な言葉使いでその人を紹介しているのが、何だか気になる。

 マイナは恐々(こわごわ)とティムニアさんからファイルを受け取り、セルジュという人のデータに目を通し、書いてある内容に思わず生唾を飲んだ。

「あ、あの。この人を私たちが説得しなければいけないんですか? 」

 マイナが困惑して指さした箇所には、ガルテム王国の人間ならば気後れして当然の情報が書き込まれていた。


”セルジュ 元の姓はタールモア ガルテム王国ケイアナ王太后様の兄君”


「やっぱり身構えてしまいますか。

 でも、もし協力してくれたならば、絶対にこの人選が最適ですよ。」

 タールモア家の遺伝的な強さを引き継いだのは王太后だが、それなしでS級になっているのなら、相当な努力をした人に決まっている。それにテルガの町の出身だから、アスモダ方面の知識量も豊富だろう。

 ティムニアの言葉にマイナも力なく頷いた。

 理屈はそのとおりなのだ。躊躇(ためら)っていても仕方がない。

翌日、マイナたち4人は恐る恐るセルジュの元を訪ねることにした。


◇◆◇◆


 セルジュの元を尋ねて、家から出て門へと向かってくる人物を遠目に見て、最初マイナたちはダイカル国王様がいると思った。

 白い小ぶりな角や青い目は王太后様と同じだったが、すらりとした長身にやや黒みを帯びた銀髪の頭部が国王様にそっくりで、顔立ちも似た男前だ。ダイカルと並んだら誰もが親子と思うだろう。


「ガルテム王国の大使館から相談があると聞きましたが、どの様なご用件でしょうか。」

 セルジュは挨拶を終えると応接間に案内し、テーブルを挟んで向かい合うと、落ち着いた様子でマイナに尋ねてきた。

(渋いテノール。)

 マイナはこれでもかというイケメン振りに溜め息を吐きながら、自分たちを鍛えて欲しいという要望を説明した。


「……普通、S級冒険者がそんなことはしないのはご承知の上ですね。

 だが、大使館から声が掛かるほどの事情があるのでしょう、ご説明頂けるでしょうか。」

「引き受けて頂いた後でないと詳しい事情は話せないのです。

 ただ、私たちは魔王の眷属の称号があり、国王様から受けた勅命(ちょくめい)には2人きりで王都を出られた王太后様を護ることが含まれていて、その勅命を果たすためにも、私たちはできる限り早く強くなる必要があるんです。」


 セルジュは王太后様という言葉に反応して考え込んだ。

「王太后様は充分にお強いでしょう。それでも護衛が必要だと仰る? 」

 セルジュの質問にマイナが頷く。

「分かりました、お引き受けしましょう。でも、察しておられると思いますが、私の鍛錬方法は王太后様と共に作り上げたものです。厳しいですよ。」

 いきなり凄みを増したセルジュの笑顔に、マイナたちは引き攣りながらも頷いた。


 報酬などの条件を決めて合意に至った後に、マイナは詳しい事情を打ち明けた。

 サーフディアのルーリア女王に伝えた情報に加えて、ウッドリーフでダイカルに使われた香油の研究を行っていること、獣人の国アスモダに向けてケイアナたちが向かっていることを伝えると、セルジュの表情が変わった。

「それで、マイナさんたちは今後、どの様な活動をなさる予定ですか。」


 ダイカルからの命令があるために、マイナは王太后に同行するセイラの事情には()えて触れなかったが、アスリーのことがあるために、香油と関係があることだけは(ほのめ)めかすことにした。

「王太后様に同行している人に関わる問題があるので、まずはここでの研究成果を待ちながら王太后様たちからの連絡を待つつもりでいます。」

「国王様と同じ香油を使った方が何らかの影響を受けたまま、王太后様と同行しておられるのですか。それは、大丈夫なのですか? 」

 マイナはその方にはダイカルのような影響はないと請け合い、セルジュは国王の愛妾(あいしょう)か、ひょっとするとアスリー本人が実は存命で内密に王太后に同行しているものと推測し、国王と(ねや)を共にできるだけの十分な戦力が王太后を護っているために緊急にケイアナのところへ駆け付ける必要がないのだと考えて、マイナの意向どおりにサーフディアで鍛錬をすることで了承した。


◇◆◇◆


 翌日からマイナたちへの訓練は開始されて、マイナたちは這うような様子で大使館からセルジュの元を行き来するようになった。


 しばらくして、ミゼル商会から使者が来てケイアナから連絡を受けたマイナたちは、アルザの実の研究が進展していて、結果が出次第にアスモダに向けて出発することを相談するようになっていて、話を聞いたセルジュは、アスモダ方面で起きているという魔獣や魔物の移動について情報を収集しておくよう、マイナたちに助言を与えた。

 助言に従ってマイナたちが情報の収集を始めて間もなく、大使館が得たのはテルガの町への襲撃の情報と、セイラが国王の婚約者であるとの王家の発表だった。


 威城のメイドのメンバーは、ダイカル本人からセイラの事情について説明を受けて、セイラの霊体が男であることをすでに知っていただけに、この発表に驚いた。

「わお。国王様がそれでも良いって言ってんのなら、セイラ、もう男に戻るのを諦めても良いんじゃないかな。」

「ええー? やっぱり、男の人が相手だとぉ、セイラも抵抗があるんじゃなーい? 」

 ノーメがこの際玉の輿に乗ってしまえと主張すると、シャラがそれは可哀想だと言ってセイラを擁護する。


「冗談はともかく、テルガでヴァイバーンまで出るような情勢なら、私たちのレベル上げももっとハードにしてアスモダに行くことを考えた方が良いかもしれないわね。」

 嫌そうなメンバーの顔を見ながらマイナがそう締めくくって、その日の訓練の開始前にセルジュにその情報を伝えて、アスモダへ向けて出発するまでの訓練の仕方と出発後の訓練方法について相談した。


「話を聞いた感じから判断して、きっと今のあなたたちだけでは魔獣や魔物に()されて途中で前に進めなくなる。

 そういう情勢なら私も一緒に行きましょう、私も久しぶりに妹に会うのが楽しみです。」

 セルジュはそう言うと、君たち、頑張れよ、とマイナたちに凄みのある笑顔を向けた。


◇◆◇◆


 ルーリア女王の研究所では、アルザの実を使った研究が急速に進展していた。

 ライラは、研究所の担当者として紹介された女性エグリスに香油の記憶を伝え、エグリスは得た記憶とサファから提供されたデータから残る2種類の成分を特定して調剤できるところまでこぎ着けていた。


 ただ、香油を正確に再現したとして、アスリーのように霊体が分離したり、イカルのように精神干渉を受ける可能性があるのに、その仕組みも制御方法も見当が付かないでいた。

 何が起こるか、どうやったら制御できるが分からないのに、効果を確認するために実験対象に人を使うことが必要で、気軽に実験を行うことができないでいた。

 下手に香油を再現してしまうと、制御不能の事態が発生してしまう恐れがあるからで、結局のところ、アルザの実の特性が分かっていないと対処が難しいという振り出しに戻ってきてしまった。


「これ、やはりガズヴァル大陸へ出向くなりして、何か情報を掴まないと前へ進めないんじゃないかな。」

 ライラとサファが相談しているところへエグリスが参加する。

「もしガズヴァル大陸へ行くのならば、私も連れて行って。研究の担当者として行き詰まったままにはできないわ。」


 こうして、ライラとサファ、エグリスの3人もマイナたちと合流することとなり、ダイカルからレベルを上げるよう指示を受けていたライラとサファは、遅れて訓練に加わることとなった。

 だが、2人が魔王の眷属で得た能力はマイナたちと違って直接戦闘に役立つものではなかったために、出発前に行った1週間の訓練で2人は毎日3回ほど意識が飛ぶハメになって、出発する際には死刑台に引き立てられる囚人のような顔付きをしていた。


 

深くお詫び申し上げますm(_'_)m


第50話 場所:冒険者ギルドの戦闘開始場面

 侵入者への先制攻撃に落雷の轟きを参加させています。

 理由:落雷の轟きの存在を忘れていました。


第53話 場所:セイラがヴァイバーンを倒した直後

 冒険者たちがセイラが王妃となっていないことを相談したメンバーからカウスを除外

 理由:カウスはセイラの事情を概ね知っています。書いた当時、違和感を覚えながら確認を怠りました。 


それと、修正箇所の追加です。

閑話:アイザルの思惑

 ジアールは下のお兄さん → 弟さん

 理由:設定を兄2人から兄と弟に変えたのを忘れていました。


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