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勇者召喚と聞いたのに目覚めたら魔王の嫁でした  作者: 大豆小豆
第1章魔王妃になんかなりたくない
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第38話 キャセラズキャンプでは内緒で魔法教授も取り扱っています

タイトルつけました。

あと、しばらくぶりに今話に対する誤字報告を頂きました。

ありがとうございます。


各所に編集漏れの意味の分からない言い回しがや舌足らずな文章があって、誠に申し訳ありません。

見直していると投稿が深夜になりそうだったので、書き上げ即投稿を強行したのが拙かったです。

特に、「女4人で食事を摂っていると目立って”ラフ等”と近寄ってこようとする男性も……」

いくら考えても何と書こうとしたのか分かりませんでした。

反省しています。

併せてちょこちょこと加筆・修正しています。

ご了承ください。


 新人冒険者の護衛依頼が終わって俺とティルクは町をぶらついていた。依頼報酬は口座振込になっているため、今、俺たちが持っているお金は昨日ミシュルがくれた銀貨5枚だけだ。

 俺とティルクの服は母様が買ってくれるだろうし、持っているお金は好きに使える。

 この世界に来て、必要な物は王家から支給してもらう生活を続けていたので、異世界生活5か月目にしてお金を使うのは初めてだ。

 何を買おうかわくわくとして店を見て回るのだが、旅先で必要な物なんてそんなにない。いきおい、ウィンドーショッピングが中心になるのだが、これまで地球で買っていたようなスナックや漫画がある訳でもなく、何を見ていいのかが分からない。

 ティルクの興味がある物が冷やかしの中心になった。


「姉様、あの耳飾り、ちょっと可愛い。」

 で、ティルクの関心のある物といえば、やっぱり女の子用の小物なんかが中心になる訳で、最初は仕方なしに見ていたのだが、王城で女の子として過ごした時間があるせいか、これが結構楽しい。

「うーん、それがちょっと可愛いのは分かるけれど、もう少し色違いがあったら見てみたかった……え、あるの?

 わあ、おじさん、見せて見せて。」

 道ばたの露天でたくさんの商品を出すとかっぱらいに盗っていかれたときに身動きが取れなくなるので、見本に少ししか出していないそうだ。

 おじさんが出してくれた包んだ布の中に色違いが幾つもあって、2人でしゃがみ込んでおじさんの手元を覗き込んでいたら、それを全部くれ、と後ろから男の声がして金貨を抓んだ指がぬうっと2人の頭の横から割り込んできた。


 人が見ている最中に何を、と少しムッとして脇を見ると、身なりの良い20歳くらいの男がこちらを見下ろしてにこにことしている。

「うん、君たちにならどちらも似合いそうだ。あなたにはこっち、そちらのあなたにはこちらかな。」

 手元に10個くらい受け取った耳飾りの中から2つを選ぶと俺の耳に当てようとする。

「馴れ馴れしいですね。遠慮してもらいましょうか。」

「そう言わないでよ。ちょっと付き合ってくれたら、これ、全部上げるからさ。」

 金持ちのボンボンのナンパか。

 俺は溜め息を吐いて立ち上がろうとしたのだが、その肩を上から押さえて、ねえ、と鼻に掛かった甘えた声を出しながら体を寄せてきて、脇から胸に手を差し込まれて揉まれた。

 みぎゃ!、と思わず尻尾を踏まれた猫のような声が出たが、男は尚も体を密着させてくる。

(しゃがんでいるところを立ち上がれないように上から押さえてのし掛かってくるとは、こいつ、慣れてる。)

 楽しいひとときを台無しにされて腹が立ったので、何か耳元で囁こうとしたのか近づいてきていた頭の後頭部へと手を回して掴んで引っ張って、反対の手でグーで顔にワンパンチを当てた。


 ぎゃっ、と声が上がって押さえつけていた重さが取れて、立ち上がって振り返るとティルクが男の方へ向かおうとしていたところだった。そのままいてもティルクが引っ剥がしてくれたんだろうな。

 鼻を押さえた手の間から血を流している男の後ろには、彼の護衛らしき男が2人ほどいて、剣に手を掛けてこちらを睨んでいたのだが、俺の胸元に吊した白い認識票を見て、げっ、と声を上げた。

「ぼ、坊ちゃん。こいつ、C級の冒険者ですっ。」

 え?、と涙を流しながら鼻を押さえている男が、呆然とこちらを見ていて、手の間から少し見えた鼻が歪んでいたので、俺は、あ、拙い、と思って男の顔へと手を伸ばして鼻を掴むときゅっと位置を修正して、上から回復魔法を掛けておいた。

 うん、元の顔を覚えていないけれど、たぶん、元通りになったんじゃないかな。

 一応、後腐れが無くなったのを確認して、俺はティルクと手を繋いでその場を立ち去った。

 あいつのお陰で、買い物は何も買わずじまいになっちゃったじゃないか。


◇◆◇◆


 宿に帰ると母様とミシュルはもう帰っていて、揃って宿屋一階の食堂で食事をすることになった。

 この宿屋、2日置きにメニューがローテーションになっているみたいで、新味はないけれどまあまあ美味しい。

 大衆食堂形式なので、女4人で食事を摂っていると目立って、絡んでやろうとフラッと近寄ってこようとする男性もたまにいるけれど、よく見える様に首から吊している白と赤の冒険者の認識票を見て慌てて引っ返していく。

 食堂では会話が筒抜けになるため、当たり障りのない会話をして部屋に引き上げた。

 部屋の壁は薄くて、本当なら周りに話し声が聞こえるのだが、ミシュルが暗黒魔法と結界で周りに声が漏れない様にしてくれる。

 便利だな、と思ってミシュルに覚えたいと言うと、まだ早い、とすげなく断られた。


 母様は今日は店を回って話を聞くついでに買い物をしていて、新しい服や肩や肘を護る軽装備を取り出してきて、ティルクと2人、あれこれと着替えさせられては足りない物をチェックされた。

「これからも魔獣は強くなってくるだろうし、最低限の備えはしておかなくちゃね。」

 こんなに大装備をと思ったのだけど、母様にそう言われると言い返せない。

 話題転換に、カウスさんたちと新人冒険者たちに型を教えていることを話すと、母様が含みのある笑顔を見せた。

「良いわね。その子たち、逃がすんじゃないわよ。できる限り親切に教えて取り込みなさい。」

(え、取り込むって何? )

 母様に聞くと、魔王の眷属候補よ、とさらりと言われた。

「魔王妃には不思議と協力者の資質のある人が惹かれてやってくるの。

 惹かれてくるのが男の場合、大抵は夫である魔王が嫉妬して遠ざけちゃうんだけどね、セイラは称号だけの妻だもの。

 落雷の轟きの人たちも新人冒険者たちも、取り込めるものなら全部取り込んじゃえば良いわ。」

 えー、それ、ずいぶんな言い分だな、と思っていたら、母様がこちらを見てにこりと笑って恐ろしいことを言った。

「もしその中から良い人ができたらね、将来的にはその人と結婚しても良いのよ。

 もちろん体の問題が解決した後の話になるし、ダイカルの承認は要るだろうけど。」

 いや、俺、男と結婚するつもりはありませんからね。


◇◆◇◆


 翌朝、冒険者ギルドで落雷の轟きと新人冒険者の人たちと出発して、町を出たところでを集めて相談した。

「ちょっと考えていることがあるので、みんなのステータスを見せてくれますか。」

 昨夜、可能ならと思って母様と相談して許可をもらった提案だ。

 確認してみたら、俺のように魔法属性がないけれどそこそこ魔力とMPが高い人が新人冒険者で5人、落雷の轟きではトーガさんがそうだった。

 まずは全員に説明をする。

「回復魔法が使える人がいれば、チームを組んだときに生存率が上がりますし、空間魔法が使えて荷物の収納ができれば、パーティの行動力が上がります。

 今、私が選んだ6人は体の魔法の資質が高い人たちなので、皆さんが習得方法について秘密を守ってくれるならば、魔法を覚えてもらおうと思います。

 その人たちと他の皆さんでパーティを組むようすれば、将来、行動がしやすくなると思うんですが、どうでしょうか。」

 落雷の轟きの人たちがまず同意し、その様子を見て新人冒険者たちも戸惑いながら同意する。よし、これで第一関門はクリアした。


 次に選んだ6人を集める。

「私を信頼して指示に従って訓練してください。いいですか。」

 まずはトーガさんにステータスを表示してもらい見本にして、俺が回復魔法を使うのをはオートモードリバースでトーガさんに強制的に真似をさせる。

 すると、ホフッと手から回復魔法の出来損ないが発動して、ステータスに淡く”光”の文字が浮かび上がって消え、周囲からどよめきが起きる。

「この訓練は受け手が拒否するとできませんが、受け容れてくれれば、私の動きに合わせて皆さんも強制的に魔法を発動しようとします。これを繰り返していけば、やがて魔法が発動して魔法属性が得られます。

 今日のところは回復魔法を覚えてもらいます。

 最初は強制力の強いやり方で15分くらいやってもらって、慣れたら強制力の弱いやり方で指示しますので、自分の残りMPを確認しながら、できるだけたくさんやってください。

 魔法の訓練は採取の間も続けてやってもらって、光属性が付くかMPが切れたら、後はいつもどおりに剣で型の訓練をやってもらいます。

 いいですね。」


 6人の了解をもらって、魔法訓練組と剣の訓練組に分かれて出発する。

 護衛は落雷の轟きの3人とティルクが四方を監視しているので問題はないが、オートモードリバースで訓練をやると覚えは早いと思うけれど、何かあったときに受け手側の対応が遅れるので、比較的安全な町の近くにいる間だけにして、後はオートモードセーブリバースに移行することにした。

 魔法組の訓練は、採取が始まって少しして魔獣が出てきて訓練を休止したけれど、帰り道でポフポフと音が変わり始めて、冒険者ギルドに辿り着くまでには全員が回復魔法を覚えた。


 新人冒険者たちは今日の薬草採取依頼を行う間に、回復魔法と収納魔法を使える人間を入れてパーティを組むことの意味を完全に理解していた。

 元々、魔力が高い人たちはレベルの割に力が弱く、仲間内でも将来パーティを組む対象として微妙な立ち位置だったのが、完全に人材としての重要性が変わって、薬草採取の間に仲間内で相談が行われて、魔法組の冒険者を中心に相性の良いものが集まって、パーティの仮結成が行われたようだ。

 別れ際、明日もお願いします、と全員から敬礼されて、何だかすごく面はゆいこそばさを感じながら、ティルクと2人で帰路に就いた。



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