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勇者召喚と聞いたのに目覚めたら魔王の嫁でした  作者: 大豆小豆
第1章魔王妃になんかなりたくない
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第3話 家族会議に参加してる俺の資格って何ですか

今日も一時間後に投稿します。

予定では、第6話くらいから話が落ち着いてくると思います。

それ以降は数日おきの投稿になります。

 俺がよく分かっていないことに気が付いたのだろう、魔王はさらに顔を赤くして補足する。

「昨夜、セイラさんがアスリーに転移してきたとき、その……私とアスリーは床入りの最中でした。

 私のレベルは8,692で、セイラさんのレベルは1です。

 そのせいでしょう、アスリーの体が一瞬で(はじ)け散って大騒ぎになってしまって。

 昨日、アスリーに贈った再生の指輪の力で何とか再生した訳ですが、ガルテム家の魔力は、そのどさくさの中でも私とセイラさんとの間で夫婦の契りが成立したと見定めました。」

 最後の説明は一気だったが、俺はまだ良く理解できていなかった。

 高校一年生の男子生徒に夫婦がどうとか、縁がなさすぎる。


「あの、アスリーさんの体が魔王妃、とかの認定をされたってことですよね。」

 魔王が首を横に振って否定する。

「セイラさん、特技や称号は肉体に対してじゃなく、幽体に対して授けられるんです。魔王妃の称号はあなたに与えられたんですよ。」

「アスリーさんにも魔王妃の称号があるんですよね。」

 また否定。

「……それ、契りを結んだ瞬間の相手がオ、…私ってことです? 」

 肯定。


(女神様! 勇者転移とか言って、違うじゃん!

 夫婦の契りっていったら、それ……。え? ええ? ええええー? )

 俺はあまりの衝撃に言葉が出なかった。一瞬で意識が飛んだので、思い返しても、何があったのかまだよく分かっていない。でも、契りを結んだって……

 俺の頭の中に、嘘だあ、という言葉だけがいっぱいになって、ぽろぽろと涙が(こぼ)れる。

 魔王はぎょっとして、俺を(なだ)めにかかった。

「大丈夫。何も心配は要らないから。

 私も男だ、起こったことの責任はきちんと取るし、責任を取れる経済力もある。

 あなたさえ良ければ、家族とも相談して、すぐに第二夫人の手続きを……」

(第二夫人? そんなの求めてないから! 転移の時のちょっとした間違いが原因で、俺に一生女になって愛人やれってか! )

 妻が2人も必要な理由なんて、愛人くらいしか思いつかなかった。

「い゛やだ! 絶対にそんなのは嫌だ! お前なんか、あっちいけっ! 」

 魔王の膝をげしげしと蹴りながら、俺はわあわあと泣きじゃくった。


◇◆◇◆


 俺になすがままに蹴られて困惑している魔王を救ったのは年配の男性だった。

 外まで俺の騒ぐ声が漏れていたのだろう、コンコン、とノック音と緊張した、失礼します、の声が掛かり、多分独断でドアが開かれた。

 そして男性は室内の様子に目を丸くして破顔し、魔王に声を掛ける。

「坊ちゃ、えへん、国王様。これはまた、新婚の初日から賑やかなことでございますね。」


 魔王は溜め息を吐くと、部屋へ入ってきた男性に疲弊した顔を向ける。

「ホーガーデン、これはそういう平和な状況じゃないんだ。

 母上を含めて家の皆を至急食堂に集めて人払いしてくれ。朝食を摂りながら家族会議を開催する。

 セイラさん、あれがあなたにとってショックだったのはよく分かりました。素顔のあなたにも興味は尽きないが、今後の予定もあります。

 あなたの身の振り方は後ほどきちんと相談しますから、ここはオートモードで意識の焦点を私に合わせて対応をお願いできませんか。」

 魔王の対応が変わったことで俺は気を取り直し、自分が受けた衝撃はひとまず脇に置くことにしてオートモードオンを唱えると、表面上は涙が止まり、背筋が伸びて所作が変わった。


(男なのに魔王の愛人とかありえん。ここは何とか男の体に移って自力で生きてやる。

 魔王にはその能力を身につけるための協力を取り付けて、アスリーさんとやらの体からさっさとおさらばしなきゃ。)

 俺は内心でべそを掻きながら当面の方針を立てると、魔王に向き直る。

「陛下、承知致しました。」

 俺が立ち直ったことに魔王は軽く息を吐くと、メイドを呼び入れて俺に着替えてくるようにと指示をした。


 やって来たメイドの1人が進み出ると一礼して、メイド頭のティムニアです、以後お見知りおきを、と挨拶するので、よろしくお願いします、と礼を返し、別室へと連れて行かれて略装に着替えをさせられた。

 部屋には姿見の鏡もあったが、オートモードのお陰で態度は落ち着いた振る舞いが出来るようになったものの、先ほどの魔王の話がまだ俺の精神に影響している。ちらちらと見える自分の体が汚らわしいものに感じられて目を逸らすうちに着替えは終わり、俺は食堂へと案内された。


◇◆◇◆


 食堂は広いが装飾の控えめな落ち着いた場所だった。

 魔王が入口ですでに着替えて待っていて、俺が来ると左肘を出し、オートモード中の俺はそれに右手を添えて食堂に入る。

 すでに他の人達は座っていて朝食も並べられており、俺はメイドに席を引いてもらい周りを見回して、魔王の母だろう女性と魔王の弟と思える男性に軽く会釈して着席した。

 彼らの後ろには先ほどのホーガーデンさんとティムニアさんが立っていて、軽く目礼を交わす。


「おはようございます。昨夜はアスリーの件で大変お騒がせをしました。

 それで、今朝は2人揃って無事な顔をご覧に入れたかったのですが、残念ながら、今ここにいるのはアスリーではありません。」

 魔王の視線の催促を受けて、俺は挨拶をした。

「アトルガイア王国の勇者召喚で異世界から無理矢理に転移されたセイラと申します。」

 食堂内がざわつき始める。


 魔王は昨夜からの事件の概略を説明し、俺にステータスの開示を要求してきた。

 俺は魔王の要求どおりにステータスを出し、自分の脇に皆が見えるように拡大して開示し、皆はその内容を見て納得して頷いた。


「セイラさんが魔王妃の称号を得てしまったのは、困ったことではありますが、私達にとっては都合の良い部分もあります。

 セイラさん、実は今日の午前中に、国民に向けて魔王妃のお披露目の儀式があるのですが、申し訳ないが、アスリーとして参加してもらえないでしょうか。」

「それ、無理に今日にやらなくても良いんじゃありませんか。」

 いきなりすぐに何かやれとの提案に俺が反発を示すと、年配の女性から説明があった。

「そうもいかないの。ダイカルからは話しづらいでしょうから、私から説明するけれど、結婚式の翌日に妻が契りを結んだ証拠を提示できないというのは、国王の能力に問題ありとして他国からつけ込まれる大きな要因になりうるの。だから、魔王妃の儀式は絶対に今日開催しなければいけないのよ。」

 女性の説明に頷いて魔王が俺を見る。

 ああそうか、と納得してしまったし、俺としてもアスリーさんに魔王妃だかの称号を譲るための段取りはしておきたいところなので、俺は不承不承(ふしょうぶしょう)頷いた。


「それで、さらに厚かましいお願いですが、今後もアスリーを演じて協力していただければ、アスリーを(さら)った犯人を捜して、アスリーを取り戻すのに大変に役立つのですが、どうでしょうか。」

 俺はさらに頷き、魔王は傍目に分かるほどほっとしていた。

「そういうことなので、皆もセイラさんの存在は秘密のまま、アスリーを取り戻すのに協力してもらいたい。」


 魔王が話を終えようとすると、先ほどの年配の女性から、ちょっと待ちなさい、と異議が出された。

「ダイカル、アスリーさんのことはそれでいいでしょうが、セイラさんはどうするつもりですか。」

 俺がセーブモードに切り替えて発言しようとすると、魔王から、母上だ、と小声で補足があった。

 魔王のお母さんか。何と呼べば良いのかな、と少し考えて、俺はアスリーさんの代わりに普通に呼べば良いかと結論を出した。

「え……どうお呼びすれば良いか分からないので、お母様、とお呼びすることをお許しください。

 お母様、まお…ダイカル様からは先ほど、私の身の振り方について、第二夫人にとのお言葉を賜りましたが、私は今回の偶発的な事故の責任をダイカル様に取っていただく気持ちは毛頭ありません。

 先ほどダイカル様からご提案のあった、アスリー様の代役を務めている間に、私がこの世界で生きていけるだけの力を身につけることが、今の私の望みの全てです。ダイカル様、ご協力いただけますよね。」


 俺の話を聞いて魔王が頷き、魔王の母が目を細めて口元を緩める。

「自分の置かれた状況を利用して王に取り入ろうとしないのは殊勝な心がけです。

 でもね、セイラさん。あなたはすでに魔王妃の称号を受けたのでしょう。どのようにそれを受けたのか……

 ああ、その話は女同士の方が良いわね、後でつぶさに教えてくださいな。」

(いや、女同士じゃないです! それに俺も分かってないんで、つぶさになんか無理です! )

 男の俺が女性同士の赤裸々な話とやらを、とびきり偉い人と二人きりでするのは凄く怖いという俺の心の叫びは、誰にも届きそうになかった。


 そのあとは、朝食を摂りながらお母様の名前がケイアナさんであること、魔王の弟の名前がジャガル君であること、ホーガーデンさんが家令として王家の内向きの一切を統括し、メイド頭のティムニアさんが身の回りの一切を仕切っていることを教わった、


「セイラさん、それで、この後に予定されている魔王妃のお披露目なんですが。」

 魔王が儀式に関する説明を始めた。

「魔王妃の称号を得た者には二つの力が与えられます。

 一つは”魔王の加護”で、魔王の親子、兄弟以外の者から魔王妃へ命を危険に晒す危害が加えられたときには、魔王である私からステータスの半分の力と魔力が自動的に与えられて、敵の攻撃から護られます。

 もう一つは”魔王の眷属”と呼ばれる力で、過去の魔王の血脈に繋がる者を見つけ出すことができ、その者が魔王か魔王妃に忠誠を誓うことで、先祖の魔王から受け継いだ隠れた力を発現させることができるというものです。」

 魔王は俺が理解したかを確認して、申し訳なさそうな顔をする。


「それで、魔王妃のお披露目というのは、私の部下や国民から選ばれた代表10人が国民の前で魔王妃を攻撃して見せて、魔王妃が間違いなく魔王の加護を得ていることを分かり易く確認するという儀式なんです。」

 ……レベル1のか弱い女を寄って(たか)ってフルボッコして、国民皆の見世物にしますか──

 俺は絶句して真っ青になった。



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