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勇者召喚と聞いたのに目覚めたら魔王の嫁でした  作者: 大豆小豆
第1章魔王妃になんかなりたくない
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第27話 王家付きメイドと冒険者パーティ”威城のメイド”はチームを組みました(1)

「サファ、今、香油の記憶をそちらに伝えるから、分析を頼むわ。」

 私はあの夜にアスリー様に塗り込んだ香油の記憶を詳細に思い起こすと、その記憶をサファへと送った。

 セイラ様から魔王の加護を賜って、私は経験した出来事の完全な記憶の再現ができるようになり、それに加えて、これと意識した情報を人へ伝達できる意識管理の能力を得た。

 また、サファはこれに呼応するように、得た情報を詳細に解析して、解析結果に対する対策を講じる情報管理の能力を得た。

 これで私の能力がもっと上がれば、私だけでなく他人の記憶に干渉したり他人の記憶から情報を引き出すことができるようになるのかもしれない。サファの能力も上がって、私が得た他人の情報を解析して対策が立てられるようになれれば、それを私が誰かに指示して実現できる。

 いずれ、私たち2人は鉄壁の管理チームとして機能するだろう。

「ライラさん、香油の情報の解析が完了しました。いつも王妃様に使っていた香油47パーセントにアルザの果実35パーセント、あと私の知らない成分2種類が8パーセントと6パーセント、残り4パーセントはコカトリスの幻覚成分です。」

「知らない成分が2種類? 困ったわね。」

 サファはちょっと考えてから私に提案をしてきた。

「王城の資材管理所でまず調べてから、町の薬屋に冒険者ギルドや商業ギルドなどを調べて回れば、何か分かるかもしれません。」

 私はサファの提案を受け容れて、私がサファの分の王家の仕事も片付けている間に行ってもらうことにした。


◇◆◇◆


「マイナ、お待たせ。」

 私はシャラ、ユルアと一緒に冒険者ギルドで注文書を選別していたパーティリーダーのマイナと合流した。

 マイナは以前はお城のメイド部屋の室長で、その当時は私達はマイナさん、とさん付けだったが、みんなでメイドを首になって、冒険者ギルドでパーティ”威城のメイド”を4人で結成してからはタメ口でやっている。

「ノーメ、遅かったね。何かあった? 」

 実は20分くらい遅刻していたので、その理由を説明する。

「前にさ、セイラにプロポーズした人がいたでしょ。アイザルっていう人。

 来る途中で偶然あの人に会っちゃったんだけど、見るに忍びないくらいになっちゃってて、ちょっと話し込んで、というか説教して焚き付けてたの。」

 そう、ここに来る途中に私たちはアイザルさんに会った。

 彼は薄汚れた服に()えた臭いをさせて、ヒゲもぼうぼうでふらふらと町を彷徨(さまよ)っていた。

 私たちは彼に気付かなかったが、彼は私たちを見つけるといきなり走ってきて土下座して、あんたたち、セイラさんと一緒に働いていた人達だよな、セイラさんは生きているのか、生きているならどこにいるのか教えてくれ、と言って泣き始めて、私たちは初めて彼が誰だか気が付いた。


「アイザルさん、地下牢が襲われた日からセイラを探して町を彷徨ってたらしいの。

 男の純情も良いけどさ、あのセイラを(めと)ろうというにはかなり頼りないよね。

 だから、セイラはたぶん王家のご家族と一緒に王都を出た、あの娘は王家との約束だかでメイドに来ていただけで、それまで服の着方も分からなかった本物のお嬢様だけど、魔王妃様に目を掛けられるくらい性根の座った娘で、人族なのにこの国の王家と直接話ができる伝手のあるくらい権勢のある家柄の一員なのは間違いないって言ってやってね、あんた、そんなことでよくセイラを嫁にするなんて言ったわねって、ネジを巻いてたのよ。」

 私が掻い摘まんで事情を説明すると、マイナは、うわあ、あんた容赦がないわね、と言って、興味津々で、で、どうだった?、と聞いてきた。

「ふふーん、褒めて?

 アイザルさん、私の話を聞いたら急に顔つきが変わってさ、俺がセイラを助けて家の方々にも認めてもらえるだけの男になるんだって言って、まずは商売の販路の情報ををくまなく(さら)って集めて支援できる態勢を作りながら、店も大きくして国で一番になって、国王様と王太后様を味方に付けてセイラさんを説得して嫁にするんだって、目の色を変えて飛んで家に帰って行ったわ。」

「あんたね……。それ、セイラがあの人は嫌だって言ったときの逃げ道は残ってるんでしょうね。」

「へ? 逃げ道? 何で? 」

 頼りになる金持ちで自分にベタ惚れの若い男なら絶対に買いなのに、マイラの言うことって、ときどき意味が分からない。

 こんな美味しい話、セイラが嫌がるはずないじゃん。


◇◆◇◆


 私は、王城の資材管理所で調べ物をした後、冒険者ギルドまで未知の成分について分かることがないか調べに来ていた。

 冒険者ギルドに来るのは初めてなので、入口で見回したがさすがに数千人の冒険者を日々相手にする場所だけあって相当に広く、窓口がずらりと並んでいる。

 どこに行けば冒険者が持ち込んだものを検分して未知の成分に合致するものを捜す相談ができるか迷っていると、見覚えのある女性たちが目に付いた。

 冒険者が装備する盾や防具、武器などを持っているのに、4人で着ているのが揃いの灰色のメイド服なので、相当に目立つ。

 彼女たちのうちの少なくとも2人が、セイラ様の代理で働きに行ったときに相手をしてくれた人達だったことに私は気が付いて、彼女たちに話し掛けることにした。


「あの、すみません。えっと、マイラさんとノーメさんですよね。」

 私が話し掛けると、4人が私の黒いメイド服を、次に私の顔を見て、ぱあっと明るい顔つきになった。

「あ、えっと、確かサファさんですよね。サファさん、セイラのこと知ってますよね。

 今、どうしているか教えてもらえますか。」

 彼女たちは私がセイラ様のことを知っている王家付きのメイドだと見て、迷うことなくセイラ様の消息を聞いてきた。

 どうしよう、セイラ様についてめったなことは話せない。

 私の迷いを見定めて、マイラさんが顔を至近距離まで近づけると、耳元でそっと囁いた。

「私たち、セイラから魔王の眷属(けんぞく)の加護をもらったの。セイラのことについて教えてちょうだい。」

 魔王の眷属! 私たちの同志がいた! 

 だけどセイラ様に関することを私が勝手に判断することはできない。

 マイラさんに4人で王家へ来てもらえないか頼むと、マイラさんは今から行くと即答だった。

 ライラさんに相談する暇もない素早い対応に迷ったものの、行動は早いほうが良いと考えて、私は4人を連れて王家へと戻って応接室で待ってもらう間にライラさんへと相談した。


 ライラさんは私の報告を聞くなりすぐに応接室で4人と会った。

「私は王家付きメイドのライラ、こちらはサファです。皆さんはセイラ様から魔王の眷属の称号を(たまわ)られたと伺いました。

 不躾(ぶしつけ)で申し訳ありませんが、まずは皆様のステータスを拝見できますか。」

 そう言うとライラさんは4人のステータスに魔王の眷属の称号があるのを確認し、自分と私のステータスを4人に見せて、ここにいる全員がセイラ様から魔王の眷属の称号を賜ったことを確認した。

 そして、ライラさんはセイラ様が王家においでになった経緯と行き先について、掻い摘まんで説明し始めた。

「王家の事情に関することなので詳しくはお話できないし、伏せさせていただく事柄が多いのですが、セイラ様はアスリー様に異常が起きたときに何故か魔王妃の称号を得られたことが分かりました。

 その後、セイラ様は王太后様のご指導でレベル上げをされながらご自分の身の振り方をお考えになり、王家には頼らずに自活をするとお決めになり、ダイカル様と何かの約束をなさったようでした。

 それが、ダイカル様がおかしくなられて、このままではご自身の身が危険だとご判断なさったのでしょう、セイラ様は王太后様とご一緒に獣人の国アスモダへと向かわれました。

 お二人でアスリー様とダイカル様がおかしくなられた原因を探るのだと思います。」


 威城のメイドの4人は、セイラ様が無事だという確証のある話を聞いて顔を見合わせて喜んでいたが、ノーメさんが怪訝な顔を聞いてきた。

「ねえ、なんでセイラのことを様付けするわけ? セイラは王家の人って訳ではないんでしょ? 」

 ライラさんは何を話すかちょっと悩んだ末にこう答えた、

「確かにセイラ様は王家の血筋を引いておられる訳でも、国王様の配偶者という訳でもありませんが、不思議なご縁で魔王妃の称号をお持ちです。

 従って、王家では国王様の(えにし)に繋がる者として王妃に準ずる扱いをさせていただいています。」

 ああ、とノーメが納得して頷いた後で、ライラさんは本題を切り出した。

「それで、私達2人は王家のためにできることを捜して尽くしたいと考えています。

 皆様にとっては目的が多少ずれているかもしれませんが、私たちは今現在は、それがセイラ様がお戻りになって、目的を遂げにられる力添えにもなると思っています。

 そのための活動資金の援助も致しますので。私達と情報共有と協力をお願いできませんか。」

 マイナさんは腕組みして考えていたが、他の3人とアイコンタクトを取ると話し出した。

「私たちは王家の問題に深入りするつもりはないわ。でも、セイラが私たちの元に戻ってくる話の限りにおいては仕方ないと認めます。

 だから、協力するけれど、拒否する場合もある。そこの線引きは追々と相談しながら決めさせてもらうわよ。それで良い? 」

 ライラさんは頷いてマイナさんと握手をした。



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