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第62話 ティルクの独白

 姉様と出会って間もなく、姉様が本当は異世界から来た男性で男に戻ることが目標だと聞いたとき、私は姉様のような心根の男性がいたら素敵だと思った。

 レベルが上がって私に釣り合う男性が少ないと気付いたのとほぼ同時に、私が少し努力すればすぐに追いつけそうな、気心が知れて気立ての良い男性(予定)がすぐ側にいた。

 しかもほかの女性はまだその男性の存在すら知らなくて、私だけが接することができる理想的な環境。

 姉様と少しずつ関係を築いて彼が現れたときにアプローチすれば、きっと幸せな結婚ができると信じた。


 それからの私は、日々の交流で姉様の人柄に惚れ込んでいくのと平行して、女らしく振る舞う合間から垣間(かいま)覗く姉様の男性のときの名残らしい仕草や行動に注意を払うようになった。

 私が姉様の内面を探ろうとするのが祖先の魔王からもらった魔法の能力に働いたのだろう、やがて断片的に姉様の知識が頭に流れ込んで来ているのが明らかになって、私と姉様は驚いた。


 姉様との親密度が上がるにつれて姉様から伝わる知識の量は増えていって、姉様の考えが読めるわけではなかったけれど、姉様の戦い方や新しい魔法の使い方、私の持っていない属性魔法までが私の中に流れ込んできた。

 姉様個人を識別して働いている魔王妃の力や女神リーアから授かったというオートモードの魔法は姉様だけのものだったけれど、それ以外の魔法や戦い方は私のものとなって、私の戦い方は風魔法で飛ぶところまでを含めて姉様とそっくりになった。


 冒険者の皆が影で姉様を舞姫、私のことを舞小姫と呼んでいることに気が付いた頃には、阿吽の呼吸で展開する2人の戦闘パートナーぶりは他の追随を許さず、私は姉様との絆の強さを証明した思いで胸がいっぱいだった。


 そして姉様がミッシュの使徒を使わせてもらえることになって、ついにセラムが現れたとき、私はセラムに私を受け容れてもらおうと必死に……なろうとしたのだけれど、私の想いの丈を開陳する前にセラムにあっさりと受け容れられて、男に戻れたならという前提付きながら、私はセラムの恋人で婚約者(予定)という立場をすんなりと手に入れた。


 セラムが私を受け容れてくれて、私は幸せだった。

 セラムは姉様と記憶や経験を共有しているから、セラムと仲を深めることで姉様との関係がどう変わるかが気がかりだったけれど、姉様はこれまでと変わらずに私を妹分として扱ってくれる。

 以前に姉様が言っていたとおり、セラムも姉様も恋愛対象はそれぞれの異性で、私とセラムの記憶がどうあろうと姉様にとっての私との関係は変わらないようだった。


 逆にそのことに(こだわ)ったのは私だ。

 セラムと姉様が性別による振る舞いの違いはあるにしても、本質的には1人なんだと認識して将来を考えてみると、姉様が男性セラムに戻れない場合には私は永遠に姉様の妹分でしかいられない。

 姉様が誰か良い人を見つけたら姉様はその人のもの、私との絆は薄くなっていく。

 だから、もしセラムの代わりに姉様が残るのなら、姉様にはダイカル国王に嫁いでもらい、私は国王様の側室としてでもいい、姉様の側にいようと考えた。

 姉様と一生を共にするためには仕方のない妥協だった。


 ところがシューバ討伐に赴いて、シューバに首を刎ねられた私は姉様の捨て身の献身で命を繋ぎ、セラムの活躍で命を救われたことで私の考えが一変した。


(セラムでも姉様でも、あの人を誰かに譲ったりするもんか。

 私はセラムと姉様、あの2人と絶対に一緒になる。)


 シューバ討伐で私のために戦いを投げ出した姉様が精神のバランスを崩したことを知ったとき、私の知らない間に姉様が母様に追い出されていたことを知ったときには激しい後悔に襲われて姉様を追いかけようとしたけれど、セラムが夏に復活する、私にはそのときのためにやることがあると母様に説得されて、今度こそ姉様の足を引っ張らないようにと修行に没頭した。


 しばらくして母様に連れられてアスリーさんと王宮に行くことになって、私は姉様に並ぶ力を得られるかも知れないと、私の祖先の魔王のことを調べることにした。

 そしてまだ方法は分からないけれど、姉様を王妃に迎えたがっている国王様に、そうはさせないと宣戦布告しなければならない。

 私には姉様と共に国王様の伴侶として王室に入る母様との約束があったけれど、もうそんなものを受け容れるわけにはいかなかった。


 母様と縁を切られたとしても姉様を奪い取るためには、国王様にどう伝え、主張したら良いだろうかと悩んでいるところに、母様からもう1人の恋敵を紹介された。

 その人はアイザルというミゲル商会の御曹司で、何と魔王の称号を持つ。

 背が高く均整の取れた体つきに濃紺の髪の下には落ち着いた眼差しが覗いて、愛想の良い丁寧な態度からはとてつもなく懐の深い人柄が窺えて、ただ者じゃない感が滲み出ている。


 美形とは違うけれど頼りがいのある器量の大きな人物。

 こんな人、姉様はどこで知り合ったのかと思ったら、彼を釣り上げてしまったのはどうやらセラムらしい。

 まだ姉様が目覚める前に、女性らしい生活の勉強をするためにお城でメイドをしていたセラムに出会って、アイザルさんが一目惚れして結婚を申し込んだことがあると経緯を聞いて、セラム、何やってるのと目眩(めまい)がした。


 だけど彼の存在がダイカル国王様との面談では援護になった、らしい。

 姉様を一方的に婚約者と公表したことを責める私とアイザルさんに対して、ダイカル王は気に入った女を后に迎えるのは国王の当然の権利だと言い、不満があるならば姉様を掠ってみせろと私たち2人を挑発したのだ。


 つまり、姉様をその気にさせられた者がいれば、ダイカル王は引き下がるということ。

 私とアイザルさんは、この挑発に乗った。

 将来セラムが残ったら当然勝者は私だけれど、姉様が残った場合にこの挑発に乗っていなかったら、指を咥えて見送るしかないんだもの。

 乗るしかない。


 ただ、勢いに任せてダイカル王の挑発に乗ったものの、私と姉様の間には2人が同性という、姉様が恋愛対象には絶対にしない障害がある。

 どうしたものかと考えあぐねていたときに、私に会いに来てくれた母が問題の解決になるかも知れないヒントをくれた。


「魔王フェリアスは元は男性だったけれど、好きな人と添い遂げるために魔法の力で女性になったって言われているの。

 その魔法はティルクにもきっと引き継がれているわ。」


 私は光明を見た思いだった。

(私には自分の性別を変える魔法の力があるのかもしれない。それならば男性になって姉様を娶ることができる。)

 私は取り憑かれたように母様を説得して、護衛役付きの条件で愛血族の国ブラディアにあるアンパー地域を目指した。

 そしてアンパーで最大のトルキア領ジアックで姉様と再会したのだ。


(私が男性となるべき土地で姉様が待っていてくれた。

 これはもう運命だわ! )

 有頂天になった私だったけれど、姉様を訪問してきたミッシュが私たちに告げたのは信じられない事態だった。

 セラムと姉様が同じ幽体を使うには限界が来ていて、それぞれ独立した人間に分かれるしかなく、しかも姉様はセラムの意識と分かれたあとは、男性だったときの記憶のほとんどを失って自分で物事を判断できない状況になるという。


(2人が分かれればセラムが残ることは確定する。私はセラムと結ばれて、幸せになれるはずなのに…… )

 どちらが大事ということはない。そもそもセラムと姉様は同じ人と認識している自分には、どちらかを選ぶことができない。

 なのに、記憶の大半をなくして自分で判断もできなくなるという姉様のことが気になって仕方がなかった。


(どうしよう。)

 悩んだままセラムや姉様たちと一緒に楽園まで来て、フェリアス大祖母様におめもじした。

 そして、大祖母様に相談をしてみたらと思い至った。


(大祖母様に男性になる魔法のことを教えてもらえれば、少なくとも姉様の気を引けるかもしれない。

 姉様の心を掴めなければ、私が姉様をどうすることもできないのだから。)

 ひとまずどちらかを選ぶという問題は先送りだと決心して、トルキア城に着いた日の夜に時間を作ってもらって、私は大祖母様に相談をした。

「大祖母様、私たち家族には性別を変える魔法の力が大祖母様から引き継がれていると聞いています。

 私が男性になる方法を教えてくださいますか。」


 率直に尋ねた私の質問に対する大祖母様の返事は簡潔だった。

「え、性別を変える魔法?

 それは一体なんのことかしら。」



大変遅くなりました。

言い訳ですが、毎日一頁は書いていたのです。

延々と同じところを書いては書き直し……


ティルクの気持ちの変化を話の流れを確認しながら整理するのが、こんなに苦労するとは思わなかった

(ノД`)

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― 新着の感想 ―
[一言] いくら人格が分離したと言っても、やはり元は同一人物なのでどちらとも一緒になりたいと思いますよねえ。
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