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勇者召喚と聞いたのに目覚めたら魔王の嫁でした  作者: 大豆小豆
第2章 アスモダの深淵で見たもの
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第79話 攻防戦(3)

(で、これからどうしよう。)

 シューバ本体に成り行きでああは言ったものの、本音はこれだった。

 単体相手ならば遅れを取ることはないものの、自分たちとほぼ匹敵する強さがある相手が70体ほどに加えて、私たちを超えるかもしれない敵が1体いるのに、私たちは3人と1匹しかいなくてしかも逃げることができない。

 うん、かなり絶望的だ。

 母様と他のメンバーにも視線をやるち、ヅィーニの表情は分からないけれど、皆厳しい顔をしていて名案があるようには見えない。


「セイラ。あなたは私によく尽くしてくれた。

 もう十分、ティルクと2人で逃げて、自分の目的を追いなさい。」 

 そう母様が私に切り出した。

 この言い方には覚えがある。

 まだティルクと出会ったばかりの頃にテントの中で母様が私に話してくれた言葉だ。

”私は自分の国のためにセイラに期待をしているわ。

 でも、それがセイラの目的のためにならないと考えたなら、自分の心が許す範囲のことをして、自分の目的を追いなさい。

 自分の目的を犠牲にしないよう冷静に判断して見極めて、できる部分で最大限の協力をしてくれるのなら、私はそれで充分満足よ。”

 確かそんなことを母様は私に話してくれた。

 母様は逃げるなら今だと促してくれているのだろう。でも、今の私は母様とこの世界の人たちを置いてそんなことはしたくない。

 今逃げても、どうせこの世界で生きていく限りまた後で対決することになるんだろうし、そのときに母様がいないのでは、戦える戦力が残っているのかも分かったもんじゃない。


 ただ、私の気がかりは──

 これまで私と運命を共にする気持ちを散々示してくれたティルクを私は見遣る。ティルクこそ母様には何の関わりもなくて、私とのことがなければ逃げても良いはずだ。

 でも、そんなティルクは私の視線を感じてこちらを見て言った。

「姉様、戦うよね。」

 揺るがない娘だ。

「死ぬかもしれないわよ。」

「姉様と母様と一緒なら、それでも良い。」

 まったくこの娘は、ここ一番の度胸がすごい。


 私が思わず笑みを(こぼ)すと、ヅィーニが言った。

「一応言っとくが、俺もジァニのために付き合うからな。

 で、先が見えないときは、目の前のものに順番を付けて1つずつ順番に解決していくのがいい。

 道があるものなら、1つずつ丁寧に処理していけば、気が付いたらやり切っているものだ。」

「分かった、順番に、1つずつね。」

 私がヅィーニの助言を復唱しながら母様を見ると、母様は目を細めて優しい笑顔を返してくれた。

「全く、私は良い娘と仲間を持ったね。

 娘たちがダイカルの子を抱く姿を見るまでは死ねないわ。

 ヅィーニ、付き合わせて悪い、そしてありがとう。」


(いや、母様。私たち、ダイカルに嫁ぐ気は一切ないんですけどっ。)

 母様の言葉が猛烈に気に掛かったけれど、ティルクをダイカルの嫁にする話なんか出てくるはずがないし、そんなことに引っかかっている暇もないので、母様なりの気持ちと割り切って、ただヅィーニと一緒に頷いてスルーした。

 ──ティルクと母様の約束のことなんか、私は知らなかったもの。


◇◆◇◆


 腹が決まって、改めて対策を考える。

 まずは地下からの襲撃。これは単に場所を移動するだけで良いかと思ったけれど、母様から提案があった。

「金魔法で下を覆えば、彼らはそこから上には上がってこられないわ。」

 ──金魔法でシューバたちの攻撃に耐えられそうな金属と言えば、鉄の板か。

 瞬間的に使う母様の魔力量ではそんなに厚い鉄板は作れないが、眷属の総意でじわじわと厚みを増してやれば、たぶん十分くらいで1メートルくらいの鉄板ができあがる。それを突き破るにはどれくらいの戦力が要るものか、少なくとも私は試す気にはなれない。


 次は壁のところで援軍を待っているシューバたちへの対応だ。

 シューバたちは援軍との調整だけをしていて、自分たちで積極的に何かをしようとする様子がない。

 ならば、援軍が来る前に倒してしまえば良い。

 私が左手から後方の壁に散らばるシューバたちの周りにそっと幻影魔法の壁を張り巡らす。

 シューバに幻影魔法は通じないというのは、接触したときのこと、接触さえしていなければシューバも幻影魔法にだませることは先ほど経験済みだった。

 幻影魔法を確認した母様は、ティルクとヅィーニが左手と後方に位置取ったのを確認してから、シューバに気づかれないように木魔法でシューバツリーをまたぐように土台を組むと金魔法でシューバを包むかごを編み始め、私はそれを幻影魔法で隠しながらティルクと2人で手伝い、母様が作った塚の金属板の出口をかごの中に作った。


 50体もの援軍が来る前にせめてこの16体だけでも始末して、シューバと戦うことにも慣れておきたい。

 私たちは所在なげに立ち竦んでいる籠の中へと突撃した。

 先ほどと同様に母様がまずシューバが多く集まる中央付近へと火魔法の上位魔法である炎魔法を打ち込んで混乱を誘い、シューダ2体を炙って倒し、散らばるシューバを呼び込んで集め自ら戦いながら私たちへ割り振る。

 このままさっきと同じようにシューバを圧倒できるかと思ったのだけれど、いきなりシューバたちが動きを止めて私たちそれぞれに隊列を組み始めた。

 見ると2体のシューバが後方にいて指示を出して様子がオーモードで感じられる。さては地下のシューバが地上に出てきて合流したか。


 本来、私たちはシューバを効率的に倒すことが最優先だから指揮官の参入は嬉しくないが、後に控えている50体のことを考えると、ここで何かを得ておけるならば、それは無視できないと思ったのだ。

 シューバは一旦は2グループに分かれたが、それは指揮系統の確認のためだったらしい。すぐに入り混じってどちらがどちらの指揮系統にあるのか分からなくなった。

 右手から1体が飛び込んでくるのを迎え撃つ動作を周りのシューバが全員で観察をしている。これは私とティルクの動作が普通の剣(さば)きと違うことに気付いて動きを見極めようとしているのだろう。

 視界の端ではシューバツリーに接続している個体もいた。後続に情報を伝達されてしまったら私とティルクの動きの強みが減殺されてしまうし、私たちの持っている魔法も筒抜けになる、これは(まず)い。


 母様に呼びかけると母様が気付いて、木魔法で作ったをために出した金製の籠の土台を金属に変えてそこからシューバツリーを切断するように金属を延ばしていく。

 シューバツリーが切断されていくのを確かめて、私とティルクは炎魔法と土魔法を風魔法で周囲に撃ち出す。

 私たちの攻撃はシューバの5,6体に当たったがシューバはそれでは止まらないし、(かわ)した3,4体ほどが私たちの真似をして炎魔法を風魔法の銃身を作って打ち込んできた。

 とっさに身体の周りに回る方向の違う風魔法を重ね掛けして威力を減殺したけれど、何発かは貫通してきて左腕と肺に喰らって、光魔法と闇魔法で治してシューバに立ち向かう。

 2種類の魔法を重ね掛けしている間は他の魔法を使えないのでかなり危ない。これも観察されているだろうけれど、神経を集中して追加の魔法を躱して距離を詰めて魔法を使うシューバ優先で斬り伏せる。


 1体、2体と斬り伏せて3体目に向かう途中で、いきなり右横から攻撃を受けて、とっさに剣の(つか)で敵の剣の腹を突いて攻撃を逸らした。

 ティルクと戦っていた個体がティルクとの戦いの流れでティルクと距離が離れてこちらに近づいたところで、いきなり向きを変えてこちらへ振りかぶってきたので不意打ちになったのだが、ティルクの方でも同じタイミングでこちらが倒そうとした3体目に襲われて、ヅィーニの援護を受けて躱したところだった。

 シューバの意識を読んでいるのになぜ、ともう一度シューバの意識がどうだったか精査して分かった。

 ティルクの方からやって来たシューバに私を襲っていた指揮官がいきなり指示を出したのだ。

 違う指揮系統からの指示だったので一瞬、意識を切り替えるための空白がシューバにあって、それが伝わったから私も対応ができたのだった。

 指揮官はこちらをじっと観察している。

 あいつが私たちの情報を収集して後続に伝える前に、絶対に潰してやる。

 私は半分ほどに減ったシューバを倒すために指揮官へと切り込んだ。



うーん。

いろんな伏線を回収しながら丁寧に書いていこうとすると、時間が掛かりますね(-"-;

でも、仕方がないことなので、ご容赦願います。

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