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勇者召喚と聞いたのに目覚めたら魔王の嫁でした  作者: 大豆小豆
第2章 アスモダの深淵で見たもの
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第77話 攻防戦(1)

 私たちは手分けをして防衛の準備を始め、母様の指示に従って防壁を作り始めた。

 こちらから盛り上がり、向こう側はストンと壁になる防壁を作り左右に1カ所ずつに切れ目を作って誘導路としている。

 もちろん、シューバの能力は高いのでこんな壁など軽く超えられるだろうが、超えた先には御座所の調査の間に私から魔法で弾を打ち出す技術を教わったヅィーニが、土弾の代わりにそこらから集めた石を積み上げて石礫を撃ち出すために待ち構えている。

 そして、誘導路では母様と私が左右それぞれの待ち構えていて、その後ではティルクが遊撃手として控えてシューバたちの到来を待ち構えた。


 ところがシューバたちの気配を探知しながら待ち構えているのに、そのシューバ8体が攻めてこないことに私たちは(いら)立った。

 シューバは私たちの右手に2体、左手に6体が来るのを探知していて、私たちはシューバとの様々な攻防を想定していたが、シューバは攻めてこようとせずに壁の向こうで私たちの動向を窺っている。

 早く逃げ延びたい私たちにとって、彼らが時間稼ぎをしてくることが一番嫌な攻め手であることをシューバに読まれている。

「いかなければじり貧になる。でも左右の両方のシューバを同時に相手するのは悪手だわ。」

 母様が苦しげな顔で私たちを見回して、提案をしてくる。

「左手の6体は私とセイラが打って出て相手の戦力を削るから、ティルクとヅィーニは壁の上から右手の2体を牽制して。

 目的は左手の6体を倒すまでの時間稼ぎ。

 戦闘の誘いに乗るんじゃないわよ。」

 私たちは頷いて、ティルクと私は視線を交わして唇を引き絞る。

 ──絶対に無事に帰る。その意思を互いの瞳の中に確認し合った。


 ティルクとヅィーニに背を向けて母様と2人で魔王妃の総意を発動しながら左の壁を超えてそれぞれシューダの散らばる先へと突進していく。

 バリバリッと母様の雷弾が響くのを聞きながら土魔法で100ほど作った土弾をばら撒き、弾が消えないうちに次を撃ち出し、また次を準備する。

 ピュウピュウと数千の空気音が鳴り響いて2体を穴だらけにして沈め、残り1体に向かい合って、これまでシューバが使うと思っていた魔法を使っていないことに気が付いて、魔法が得意なはずのアスリーさんの能力を引き継いでいないのだろうかと疑問に思った瞬間、視界にほとんど認識できない、引き絞ったレーザーのような薄い水弾が10センチほどの幅で空間を切り裂いて飛んで来た。

 ぞわりと全身の毛を逆立てながら私が反射的に空間魔法を立ち上げて水弾を屈折させて弾くと、シューバはそれを見てすぐさま違う角度から水弾を撃ち込んで来るのを相殺するよう大量の水魔法で遮った。

 詳しく確認していなかったけれど、魔法の属性自体はアスリーさんより私の方が多彩だとミッシュから聞いた記憶が蘇ってきて、私はとっさに雷、風、火、水、土でそれぞれに作った弾を200ずつ、それを10カ所から撃つ幻覚を追加してシューバに放った。

 シューバは幻覚は看破したようで惑わされることはなかったが、各属性で放った弾に対しては水魔法の防御を展開していて、効果がなかったかと思ったところ、土魔法が数発だけ物理の力で水を貫通してシューバに届いていた。

 被弾しても倒すまでダメージが行動に影響しないのがシューバの厄介なところで、私は土弾の砲径を大きくして30発ほどほ至近距離から打ち込んで上半身をほぼ引き千切った上からシューバの首を刎ねたが、植物のシューバがどのように死んで活動を停止するのかが分からない状態で、シューバが意識を失うまでに魔法を使われることが怖かったので、念のために頭部を両断した。


 シューバが事切れたのを確認してから、私は急いで今知った情報を皆に伝えた。

『母様っ、ティルクッ! シューバには個体差があるっ。水魔法は紙よりも薄い平面で飛んできて見え(つら)い。恐らく魔法の方が多彩なはずだから注意してっ!! 』

『もう知ってるよ。それに、火魔法は土魔法で(つぶて)を爆発で飛散させるから気をつけて。』

 母様とティルクに念話を飛ばしてシューバの情報を伝えると、母様から返答があり、その情報の対処を私が考えていると、母様から追加の連絡があった。

『……それで、少しもらってしまったのよ。セイラはティルクの方に来ているシューバを相手して、ティルク、治療してくれないかい。』

 驚いて母様のいる方に目を遣ると、母様が膝立ちで(うずくま)っている。

 慌ててティルクに声を掛けて交代してティルクを母様の元へと送り、私は土魔法で直径10センチの砲弾を数十発、集中して2人に打ち込んで力尽くで殲滅した。


 シューバが動かないのを確認して急いで取って戻して母様の容態を確認すると、5発ほどが腹部を貫通していたが神聖・光魔法混交の治癒魔法で治療が完了したのでもう大丈夫との報告を受けてほっとした私たちに、母様が聞きたくない現実を突きつけてくる。

『右から10体、左から8体やって来てる。それから、前に2体、後に4体、回り込んできてるよ。』


 パワーでは勝っているが、シューバの繰り出す多彩な技と魔法のそこが見えないために、1対1の戦いで戦力としてほぼ拮抗していると言っていい相手が24体。

 どうするか、母様と視線を交錯させる。

「アスモダの王子たちはまだ安全圏にいない、となれば、やることは1つだね。」

 母様の言葉に、私たちは頷く。

 どうせ逃げても圧倒的なスピード差がない限り、能力の優れた個体に少しずつ干渉されて少しずつ邪魔をされれば、アスモダグループに追いつくまでのどこかで追いすがられて、満身創痍で捕まって戦いを余儀なくされることになる。

 囲まれたときにはもう戦い抜く体力は残っていない上に、アスモダグループのところまで行ってしまったら、アスモダグループへの護りも必要になって、勝てないだろう。

 ならばここで迎え撃って勝ち抜くほかはない。

 私たちは覚悟を決めて、右側を母様、左側を私、前をヅィニー、後ろをティルクが担当することにして、再度布陣し直した。


◇◆◇◆


 ステータス表では、ちらちらとケイアナの名前が輝度を上げて輝き始めた。

 ダイカルは、肝を冷やしながらそれを見守ることしかできない自分がもどかしかった。

 王都の状況は落ち着きを取り戻してきているものの、現在は各地で魔族の影響を受けた貴族の反乱を早期に鎮めることに注力している段階である。

 自身に対する干渉も弱まったとは言え、セイラたちのサクルク制圧で解消できなかったために、ダイカル自分が完全な状態になるためにアスモダへと赴きたい気持ちは強いが、まだアスモダへ向けて自分が出向くことが実現できない。

 早く母上とセイラに合流してアスリーを取り戻し魔族を直接叩くための制圧に出向きたいのがダイカルの偽りのない心境だった。

 早期にセイラたちに合流できる最短の方法を模索するダイカルの眼前でケイアナの表示が元に戻ったことに、ダイカルは安堵の息を吐いた。


◇◆◇◆


 24体ものシューバが俺たちを取り囲むように襲ってきていると聞いて、自らの布陣に就きながら、私は自分にできることはもうないのかを探していた。

 武技に関してはない。魔術に関しては準備できている。使えそうな能力は……

 俺は素早くステータス表を確認していて、ふとここしばらく使っていなかった特技に気が付いた。


 オートモード。

 相手の意図を汲んでそのとおりの対応をするのがオートモードで、相手の意図を読み取ってそれを利用するのがオートモードセーブ。

 最初に修行のためにとオートモードを使わない戦いを始めて、その後はすっかり忘れていたが、今、使うべきときじゃないんだろうか。

 オートモードセーブを唱えると、迫りつつあるシューバの思考が何となく伝わってくる。

「母様、ティルク! シューバは前からの2体でティルクを引きつけて右と後の14体で母様を攻めるつもりよ! 」


 どうしよう。戦力差は8倍、普通にやれば敵いっこない。

 私の考えはオートモードリバースで皆には伝わる。だから相手が何をしようとしているかは伝わるはず。

 うん、伝わった。

 母様がティルクの方へと走りシューバが母様を追い、2人が交差した瞬間にティルクと母様がそれぞれシューバ数体を火炎放射で焼き、火炎放射を躱したシューバにヅィーニが塩の濃度を上げた水弾で接近を牽制するが、シューバは損傷を気にしない。ヅィーニの攻撃の方が体手を牽制するのにはなぜか効果的だ。

 俺は後方と左側に壁の向こう側の土を材料に高さ5メートルほどまで嵩増しすると、収納空間からジァニを取り出して(くぼ)んだ堀に濃度を限界まで上げた塩水を張る。

 少しくらりときたが、我慢して元の体に戻って、左手と後ろ側のシューバが対策を考える前に母様たちを支援するために私は駆け付けた。



もう少しで一番忙しい山場を超えるはずっ。

そうしたら、もうちょっとこっちに時間が取れるかもです。

この数ヶ月、実生活にいろんなことがありすぎてテンションが無茶苦茶上下して、話が読みにくくなってしまっていることは否定しません。

目標:もう少しの読みやすさ(笑)

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