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勇者召喚と聞いたのに目覚めたら魔王の嫁でした  作者: 大豆小豆
第2章 アスモダの深淵で見たもの
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第61話 マジですか。俺が女神に国王の嫁候補にされた理由がすごく理不尽で草

遅くなりました。

事情は活動報告にちょっと書きました。

少し状況が改善すると、いいなあ……

 ミシュルから2、3日猶予が欲しいとの申し出が了承されて逝った会議が終わった後、俺はミシュルと母様に呼ばれてティルクと共にミシュルから話を聞いた。

「先日、ティルクが鬼人族に呼びかけたいというので手続きをしていて分かった話だけれど、ケイアナとセイラが冒険者たちとシューダの討伐に来ていると言う噂がガルテム王国以南の森で広がっているようでね、今、ガルテム王国南部の森を中心に少数民族が集まってきているらしいの。

 彼らは森の中に住んでいてもガルテム王国の国民だし、こちらの戦闘に参加したいと希望してくることがあったら可能な範囲でセイラの指揮下に置いて欲しいと思うんだけど、どうかしら。」

 え、なんで私?、と俺が声を上げる。


 ガルテム王国の正式な代表には王太后である母様がいるんだから、第三軍を作って母様の直属にすれば良いんじゃないですか、そう言うと母様が笑った。

「セイラがガルテム王国国民の代表を務めた方が良い理由があるの。

 覚えてる?

 魔王妃の第3の力である眷属の総意は、眷属の力の合計が10万を超えれば発動ができる。

 今、眷属になった冒険者たちはその力を発動できる間際まで来ているけれどね、魔族の指導者は冒険者でいうA級以上の戦士だけでテルガやガルテム王国の王都を襲えるだけの兵力を少なくとも持っていて、使役はできていないかもしれないけれど、シューバやシューダといった強力な魔物を手駒として持っていることが分かっている。

 私たちは眷属を増やして魔王妃の第3の力を使えるように準備することを女神リーアは意図しているんだろうというのがミッシュの見立てよ。」


 ああ、眷属の総意なんてものがありましたね、と頷く俺に母様が笑顔で続ける。

「悔しいけれど、魔王妃が国民の忠誠心を集める必要があるのならば、魔王妃は若くて美人の方が受けが良いわ。

 セイラちゃんなら胸がやや寂しいことを除けば、若くて美人なことは間違いないし、何より健気で国民と国王思いの優しい女性だという評判は高まるばかりだもの。

 その辺を意図してセイラちゃんを広告塔として女神リーアが選んだんだろうというのが、この問題を相談した私とミッシュと兄さんの結論なの。」


 ……

 母様の猫なで声に俺は頭を抱えた。

 魔王妃の役割についてはすごく納得できる。

 でも、なんでその広告塔に俺を選ぶわけ?

 アスリーさんで良いじゃない。

 俺の憤懣を察したミシュルがご丁寧に補足説明をしてくれる。

「アスリーはダイカルと床入りを終えるまでは現役の勇者だからね、魔族は勇者の力を失わせた上でアスリーの強さをシューバで利用したかったんでしょうが、リーアの差し金で幽体を掠われたときは現役勇者のままでした。

 私たちは、リーアは人間族に対する防御としてアスリーを勇者のまま残し、魔族と人間族の両方から挟み撃ちを受ける事態を避けたんだろうと考えています。」


(マジですかー。)

 最近、日ごとにひしひしと重圧を感じている国王の婚約者設定を女神リーアが仕組んで後押ししているのだとすると、それを覆すのがどれくらい難しいかが思いやられて、目眩がして吐きそうだ。

 顔色が悪くなってるに違いない俺に、ミシュルが更に追い打ちを掛ける。

「セイラは嫌がるだろうけど、これは仕方がない流れでもあるのよ。

 アスリーはまだ魔王妃になっていないから、シューバ討伐で我々は魔王の加護を使って戦うことができる。

 でもね、もしシューダの中にいるのがザカールだとしたら、少なくともシューダには魔王妃の力、魔王の加護や眷属の総意などの力が発動しない可能性が高いし、下手をするとシューダ全部に通用しないのかもしれないわ。」


 魔王の加護が発動しないということは、シューダの攻撃の威力や効果がダイレクトに俺と母様へと伝わるということで、眷属の総意が使えないということは、眷属から上乗せされる力の増加部分が得られないということだ。

 シューダの中にいるのがザカールさんだったら、それこと魔獣や魔物を軒並み敗走させている勢力に対して、俺たちだけでは太刀打ちできないだろう。

 俺がその結果生じる必然的な大敗に表情を強ばらせていると、ミシュルが安心させるように言葉を繋いだ。

「テュールが魔物を集めてくれているのはそのための布石よ。

 魔物の中には、眷属の総意ほどではないけれど、短時間ならば魔物の力を私たちに上乗せできるコもいるの。

 できるだけ声を掛けて魔物が協力をしてくれれば、勝算が全くない訳ではないわ。」


 ミシュルは俺に安心させるようにそう言ってから話を戻す。

「私たちは、分の良い戦いができるシューバとの戦いで分かり易い功績を挙げて、故国やアスモダの支持を決定的なものとする必要があるの。

 その力はシューダとの戦いではあまり役に立たないかもしれないけれど、今後の魔族の指導者との対決に向けて力を蓄えていく必要があるのよ。」


 ……そうですか。

(昨日、男性で一日を過ごして未来は明るいかと少しだけ夢を見たのに、俺の未来はダイカルの婚約者の役割でほぼ埋め尽くされてるんですね。)

 何で俺が、という違和感は残るが、どうも好き嫌いを言っていられる余裕はなさそうだ。

 溜め息を吐いて、それから棒読みで、仕方がないんですね、と俺は相槌を打った。

 ああ、と考えてから周囲を見渡し、ティルク、助けて、と心で念じてみる。

 俺が男性に戻るのを支持してくれる唯一の存在と信じていたティルクもまた泥船なのかもしれないとは、その時の俺は考えもしなかった。


◇◆◇◆


「あー、お嬢さん、お嬢さん。」

 会議が終わってティルクと町を歩いていたら、いきなり声を掛けられて、5人の体格のいい若い男たちに取り囲まれた。

 ナンパか、と思いながら相手を見ると、どうもそれぞれに見覚えがあって、あれ、と考えていて、思い出した。

「ゴブリン族の人たち! 」

 全裸になって立派な体格と立派なナニを誇示しながら囲まれたことが脳裏に浮かんで身構えたら、5人が揃って頭を下げてきた。

「もう結婚の決まった方だったとは知らなかったんです。

 いつぞやはすみませんでした。」

 え、ええ。謝ってくれるのならば、こちらも言うことはないんだけれど、わざわざこちらを呼び止めて、何の用かな。


「あの、セイラ様ですよね。

 俺たち、シューバ討伐に参加することになったんで、先日の謝罪と今回のご挨拶をと思いました。」

 そう言われて、彼らの輪郭が魔人族の血を引く者特有の特徴で濃く見えることに気が付いた。

「俺たちゴブリン族は種族としては父方の特徴しか出ないのですが、妻の種族の血統は受け継いでいます。

 俺たちはガルテム王国の森に住んでいますので、大半は魔人族の妻を娶っていますし、森に住んでいますから魔獣と戦う機会も多いんです。

 今回の魔獣の氾濫は俺たちの生活に直結した問題でもありますので、シューバやシューダと言うんですか、魔物の討伐に是非参加させてください。」


 そういうことか。

 俺は彼らによろしくと挨拶をして、横にいるティルクや仲間の女性たちには求愛しないことをまず誓わせた。

 彼らも戦いに赴き事が終わるまでは、いつもの求愛行動をするつもりはないとのことで安心したのだけれど、戦地で囲まれて全裸で求愛でもされた日には、人によっては戦うどころの話できなくなってしまうかもしれないものね。


 女性陣への煙幕を張って、これで安心と気を抜いた俺だったが、悲劇は俺の知らないところで起こっていた。

 今回の討伐への参加者は原則としてビアルヌ城に泊まることになっているので、ゴブリン族の人たちもビアルヌ城に投宿した。

 ビアルヌ城では、一部賓客は個別の部屋にお風呂が付いているのだけれど、大半の宿泊者は男女別の大浴場を使うことになっていた。

 そして、ビアルヌ城には彼らを含めて20名ほどのゴブリン族が滞在することとなっていて、ゴブリン族は家族単位の団体で入浴する。

 そのために、大浴場で彼らと遭遇した冒険者たちはご立派なモノをぶら下げた団体さんに囲まれて、ショックやコンプレックスで大半の冒険者が引き籠もった。


 二日経って、ご立派な団体さんがゴブリン族であることに気付いたキューダさんが青い顔を()して私たち女性陣に危害が及んでいないかを確認に来て、それから各冒険者たちを部屋から引きずり出して俺たちの護衛のシフトを指揮し始めた。

 冒険者に一日中張り付かれると結構邪魔だし、彼らがゴブリン族を見る度に顔色を少し青くして股間を押さえているのが気の毒で、私たちとしては止めて欲しいのが本音だったが、様々な観点から検討した結果、ゴブリン族が求愛活動をしない約束を俺たちが取り付けていることの説明が面倒だったので、彼らのためにも知らせないのが良いということにして放置した。



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