第九話 試練の部屋③
て言うふうに焦ってみたけど四回有れば多分大丈夫だと思う。この世界ではHPとゲームみたいな表記であるがただの目安でであってゲームのように一撃受けたらそれ相応のダメージが入るとかではなくて前のいた世界のような物理法則が働いているのだ。
急所に入れば死に至るダメージも有れば、スライムに攻撃されたところで一ダメージも受けない事もあるし、そこは現実的なのだ。
だから迂闊には攻撃を受けてはいけないのである。…回避に徹する系ラノべを読んでおけばよかったかな?でもああ言うのは殆どスキルなどに頼っただけの回避だから見た所で意味無いかな?
まぁ今はこの戦闘に集中しよう。いま現在の状況と言えば魔狼が今、こちらを警戒しながらゆっくりと横移動をしている。でも、先程受けた攻撃が効いているのか少しだけ痛がっているようにも見える。それを利用しない手はない。
MPは大体六十秒で一回復する仕組みになっている。それが戦闘中であってもだ。だからたとえゼロになっても六十秒間耐えれば再度使用可能なのだ。
まだ四回も使えるのだ。強気で行こうかな。
そう思いながら空いていた魔狼との距離を一気に詰めた。魔狼はいきなりの行動に驚いたようだがすぐに立て直し、前かがみになりいつでも噛みつけるような体制を取った。
一定の距離まで近づくと魔狼がまた、飛びかかってきた。だが、今回は向こうも学習したらしく口を大きく開けて横向きに飛びかかってきた。確かにこれでは正面を殴る事は出来ないだろう。だが、こいつは相手が避けるとは思ってないのだろう。
俺は当たる寸前でかがんで避けた。そして避けた瞬間にお腹めがけてスキル無しで思いっ切り殴った。魔狼は、ギャウと鳴いた後、倒れた。丁度急所に当たったのか、先程の一撃が大きかったのか分からないがそのまま魔狼は動かなくなった。
『そこまで!…お主、本当に平和な世界から来たのかのぉ?あの戦闘スキルは並みの人間には習得出来んぞ。それこそ今の立ち回りは冒険者ランクで言えばBに値するぞ?』
「いえ、前の世界で習い事をしていましてですね。それで習得しまして、鍛錬していました。」
『しかも、見ていたがまだ本領発揮しておらんだろう?まだ、本気を出しておらんだろう?』
「いえ、確かにあれはまだ自分の力を発揮出来ていなかったのですが、あの時は流石に少し怖くてですね…ビビっていました。ですが、あの時出来る最大限の事をしました。なので私は一応本気を出していました。」
『ほぅ。確かにそうじゃのぅだが、よくぞその状況であそこまでの戦闘ができたものじゃ。普通に考えれば平和な世界で過ごしていた者は大抵恐怖で正常な判断が出来ないものじゃが…逸材じゃのぅ。これならこの試練もクリア出来そうじゃの。次行ける準備が出来たら教えて欲しいのじゃわい。
後、先程の魔狼を倒してレベルが上がったようじゃの。確認して見ると良い。』
「ええ、分かりました。ありがとうございます。」
本当は心の中でガッツポーズするくらい歓喜していた。もちろん人生の中で生き物を殺したことなんて一度も無い。それを克服出来たのだ。未だに心臓がバクバク言っている。久しぶりにあそこまで集中した。集中し過ぎて頭が痛い。
少しだけ収まってきたあとにお爺さんが言っていたレベルがどうなっているのか確認しよう。
LV:3
HP:15/15
MP:15/15
AT:15
DF:15
AG:15
LK:5555
スキル:『裏返しLv---』
レベル3に上がっている。最初に見た時は全て5だった事を考えると、数値が1レベルにつき5上昇していることになる。だが、運は上がっていない。流石に運が上昇することはないのだろう。ま、俺には意味無いことだけどね。他の転移者よりも、更に言えば英雄の証のスキルを持っているユウにさえ二桁違うのだ。
だが、全員が全員数値の上昇値が一緒では無いだろう。一応聞いておくとするか。
「すみません。」
『む?もう始めても良いのかのぅ?』
「いえ、一つ質問がありまして、この世界ではレベルが上昇すると数値はどのように上昇するのでしょうか?」
『ふむ。召喚された時に教えてくれなかったのかのぅ?いや、お主は来た瞬間に逃げたのじゃったな。それじゃしょうが無いのぅ。レベルが上がると0〜5上昇するのぅ。でも、その上昇値は運に左右されての、余りにも運が低いと上昇値が1しか上昇しなかったり、悪い時には一つの項目以外全部0だったりするのぅ。だが、この世界ではレベル上限値は無いからのぅ。上げれば良いのじゃ。100レベルにすれば大抵酷くなければ150には上がるからのぅ。そこまで行けば冒険者ランクA行けるか行けないかの所じゃの。』
「………教えて頂きありがとうございます。」
『うむ』
驚いた。この世界ではレベル上限値が無いなんて……て言うか俺、全ての項目で最大引いてるのだが…これはチートと言うべきか?だが、考えるとそうも言い切れない。だってお爺さんによればレベルさえ上げていれば何処までも強くなるのだ。最強とは言い切れない。ま、どう考えても「裏返し」スキルはチートと呼べるが、これは使い方次第だろう。欲をかけばユウのスキルも見たかったが、仕方ないだろう。
良し!もういいだろう。始めようか。
『む?もう始めても良いのか?』
「ええ、よろしくお願いします。」
『良かろう!弐之試練を伝えよう!次の試練は冒険者ランクBの人間のコピー体と戦って貰おう!』
今更気付いたけどこの主人公運もチートでしたねw