第七話 試練の部屋①
俺は、スキルの説明を読みながら青っぽい色の部屋に入った。
ドアの前に読めない文字で書かれているくすんだ張り紙を気にする事も無く……
ギィと錆び付いている音を立てながらドアを開き、部屋に入ってドアが閉まった。スキルの説明項目を読んでいた俺はそこで初めてこの部屋の異様さに気付く。
(トイレに入ったはずなのだが、何故こんなにも真っ暗なのか……そもそもここはトイレなのか?間違って入ったなこれは…まっすぐ出れば大丈夫だろう)
次の場面でその考えが甘いと言う事を理解した。
(はぁ…ま、そうだわな。真っ暗な部屋に入ったら出れ無いのは定石だなぁ)
と、考えていると不意にお爺さんの声が響いた。
『小僧、ここに何用だ?』
おーこれがあの有名な『こいつ私の脳内に……!』って奴かー
…って面白がってる場合じゃないな
『おい!聞いておるのか小僧!何故この部屋に入ったかと聞いておるのだ!』
「あぁ申し訳ありません。便所に行こうとして間違えてこの部屋に入ってしまいました。」
『便所だと?この部屋の付近に便所など存在せんはずだが…あぁ小僧あのドアを使ってここに来たのか…すまぬな気が立っていたようだ。』
「いえ、こちらが勝手にこの部屋に入ってしまったのがいけないのです。謝罪されてもこちらが困ってしまいます。」
『ほっほっほっ、謙虚な小僧だなお主は、名は何と言う?』
「アキカツ・ミズキと申します。」
『ほぅ今日は驚く事が多いのぅ。まさかまた異世界の者がここに来るとは!』
『また』?このお爺さん異世界人と会うのは数回目という事か、まぁその前に気になる事を聞いてみることにした。
「あのぉすみませんがこの部屋はどう言った部屋なのでしょうか?」
『おお、この部屋に来る者と会うのは久々だからのぅ説明を忘れておったわい。この部屋は試練の部屋もしくは試練の間と呼ばれておって、この部屋に入った者を試しておるのじゃよ。』
ん?試している?なんの為に?
『今、何故試練を与えておるのか疑問に思ったじゃろう?試練の部屋はのぅ、入った者の願いを条件を満たせば叶えてやる部屋だからだの。』
「条件って何です?」
『人によって違うがのぅ多くはそやつの力を試す事が多いがの、他にも精神力を試したり、人徳を見たりするのぅ』
「先程、また異世界の者に会ったと仰っていましたがその方は何を試したのでしょうか?」
『懐かしいのう、そやつは「世界最強の力をくれ!」とか言いおって、調子に乗っておったから過去最強の男を出して戦わせたら秒殺されての、だから儂は失格じゃと言ったのじゃが、そやつはあろう事に「こんな奴と戦える力を持ってたら頼まねぇよ!詐欺だろ!試練の部屋とか言ってるけどただの詐欺じゃねえか!こんなのクリアさせる気ねぇだろ!クソ爺が!」とか言いおって流石の儂も我慢出来なくての、逆に呪いをかけて追い出してやったのじゃ』
うわぁそいつ絶対オタクだな…オタクの上に傲慢な奴とかラノべだったら物語の中盤で一緒に召喚されてたいじめられていた奴にやられるやつじゃないか。て言うか最強の力とか無理に決まってるだろ。
『儂は最初から叶えられるものしか無理と言うたのに「出来るだろ!」とか無茶言いおってのぅ。でもこちらは無茶な事じゃ無かったのに向こうが勝手に勘違いして暴言吐きおったのでのぅカッとなってしまったのじゃ。』
「ですが、そう言った試練の部屋と呼ばれているからには試練を受けれても代償無しでは出来ないでしょう?」
『おぉよく気付いたのぅ、異世界人だけの話ではなくての、こちらの世界の者も勘違いして軽い気持ちで此処に来てのぅ代償が有るぞと言ってもほぼ全員が聞いてないだの知らないだの言いおっての、ようやくこの数十年で理解したらしくてのぅ全くこの部屋を利用する輩が居なくなっての、そこで君が来たのじゃ』
「ちなみに代償と言うのはどう言った物が有るのでしょうか?」
『願った事によって代償も変わってくるがの、一番軽い物でその一日不幸になる呪いを掛けたのう。』
おいおい、一番軽い物で呪い系かよ。これは…受けない方が良いな。
『一番酷い物で両目を無くす呪いを掛けたのう。ちなみにこの呪いは聖女であっても解呪出来ず、治療も不可にした。』
「こわ!すみませんがこの部屋に入ったら絶対その試練に挑まなければいけないのでしょうか?」
『いいや、試練の部屋に入った者は試練を受けるか聞くのじゃ。だから儂はこの部屋に入った者皆受けているからの。だから君も受けると思って思わず聞いてしまったのじゃ。』
ほっ…まさか人生の中で本当にほっとか言うと思わなかったが、この場面に関しては流石に言うしかない。
『じゃがお主は一度だけ代償無しで試練を受けても良いぞ』
ブックマーク、評価よろしくお願いします。