第三話 クラス転移③
目を閉じても感じていた眩しさが無くなったのでゆっくりと目を開けてみると、何処か殺風景な灰色の壁で囲まれた狭い部屋にいた。周りを見ると違うクラスの全く知らない奴が四人程いた。
ドアの方を見ると、いつの間にか白い法衣を着た外人の様な女性とその後ろに騎士のような鎧を着た人がいた。
「異世界の皆様、ようこそいらっしゃいました。此処はリキス帝國と呼ばれる国であり、貴方達から見て異なる世界の国で御座います。今現在、皆様を御招待している最中ですので、詳しい説明は広間でさせて頂きますので御質問等は後程受けますのでどうか今は従って下さると嬉しいです。先程、暴れだした者も居たのでこちらとしても穏便に済ましたいのです。いきなり拉致してしまった感じで確かにお怒りになるのはわかります。本当に申し訳無いのですがどうか穏便にお願いします。」
「姫様、落ち着いて下さい。言いたい事が余り分からなくなっています。」
「す、すみません。」
「異世界の皆様、今は落ち着いてこちらへどうぞ。広間まで案内させていただきます。」
自分としてはそこまで理解出来ない説明では無かったが、自分の前に暴れた奴がいた事に少しだけ驚いた。暴れたという事は個人としての意思は確立してるという事だ。つまり、まだ洗脳はされていない可能性が高いということだ。
だが、まだ信用は全く持って出来ない。俺のように警戒している奴を安心又は騙す目的で嘘を吐いてるか、少しずつ洗脳しているか、利用出来るように懐柔しようとしているのか、何か目的を持っている可能性は非常に高い。異世界の住人を拉致しているのだ。何処に信用する要素があるのだろうか。
今は相手のいう事に従うことにするが、気になる事があったので試してみよう。
(ステータス!)
名前:水樹 秋勝
LV:1
HP:5
MP:5
AT:5
DF:5
AG:5
LK:5555
スキル:『裏返しLv---』
やっぱりか此処は異世界だと言うのがはっきり分かるな。地球ではこんなの出なかったからな。
だが、何だこの凄い手抜き感半端ないステータス数値は…
5を適当に配置したようなステータスは何だ?ふざけてるのか?作った奴は。
て言うかこれ殆どの創作系の小説で追放か殺害だろ。やばいんじゃないか?逃げれなくなりそうだぞ?
さて、広場に着いた。まずは俺より先に送られていたはずのユウを探そうか。
と思ってたら丁度此方に来ていた。
「よう!大丈夫だったか?物凄い光で十秒ほどクラクラしちゃったぜ。何であんな光らなきゃいけないんだろって思うくらいだったから今でも目がなんか違和感あるわ。」
「ん?お前転移してから五、六分たってるだろ?そんだけありゃ目くらい治るだろ?」
「いや、一、二分くらいしかたってないぞ?」
「て事は地球と時間軸がちょっとだけ違うのか?まあ良いや。そう言えばお前ステータス見たか?」
「ステータス?何だそりゃ?」
「シー。まだ多分気づいてない奴もいるから大きな声出すな。此処は異世界だぞ?そういうのくらい気付け。」
「確かに。忘れてたわ。んじゃ見てみるわ」
「声に出すなよ。」
「わーてるよ」
俺がこんなに気安く会話出来るのはこいつだけだな。少しだけ待っていると下を向いていたユウがこっちを向いて、
「なんか知らないけどほんとにゲームみたいなものが出てきたんだけど、スキル欄に『英雄の証』なんて大層なものが書いてあるんだが……」
俺は瞬間に(あ、俺ユウと一緒には逃げれないな)と思い、これは誤魔化しとくしかないなとも思った。ん?友達だろ其処は頑張れよって?無理無理俺はそんな勇気ないし、そんなこと出来る力も無い。『裏返し』なんて言うスキルなんてもってのほかだ。だって効果どころか使い方すら分からないんだもん。
「英雄の証?何だその如何にも最強格のスキルは」
「いや、なんか書いてあるんだ。更に隣にレベル一とか書いてあるから成長すると思うし」
「……そう言えば数値はどうだった?ほら、HPとか書いてあるだろ?その隣に書いてある数値」
「二十とかだな。平均だけど、詳しく言えば25が最低で、多くて30って書いてあるな」
あ、これオワタな。もう今必死に逃げようかな。もうヤダ。俺が何したって言うの?平和だったじゃん。泣けてきたわ。