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私の役割は結構つらい


 私の提案から少し考える素振りを見せた後、何やら杖を動かし私の頭に触れる。ぼんやりと身体中が淡白く光り、神の御使いはにこりと微笑む。


(あなたの来世が決定致しました。あなたはこれから周りの人達を幸せにする為に、ある役割を持った少女になって頂きます)

「役割?」


 神の御使いの曰く、私が生まれ変わる世界は地球ではなく、別の世界。なにそれ、いきなり話がぶっ飛ぶんだけど。漫画とかゲームとかあまり得意じゃないのに。

 私はそこで貴族の少女になり、関わる人達を幸せにしなければならない。周りだけでいいのかと思えば、どうやらその少女は王族と関わり下手をすれば戦争を起こす事態になるかもしれないらしいとの事。


 なにそれ。え、なにそれ。

 下手したら戦争が起こるとか、罪を償うつもりが罪増えてんじゃん。王族とは関わらないのがベターですね。そうしましょう。

 しかしそういう訳にもいかなかった。


(王族と関わる事でとある少女と出合います。その少女を中心に、様々な出来事が起こるのですが、あなたはその出来事に関わらなければなりません。その少女の前世は、村の生け贄として生き埋めにされたのです。悲しいですねぇ)


 その少女の来世は、王子様との幸せな結婚らしい。

 う、羨ましくなんかない!


(神に捧げられたという事で、彼女の来世は幸せでなければなりません。ですので、あなたには彼女を助けてあげて欲しいのです)


 そういう事ならなんとかなるかも。あれでしょ、王子様との間を取り持ってあげればいいんでしょ? キューピッド役みたいな。それならまあ、友達同士でやった事があるから大丈夫かも。


(そしてあなたは彼女の印象を良くするべく、時には障害になり時には踏み台になって比較されたりしなければなりません)


 要は噛ませ犬的な? 私が嫌な役をやってその女の子の印象を良くしなきゃいけないって訳で。神の御使いにマッチポンプをさせられるとは。まあ、それでも奴隷になるよりは全然マシだよ。


「やります!」

(そうですか。やる気があるのは大変宜しいですねぇ。ただ、注意点がいくつかありますのでご注意を)

「注意点?」

(あなたは役割をこなしながら生きなければなりません。ある程度の行動は自由であなたの判断に任せますが、必ず行わなければならない行動や、仕草、発言は必ず行って下さい)


 なんか怪しさ満点なんだけど。

 必ずしなきゃならない行動とか、なにをさせられるのか不安でしかない。


(回避は不可能であり、もし拒否しようならば激しい痛みがあなたを襲います。下手をすれば死にますねぇ)


 ちょ、おおおおおはおおぉぉぉおおおいいいいっ!!?


(そして今回も罪を償わずに命を終えれば、もうあなたには機会を与える訳にはいきません。強制的に償って頂きます)


 仏の顔も三度までって聞いた事ある! マジか!

 これは絶対に頑張らなきゃ。来来世の私の未来の為にも。

 よく考えれば周りの人達を幸せにするって何をすればいいのかわからない。でも必ず行わなければならない事があるなら、そこからヒントを得ればいいんじゃない? そうだ前向きに考えよう。後ろなんて見てられない。


 赤ちゃんの頃から今の私の記憶があると何かと大変だろうからと、今の私の記憶を持ったまま十六歳から人生を歩む事になる。

 よかったー! 記憶を持ったまま赤ちゃんから再スタートなんて恥ずかしすぎるもんね。そこは感謝。十六歳からなんて若返った感じがしていいかも。


(最後に。あなたの未来は誰にも愛されず、ひっそりと孤独死する運命です。どんなに異性と仲良くなろうとも、恋愛には発展致しません)


 きっつー。孤独死は辛いわ。うーん、でも奴隷よりマシだし、仲良くはなれるなら友達ぐらいは出来ると思うし、そこは我慢しなきゃね。これは償いの人生だから。私の前世での話だから全く納得いかないけど。


 神の御使いから他に細々とした注意点を聞き、私は新たな人生を歩む為、巨大な扉の前に立つ。この先は転生する為今の私の体とさよならして、一旦意識が落ちるらしい。さよならこの体。部活のおかげで筋肉質な体だったけど結構気に入っていたんだ。

 上手くやれるかわからないけど、やるだけやってみよう。意気込む私は、そっと扉を押してみる。隙間から眩しいまでの光を浴び、後ろにいる神の御使いに会釈をした。


「チャンスをくれてありがとうございます。私頑張ります。お世話になりました! それじゃっ、あっ!?」


 そうして扉の向こうに飛び込む。が、扉の角で足を躓き、転がりながら転生へとしていくのだった。


(あ、……行ってしまいましたねぇ。今の衝撃で誤作動が起きなければ良いのですが)


 神の御使いの囁きなんか届く筈がなく、

 私は新たな人生【プリシティア・クローツ】として生きる事になった。


  

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