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第五十四話 集合

 今、俺とマリアは、ランドルの宿屋の近くの原っぱに来ている。俺達の計画を説明するためだ。

 

 ランドル一家と、もう一軒の宿屋のプラッツ一家も一緒だ。マリアが引き取った奴隷達もいる。20人ほどだ。

 使い魔達は、温泉を楽しんでいるので、ここにはいない。

 

「呼人、なんだこんなところに呼び出して、この時期は泊まり客がいないからいいけどよ」

「本当、この時期は無理して歩いてでも、温泉のある街に行っちゃうから、暇でしょうがないよう」

「ランドルも奥さんも聞いてくれ、プラッツ一家も、奴隷達も聞いて欲しい」

「なんだなんだ、あらたまって。街の恩人の頼みならなんでも聞くぞ」

「まあランドル、まずこれを見てくれ」

 

 俺は、原っぱにゴーレムハウスを展開する。ゴーレムハウスは、一度外観イメージを焼き付ければ、魔石に縮小して持ち運びができる。展開にもさほど時間も魔力も掛からない。

 

 ウニョ~ン

 

 小さな魔石が、風船のように膨らんで、家の形になっていく。3分ほどで、体育館2つ分くらいの大きな家となった。見ていたランドル達は驚いて声もでない。

 

「今見たように、これは魔法で作った家だ。中を案内しよう」


 1階の半分は、従業員用の住居や倉庫になっている。残り半分が食堂だ。酒場としても使える。キッチン、カウンター、テーブル席、トイレなどがあり、小洒落た感じに仕上げた。窓もガラス(スライムボディ)で作ってあり、店内は明るい。

 

「はあ~、立派なもんだなあ。うちの宿より全然広いぜ。ガラス窓なんか、この街には無いぞ。盗まれるんじゃないか?」

「魔法で作った家だからな、普通の人間には壊せないさ。とりあえず細かいところは、置いておいて2階に行こう」

 

 2階には下駄箱と脱衣場がある。鍵付きだ。そして休暇室もある。鏡があり、乾燥魔法が使える魔石や、魔力を流して使うマッサージチェアなどの設備があって、かなり快適だ。

 勿論(もちろん)、これらの設備は、男女別々に用意してあり、専用階段を登ると、それぞれ男湯と女湯につながっている。

 2階の残ったスペースは、温泉の配管スペースやオーナー専用の部屋だ。

 

「ここで靴を脱いで、こっちで服を脱ぐんだ」

「これはなんだ、呼人。おっさんがいるぞ」

「それは、鏡だ。写っているのは自分の顔さ」

「うわ、本当だ。カミさんや娘が写っている。鏡なんか初めて見たよ」

 

 そして3階に上がる。3階には湯船がある。湯船は白を基調にした大理石で作った。

 と言ってもゴーレムハウスなので、イメージと魔力でそれっぽく仕上げただけだ。床もピカピカの大理石だ。滑り防止としてV溝が格子状に切ってある。タイルみたいな感じだ。

 

 体育館2つ分だ、湯船はかなり広い。50mプールほどもある。箱庭の温泉ハウスのような、洗い場は無い。

 この大陸の一般的な風呂は、()かるだけらしい。石鹸で体や髪は洗わないそうだ。浄化の魔法で洗うのが普通だとか。だから洗い場のスペースを小さくして湯船(ゆぶね)を広くした。

 

 そして壁は、四面全てが透明だ。柱が何本か立っているが、それ以外の壁も屋根も透明で、展望風呂になっている。

 男湯と女湯を仕切る壁は、さすがに色が付いているので、360°の展望では無いが、かなりのパノラマが楽しめる。個室の風呂は無いが、なかなか良いホテルになるだろう。

 

 ハアーっとみんなから、ため息が出る。あまりの豪華さに思考停止しているようだ。

 

「みんな聞いてくれ、ヨルクの街に温泉が湧いたが、普通の温泉宿では、多くの客は望めないと思う。

 そこで俺は、この展望風呂をヨルクに建てたいと思っている。今は宿泊する部屋は無いが、魔法の家なのですぐに追加できる。知れ渡れば、かなりの話題になると思うんだ」

 

 ランドル達は、俺の言葉を待つようにシーンとしている。

 

「みんなは、ここで働かないか? 俺とランドル一家とプラッツ一家での共同経営だ。奴隷達は従業員として働いてもらう。一年後に解放を望むなら応じよう」

「呼人、共同経営って、具体的にはどんな感じだ?」

「まず俺は、この建物を提供する。それとこの宿屋が知れ渡るまでが大変だと思うので、最初の一年間だけ、食材と酒の提供をするし、みんなに給料を払おう。ランドル達には労働力を提供してもらう」

「ずいぶんと俺達に都合がいい話だな。こんな立派な宿屋を建ててもらって、食材の調達費用もただで、給料までもらえるのか? 呼人は大損じゃないか?」

 

 さほど儲けは期待していない。マリア(おっさん)が趣味で酒場をやりたいだけだからな。仕事を舐めるなと怒られそうだけど、それはそれだ楽しく生きることが大事なんだ。

 それに俺は、他で稼ぐし温泉に入れれば良いと思っている。

 

「まあ、ぶっちゃけそうなんだが、実はこのマリアが趣味程度に酒場をやりたいそうなんだ。武闘大会の賭けに勝ったから初期資金も潤沢(じゅんたく)だし、乙女ピンクがオーナーだから話題性に事欠かない」

「皆さん、私はよぶちゃんの仲間のマリアよ。よろしくねぇ」

「「「乙女ピンク!」」」

 

 ダメよバラしちゃあ。と顔を隠すキモいおっさんは置いておいて話を進めよう。

 

「そんなわけで、マリアをオーナーにして、たまに酒場で働ける環境が欲しいだけで、俺達は利益には関心が無い。

 勿論(もちろん)、ランドル達が自分の宿屋にこだわるなら、俺達は南のエルクで、この温泉酒場を開くだけだから、断ってくれても問題は無いんだ」

「じゃあ、なんでわざわざ……」

「それは、ヨルクの景色が好きだからさ。ここに展望風呂を作れば、いつでもこれるからな。オーナー専用のスイートルームは、空いたスペースに勝手に作るから、無料で泊まり放題ってわけだ」

 

 ランドル達は顔を見合せて考えている。

 

「すぐに返事をしろとは言わないよ。考えてみてくれるか?」

「いや呼人。俺は乗ったぞ」

「呼人さん、私も乗ったよう」

 

 俺も私もと、プラッツ夫婦も言う。即決かよ。頼もしいなぁ。

 

「いやいや、せめて今晩一晩くらい、考えた方がいいんじゃないか?」

「いや、温泉を整えるのに、かなりの借金をしなければならないと、思っていたところだ。こんな美味しい話に乗らない手はない。司令官なら信用できるしな」

「そうだよう、呼人さんはこの街の神様だよう」

「奴隷のみんなは、そういう事だ。衣食住には苦労はさせないが、その分働いてもらう。ちゃんと働く分には奴隷扱いはしないと約束しよう。あくまで従業員として雇うつもりだ」

 

 奴隷達20人は、立場上意見は言えない。だが悪い話ではないと思う。奴隷達に異論は無いようだ。下手な主人に買われるよりは良いと、安堵(あんど)の声を上げている。

 

 

 

「建物と初期資金を提供する、俺とマリアがオーナーとして経営のトップとなる、共同経営とは言えランドル達は、俺達の下につく形だ。利益は3等分するが役職などで多少の違いは出る」

 

 ランドルもプラッツも、それで良いと言う。

 

「まず俺達は、毎日顔を出すわけではない。そこでこの宿屋の従業員のまとめ役として、ランドルの奥さんを任命する。実質宿屋のトップだ。女将さんだな」

「任せておきなよう」

「プラッツ一家には申し訳ないが、俺は君達の事を知らない。ランドルの奥さんは、人柄も経験も十分だと判断したんだ。済まないが従ってもらう」

「構いませんよ。この計画に一口噛ませてもらえるだけで十分です」

「じゃあ、奴隷達は今日から従業員として教育してくれ。元の宿屋を従業員の住まいにしよう。余った部屋は、別館扱いだな。こっちの部屋が客で満杯になったら使う感じで行こう」

 

「呼人、なんかワクワクしてきたぜ」

「まあ、一年後には利益が出せるように、せいぜい頑張ってくれ」

 

 午後からは温泉宿の改造だ。マリア達には、布団などの開業に必要な物を買い出ししてもらおう。なにせ国中に亜空間転移網が張り巡らしてあるからな、いろいろな街から買い(あさ)れば良い。足りない場合は、箱庭の蜘蛛さんとイモムシさんに頼めばいい。

 

 

 

 話もついたので、昼食を食べることにした。ランドルの奥さんの宿屋で、使い魔達とシチューやカルボナーラに舌鼓(したつづみ)を打ちながら話をする。

 

「呼人様、宿の名前を考えなければなりませんね。『司令官の御用達亭(ごようたしてい)』などどうでしょう」

「エルゴ、そんな恥ずかしい名前、ダメに決まってるだろ」

「旦那、『怒濤(どとう)の暴れん坊司令官印のビックリ温泉宿withT』がいいんじゃねぇか?」

「よぶちゃんがオーナーだから、『ヨッフルズホテル』よぅ」

「ん、アフロ温泉」

「酔いどれ旅館。シッシッシッ」

「……真面目に考えているのか?」

「じゃあ、よぶちゃんはどうするのよぅ」

「乙女温泉宿とかでいいんじゃないか?」

「あらあ、意外に良いわねぇ」

 

 そんな事を話していたら、突然珍客が現れた。客は食堂に勢い良く入ってきて高らかに叫ぶ。

 

「どうじゃ、(わらわ)のめざましい活躍振りは、だははは」

 

 幼竜クロールミアと精霊達だ。後ろには、神様とウーテ、おばば様とアロンの姿まである。これで全員集合だ。

 

「ルミア、公爵屋敷破壊に、病の治療、それからシーサーペント討伐に反乱軍鎮圧と、連日新聞に載っていたぞ。凄い活躍じゃないか」

「グフフフ、なあに大したことはないわ。だははは」

「班長達もお疲れ様。インタビュー読んだぞ」

「司令官のおかげでし。楽しかったでし」

 

 魔物は力を示すのが大好きだ。二人とも本当に楽しかったようだな。声が弾んでいる。

 ルミアとプラスワンも、どうやら反乱軍の討伐で、周囲がうるさくなってきたので逃げてきたらしい。

 

「ウーテもご苦労様」

「七色の神の鉄槌(カミナリ)は派手だったっす。呼人っちのおかげで、鬼ババがご機嫌っすよ」

「ウーテはん!」

「間違えたっす。(とうと)いお方っす」

「神様までどうしたんだ?」

「呼人はん、あちきは用事のついでどす。ピザが欲しくて来たわけじゃござんせん」

 

 チーズを使ったピザなんかを、看板料理にしたいわぁ、とマリア(おっさん)が言っていたが、いつの間にそんな情報を得たんだ? やはり神様は(あなど)れん。

 都では、ウーテが神の鉄槌(てっつい)で城を壊した後、神様が城を復元したそうだ。無機物の時間を巻き戻して復元する魔法があるらしい。以外と慈悲の心があったようだ。

 だったら最初から壊すなよと言いたいが、ストレス発散にはなっただろう。おばば様も国の被害が減って嬉しそうだ。

 

 実はピザが本命で、城はついでだという事は黙っておこう。

 

 ちなみにブサイクは神獣ヌエだった。神様とウーテが、どうしてこんな所にいるのかと、ビックリしていた。

 ウーテの話では、ヌエは神界の獣らしく、神界の木の実から生まれるそうで親はいないと言う。神気を扱えて、人より存在の格は上なのだとか。

 大人の神獣なら次元転移可能だそうだが、子供の神獣には無理だと言う。どうして下界にいるのか、神様も首をひねっていた。

 

「おばば様、流行病の経過はどうなんだ?」

「国中の薬師ギルドが経過を見守っておるが、異常は無いそうじゃ。皆ありがとう。ありがとう」

「アロンは何もできなかったけど、皆さんありがとうございました」

「おばば様もアロンちゃんも顔を上げてちょうだい。仲間なんだから当然でしょ。でも良かったわねぇ」

 

 それから食事をしながら、休暇中の出来事を報告し合った。みんな笑顔が絶えなかった。やはり旅は良いものだと改めて実感する。

 

 

 

「しかし、マリアが武闘大会優勝とは意外じゃったな」

「私もやる時はやるのよぅ。よぶちゃんも戦ってみたらどうかしらぁ」

「おう、それはいいぜ旦那。いっちょやるか」

「ええー、なんでそうなるんだよ」

 

 いいじゃねぇかとハルナに迫られ、嫌だ嫌だと俺は言う。まあまあとエルゴが間に入り、男は度胸じゃとルミアが(はや)し立てる。

 そんなこんなで、なし崩しに俺とハルナの模擬戦が始まった。

 

 俺は今、ハルナと対峙(たいじ)している。

 

 街の近くの草原にドナドナされた俺は、仲間達が見守るなか、久しぶりの戦闘に胸が激しく動悸(どうき)している。

 ハルナは人外だ。人間の俺が普通に戦っても勝てはしない。マリアのように策を(こう)じる必要がある。俺は緊張はしているが、やるからには負けるつもりはない。

 

 すでに空気の手を展開して、ハルナの左右に配置してある。空気の手は、空気を強固に結合して固体化した魔法の大きな手だ。勿論(もちろん)透明だから見えない。

 

「いくら旦那(だんな)でも、あたいにゃ(かな)わないさ。マリアのようなイメージを打ち込む攻撃も、初見(しょけん)ならいざ知らず、すでに見た攻撃だ。当たらなきゃ意味がないぜ」

「まあ、やるだけやってみるさ」

 

 両者がニヤリと笑ったあと、ハルナが右に動いた。(すご)いスピードだ。

 

 ドオオン!

 

 ハルナが空気の手に当たった衝撃でよろめく。俺は左右の空気の手でハルナを(つか)み上げ、間髪(かんぱつ)入れずにイメージを流し込む。

 

「チュチュウ、ヂュウ」

 

 空中で尻尾を()ままれて、ぶら下がったネズミが暴れている。俺がイメージを叩き込んでネズミに変えたハルナだ。

 見ていたみんなは、何が起こったのか分からず、ポカンとしている。空気の手は見えないから、誰にも理解出来ないだろう。どうだ瞬殺だぞ、(まい)ったか。

 

「な、何が起こったの? よぶちゃん。大きな音がしたらハルナちゃんが浮かび上がって、ネズミに変わったようだけど…」

 

 俺はハルナを元に戻してやった。

 

「いきなり衝撃(しょうげき)を受けたと思ったら、ネズミになってた。あれは旦那がやったのか? あたいは負けたのか?」

 

 俺は空気の手に色を付けて、みんなに見えるようにした。薄い青色の半透明な大きな手が、俺の肩口に現れる。

 

「あわわ、いきなり大きな手が現れたわぁ」

「これは空気の手と言う。空気を固めた魔法の手だ。これをハルナの左右に置いておいたのさ」

「あたいは、この手に自分からぶつかったのか?」

「ああ、そうだ。そしてハルナを(つか)んで持ち上げだ後、イメージを流して、ネズミの姿に形態を固定したというわけだ。どうだ参ったか?」

「ああ、参った。まさかまた瞬殺(しゅんさつ)されるとは思わなかった。流石(さすが)は旦那だ。がははは」

 

 負けたハルナは楽しそうだ。これも初見だから上手くいったが、次は対策されるだろう。

 

「呼人様、空気の手は魔法が使えないはずでは?」

「ああ、エルゴの言う通りだ。だから今までは魔力の風船とセットで運用して、誤魔化(ごまか)していたんだ。具現化(ぐげんか)された魔法である『空気の手』単体では、魔法を撃ったりイメージを流すことは出来ないからな。そこを少し工夫したわけさ。

 エルゴ、空気の手を良く見てみろ」

「手の中に血管のようなものが……、これは魔力の糸ですか?」

「そうだ。空気の手と魔力の糸を、別々にしないで一体化したのさ。だからこんなことも出来る」

 

 俺は、マリア(おっさん)の前まで、空気の手を伸ばして「着火」と呪文を(とな)える。青い大きな手の人差し指の先端にオレンジ色の火が(とも)った。

 

「火が付いたわぁ」

「おお、呼人様、素晴(すば)らしい発想です。これはかなり有効な魔法ですよ」

「だろ? エルゴ」

 

 空気の手は透明で目に見えない。気付かれずに近づいて、敵の目の前でいきなり魔法が放てるのだ。()けようもないだろう。(さっ)しの良い奴は、空気の()らぎで感づくだろうが、説明されなければ、何が起きているか把握(はあく)出来ないだろう。

 

「呼人様、魔力感知が得意なものでも、さすがに魔力の糸は感知出来ないでしょう。魔力が(ふく)れた時には魔法を放つ直前です。避けられませんね」

 

 空気の手は、物理攻撃も出来る。遠距離から魔法と物理で瞬殺だ。バリアや盾の代わりにもなるし、訓練次第では手も増やせるだろうから、かなりの優位性(アドバンテージ)になると思う。

 

「よぶちゃん、もう無敵じゃないのぉ」

「マリア、対人戦が多少有利になっただけさ。まだまだ神には勝てないよ。機械人間の所の神や元の世界の神とは、敵対しそうだからな。早く対抗手段を考えないと俺の未来は無いんだ」

 

 

 そんなことを話していたら、神様が声を掛けてきた。

 

「呼人はん、それなんどすが、呼人はんの住んでいた世界には現在、神はおりまへんえ」

「そうなのか? じゃあ誰が俺とマリアを送り込んだんだろうなぁ」

「わかりまへん。呼人はんの世界は、ずいぶん前から神のいない、地獄(じごく)になっているでありんす。次元転移できるものはいないはずなんどす」

「うわー、地獄って…嫌なワードだなぁ」

 

 なんとも言えない真実に、俺とマリアは思案顔となる。

 

「地獄になると、他の世界の神の遊び場になるんどす。機械人間や魔物などが送り込まれて、現住生物は駆逐(くちく)されます。その後、侵略者(しんりゃくしゃ)同士での争いになり、星は破壊されるのが常どす」

「俺は、こっちに送られて命拾いした感じだな」

「今、呼人はんの世界は、神に近いあるお方が守っているでありんす。他の神に知られないように隠しているでありんす。ただ長くは持ちまへん」

 

 神に近いとか、あるお方とか言っている時点で、神様の前の主神なんだろうなと予想がつく。神様は言葉を覚える時に、俺の元の世界の映画を教材にしたと言っていた。そういうことだったのか。

 

「まあ、今更(いまさら)俺にはどうしようも無いな」

「そうよねぇ、神の遊びなんてどうにも出来ないわぁ。それより誰が私達を送り込んだのか、不思議な話ねぇ」

「それも調べようが無いことだ。なんでこんな事になっているのかも疑問だが、俺達には何も出来ないな」

 

 実際問題、流されるしかないのが現状だ。(あらが)いようが無いのだから仕方がない。だからどんな事が起きても死なないように、自衛の策は多い方が良い。

 戦闘は使い魔がやってくれるから、俺は必死に自分を守るくらいしかできない。

 

 

 

 食堂に帰ってきた。やはり戦闘は苦手だな。すぐに終わったとはいえ疲れたよ。

 

 食堂のテーブルには、さっきヘーデリアが書いたサインがあり、ルミアが珍しそうに(なが)めている。

 

「呼人よ、これは何じゃ」

「ああ、それか? この食堂の子供達が魔法乙女戦隊のファンらしくてな。サインを頼まれたんだよ」

 

 ならば自分もと、みんなが寄せ書きのように、テーブルに落書きする。

 

 『目立たず楽しく司令官』

 『司令官の右腕、黒い紳士』

 『殲滅天使(せんめつてんし)、乙女グリーン』

 『青い稲妻(いなづま)、乙女ブルー』

 『桃色台風(ピンクタイフーン)、乙女ピンク』

 『赤熱(しゃくねつ)業火(ごうか)、乙女レッド』

 『カレー大好き、乙女イエロー』

 『精霊合体ロボット、プラスワン見参』

 『司令官の愛人、赤猫』

 『本物天使、ウーテ』

 『漬物の神様』

 『薬師見習い、アロン』

 『おばば』

 『アフロヘッド、ブサイク』(ヘーデが書いた)

 

 思い思いに自分をアピールできて、みんな満足気だが良いのかこれで? やはり、なんとも微妙な中二集団になってしまったようだ。トホホ

 

 ついでにみんなで集合写真も撮った。魔法乙女戦隊を中心に関係者が周りを固めた、なんともアットホームな写真だ。

 

 静止画像を撮る魔法は、報道関係者の専売らしいが、俺には元々マニュアルにカメラ機能がある。それにTVの魔法陣を改造すれば簡単に手に入る。

 

 寄せ書きテーブルは脚を取り去って、乙女温泉宿の壁に飾ろう。集合写真も大きく引き伸ばして、スライムボディで額縁(がくぶち)を作るつもりだ。

 宿の壁に埋め込んで、客に(さら)せば良い宣伝になるであろう。魔法乙女戦隊の常宿として、今なら話題性バッチリだ。

 

 

 下手な貴族の牽制(けんせい)にも使える。馬鹿貴族など戦隊が出動して、バンバンシバいてしまえば良い。なにせ戦隊リーダーがオーナーの宿だからな。

 

 

 

 

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