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第五十一話 ハッスルマリア

 ここで王族が到着して開会式が始まった。

 

 貴賓席(きひんせき)に、第一王子と宰相(さいしょう)が入ってきて、観客席に向かって手を上げると、観客が一斉に立ち上がって拍手が鳴り響く。王子が人気なのか、しきたりなのかはわからないが、王子は満足気な顔で(うなず)いている。

 

 広場のハルナ達は、そんな王子達を見ながら小声で話す。

 

「へなちょこおやじ、あんたらあの事件でお(とが)め無しだったのかよ」

「私は、減給(げんきゅう)と武闘大会への参加が(ばつ)だ。王子は公務が倍に増えた。今日の観覧も増えた公務のひとつだ。宰相は今年いっぱいで引退が決まっている」

「ずいぶん甘い罰ねぇ」

「人材がいなくて仕方がないのだ。ここ何年かで優秀な文官や、武官が何人も暗殺された。王族の力を()ごうとする、貴族の陰謀(いんぼう)だ。第一王子以外の王位継承者(けいしょうしゃ)は、まだお小さい」

「そんな時に、旦那(だんな)に喧嘩を売るとは馬鹿だなぁ」

「本当よねぇ。城まで壊されて弱り目に(たた)り目じゃないのぅ」

「ぐっ、民の人気を得る良い機会だったのだ」

「失敗してれば世話ないわぁ」

 

 魔法による拡声器のようなもので、闘技場内に響き渡る、王子の長い挨拶が終わり、続けて簡単なルール説明が始まるがハルナ達は聞いていない。

 

「最近、王家転覆(おうけてんぷく)(はか)る貴族の情報を得た。内定も済ませ、粛清(しゅくせい)計画も動き出したから、今を乗りきれば良い方向に向かうはずだ」

「ああ、エルゴがリークした情報か」

「なに? あの情報をもたらした者を知っているのか?」

「知っているも何も、あたいや旦那と一緒にいた執事(しつじ)だぜ。おやじも見ているだろ? エルゴは、こういう裏工作が大好きなんだよ。暗殺も得意だからせいぜい気を付けるこったな」

「なんと…」

「しかしおやじ、そんな機密(きみつ)をあたい達に話して大丈夫なのか?」

「証拠は押さえたし、あと数日で決着がつく話だ。問題無い」

「エルゴちゃんたら、またそんなことしているのぅ」

 

 マリアが呆れたように(つぶや)いた。

 

「そうなんだよマリア、エルゴの話じゃ、旦那に良い後ろ盾ができたから、生かさず殺さず上手く使いましょう。クククッ。だってよ」

「まあ、エルゴちゃんたら、よぶちゃんの事になると相変わらず黒いわね。しかしそんな胡散臭(うさんくさ)い情報を国側は良く信じたわねぇ」

「我々も馬鹿では無い。迅速(じんそく)にしっかりと調査して内定をしたのだ。情報は間違いない」

「よぶちゃんを(あなど)って馬鹿を見て、その相手に情報をもらって喜んでいるなんて、ただの馬鹿じゃなぁい」

「まったくだぜ」

「ぐぐう」

 

 

 ルール説明が終わり、いよいよ予選の開始だ。広場の地面に描かれている魔法陣に、各組に別れて参加者が集合する。レフラーゾは予選には参加しないので離れていった。

 マリア(おっさん)はA組、ハルナはC組に編成されている。ひとつの組には、30人の参加者がいて武器も格好もバラバラな、異種格闘技の様相(ようそう)(てい)している。

 

 3つの魔法陣の中で、総勢90人が一斉に戦うようだ。戦闘不能になったり、魔法陣から出たら負けとなる。魔法陣から身体が出ると、魔法陣には戻れない。最後まで残った5人×3=15人が本選出場資格を得る。

 

 戦闘不能と言っても、本気で殺し会うわけではない。頭、首、心臓などの即死となる急所への攻撃は、反則となるため、大抵(たいてい)は腕や足に傷を負わせて、戦意喪失(せんいそうしつ)(ねら)う。

 

 即死でなければ、腕が切れたり腹が()けても、魔法や回復薬で治療が出来るので、武闘大会で死ぬものは少ない。ただ魔法で腕などを粉々にされると、治療できず欠損してしまうので、そういった魔法は自主規制するように通達されている。

 武器は、剣や槍、飛び道具など何でも有りだが、毒などを広範囲に()くのは反則である。魔法も広範囲魔法や、殺傷力の高い魔法は禁止されている。

 

「姉ちゃん、さっきはどうも。へっへっへっ」

「なんだおっさん。ナンパはゴメンだぜ」

 

 C組の魔法陣では、ハルナが他の参加者に囲まれている。男達の下卑(げび)た視線を受けながら、ハルナの顔は楽しそうだ。酒場で美人に(から)む酔っぱらい集団のような構図に、観客は顔をしかめるが数瞬後には場が氷ついていた。

 

 ハルナに話しかけてきた正面の冒険者ではなく、横合いの男がいきなり動いたのだ。

 

 男は、剣を上段からビュッと振り下ろす。完全にハルナの頭を狙った不意(ふい)打ちだが、ハルナは見向きもしないで、竹箒(たけぼうき)を横に一閃(いっせん)させた。

 

 男の不意打ちがハルナの頭に当たる前に、ハルナの一閃が男の横腹を痛打し、男が吹き飛ばされた。数度、地面をバウンドしたあとゴロゴロと転がる男には、すでに意識は無いようだ。

 そんなハルナのパワーを見て、さっきまで()めた態度をしていた男達に緊張が走った。みんな腰を落とし目を半眼にして戦闘体制を整える。

 

 そんな様子を見ていたハルナが、自慢の竹箒(たけぼうき)を両手で持って水平にする。すると竹箒の両端が、スルスルと如意棒(にょいぼう)のように伸びていった。

 

 男達は何が起きるのかと(いぶか)しむが、対応に戸惑っているようだ。

 

 だらあああああっしゃあ

 

 突然、叫んだハルナが長いホウキを水平に持ったまま、男達に突進(とっしん)した。男達はハルナを囲んで密集していたため、とっさには逃げられない。

 前列は棒によって胸の辺りに衝撃を受けてバランスを崩し、攻撃も出来ずに後方にどんどん押されていく。後方の男達は将棋倒しのように、尻餅をつき踏み付けられていった。

 ハルナがブルドーザーのように、男達を乗り越えた時には立っている者はいなかった。10人ほどは、すでに魔法陣の外に押し出されている。

 

「なんでえ、なんでえ、情けねぇ。大の大人が(たば)になって、女ひとり受け止められねぇとはキンタマついてんのか?」

 

 言いながら、ハルナが元の長さに戻した竹箒を男達に打ち付ける。下に転がる男はゴルフのスイングのように背を叩かれ、立ち上がろうとした男はバットを振るうように側頭部を叩かれる。

 その度にホウキで叩かれた男達から、情けない叫び声が上がるが、ハルナはもぐら叩きでも楽しむようにホウキを振るう。

 そして、ある者は首を掴まれて猫のように放り投げられ、ある者は腹を蹴り上げられて転がされる。

 

 しばらくしてハルナが、掃除完了とばかりに「ぱんぱん」と手を叩く頃には、魔法陣の中にはハルナしか残っていなかった。

 

 審判役の男は、こんなのは武闘大会じゃないと言いたげに顔をしかめている。

 審判はハルナの他に、最後に魔法陣から放り出された男達4人を、本選出場だと言って係員に引き継いだ。まったく実力など関係無い。ハルナの気まぐれで本選出場が決まった男達は、気恥ずかしそうに控え室へと歩いていくが、観客のブーイングが(すさ)まじい。

 

「かっかっかっ、万人だろうがあたいは倒せねぇ」

 

 ブーイングを浴びる男達とは裏腹に、観客の称賛を浴びながらハルナは、満足気に控え室へと戻って行った。

 ハルナが控え室に着くと、すでにマリアがいた。お茶とお菓子を(すす)めてくるマリアに、ハルナは疲れも見せずに話し掛ける。

 

「よう、マリアも残ったか」

「当たり前よぅ、五郎ちゃんがほとんど叩き出してくれたわ。何人かは、このよぶちゃん特性の籠手(こて)で殴ってやったけど、全然問題無かったわよぅ」

「マリア、遊びじゃねぇんだぞ。武闘大会らしくやれよ」

「ハルナちゃんに言われたくないわ。まったく部屋の掃除じゃないんだから、もう少しやり方があるでしょ」

 

 控え室の窓からは、広場で戦っている様子が見える。最後の組がまだ戦っているようだ。

 そんな中、呑気にお茶を(すす)る2人にメモ帳を持った女性が近づいてきた。

 

「すみません。新聞社ですが取材よろしいでしょうか?」

「ええ、どうぞぅ」

「では、乙女ピンクさんから…」

「ど、どうしてバレたのかしら。この格好の時は、その名前で呼ばないでちょうだい」

「五郎が大きくなったりしたら、すぐにバレるだろう」

「あわわ、どうしましょう」

 

 バレても困ることは無いだろう? と言うハルナに、乙女は神秘的な生き物なのよぅ、と訳のわからない事を言っているマリア。相当、取り乱しているようだ。

 新聞記者は、そのガタイと口調でバレないと思っていることが不思議だ、とばかりに首を(かし)げている。

 

「マリアさんは、落ち込んでいるようなので、ハルナさんの方から先にしましょう。まずは街の病を治療して(いただ)きありがとうございます。

 魔法乙女戦隊の活動の一環(いっかん)と聞きましたが、ハルナさんも戦隊員なのですか?」

「オイオイ間違えるなよ。あたいは魔法乙女戦隊じゃねぇ。司令官の愛人だぜ。がははは」

「ほう、司令官のスキャンダル頂きました。武闘大会には、戦隊として力を示すために出場したのでしょうか?」

「いや、単なる暇潰(ひまつぶ)しだな」

「賞金をもらって、子供たちにお土産(みやげ)を買うためよぅ」

「保護した孤児達にお土産とは美談ですねぇ。近衛騎士団長のレフラーゾ様には、勝てるでしょうか?」

「当たり前だろう。あんなへなちょこおやじ屁でもねぇ」

「近衛をへなちょことは、すごい自信ですね。もしお二人が決勝を戦うとしたら、どちらが勝つのでしょう?」

「ハルナちゃんには悪いけど、今回は私が優勝よぅ」

「ほうマリア、あたいに勝つ気なのか」

「ええ、勿論(もちろん)

「いくら五郎のパワーがあっても、あたいの速さには(かな)わないぞ。マリアを押し出せば、あたいの勝ちだ」

 

 やってみないとわからないわぁ、とマリアが言ったところで、本選出場者に集合が掛かった。

 予選を勝ち抜いた15人と、特別枠のレフラーゾが、くじ引きでトーナメントの順番を決める。

 

 ハルナが1枠、レフラーゾは8枠、マリアが16枠となった。順調に勝ち進めば、3試合目の準決勝でハルナとレフラーゾが当たり、決勝まで行かないとハルナとマリアは戦うことは無い。

 運命の神様はご都合主義に乗っかってくれたようだ。

 

 1回戦のハルナの相手は魔法使いだった。バレーボール大の火球の魔法を放つ相手に対し、ハルナは「こんなトロ臭い攻撃が当たるかぁ!」と、全てホウキで叩き落とし、魔法使いを一撃で()して勝利した。

 マリアは大剣を持った戦士が相手だ。雄叫(おたけ)びを上げながら近づく戦士に、エアハンマーの魔法を放ち場外まで吹き飛ばす。

 

 エアハンマーは、空気を固めた事務机(じむづくえ)ほどの(かたまり)を、相手にぶつける魔法だ。透明な机がカウンターで打ち付けられたら、大抵の人間は気絶するだろう。

 

 2回戦のハルナの相手は、長剣と盾を持った戦士であった。だがこれも(まった)く危うげなく、竹箒(たけぼうき)で打ち負かしている。

 マリアの相手は魔法使いだったが、召喚士の本領発揮(ほんりょうはっき)とばかりに、五郎とベヘモスとドラゴンを召喚して会場の度肝(どぎも)を抜いた。当然、相手は腰を抜かして、棄権(きけん)したのは言うまでもない。

 予選で召喚した、体長3mの熊のような五郎だけでも厄介なのに、五郎と同じ大きさの牛の体躯に恐竜の頭を持つベヘモス、そして体長30mのドラゴンが相手では逃げる意外に方法はない。

 

 

「準決勝前に休憩を取ります」

 

 司会の言葉にマリアとハルナは、控え室に戻ってきた。

 

「なんだぁマリア、あの魔物は? 五郎だけじゃなく、あんなんまで仕込んでいたのか?」

「最近、よぶちゃんが作ってくれたのよぅ」

「スライムゴーレムってことか?」

「ええそうよ。前に五郎ちゃんが倒したベヘモスと、ヘーデちゃんが倒した黒竜を()して作った、カプセル怪獣さんよぅ。なかなか出す機会が無かったから、活躍できて良かったわぁ」

「あたいと戦う時の切り札だったんじゃないのか?」

「ハルナちゃんとは、タイマン勝負よぅ」

「へへっ、楽しみだぜ」

 

 マリアの召喚した魔物は、五郎と同じくアクセサリーとして身に付けて、いざと言う時に呼び出して敵と戦う護衛ゴーレムだ。

 つまりゴーレムの変形機能によって出現する、召喚魔法とは名ばかりの召喚獣である。

 呼人には、アロロクという用心棒が常に近くにいるが、マリアにはいないため、護衛ゴーレムを作ったわけだが、体高3mのベヘモスと体長30mのドラゴンは、少しやり過ぎたなと呼人は笑っていたと言う。

 

 

 

 休憩後の準決勝も、呆気(あっけ)なく終わってしまった。マリアの対戦相手は、召喚獣にビビって棄権してしまったのだ。

 

 そしてハルナの相手をした、この国最強とうたわれた近衛騎士団長のレフラーゾは、「この前のようにはいかんぞ」と(いさ)んで飛び出したが、最強と言っても所詮(しょせん)は人間である。

 人外のハルナに敵うはずもなく、竹箒(たけぼうき)に腕を串刺しにされて放り投げられるは、自慢の大剣による、渾身(こんしん)一振(ひとふ)りを、片手で掴まれて、張り手で張り倒されるはで、ハルナに散々(さんざん)いたぶられてから場外に放り出された。

 

 人外のハルナに武人に対する礼儀など無いのだ。

 

 観客席は大盛り上がりだったが、貴賓席(きひんせき)でふんぞり返っていた王子と宰相(さいしょう)は、この時ようやくレフラーゾの対戦相手が、自分達を恐怖に(おとしい)れた、あのハルナだと気付き顔を青くしていたのは言うまでもない話である。

 

 

 

 

 

 そして(むか)えた決勝戦。人間のマリア(おっさん)と人外のハルナとの対戦である。観客はハルナが人外だとは知らないのだが、毎度豪快(まいどごうかい)に勝つハルナに観客の人気が集まっていた。

 

「マリア、悪いが本気でいくぜ。優勝して旦那に()めてもらうんだからな」

「ハルナちゃん、(こぶし)と拳のぶつかり合いなら負けないわよぅ」

 

 マリアが上着を脱ぎ、籠手(こて)を外した。左右の(こぶし)をゴンゴンとぶつけ合い、首をグルリと回す。マリアの殴り合いをしよう、というパフォーマンスにハルナが楽しそうに笑う。

 

「上等じゃねぇか」

 

 ハルナがそう言うと、2人はスタスタと歩き出し、ここぞという間合いで大きく一歩を踏み込む。

 

 ゴッ

 

 マリアが右ストレート、ハルナが左ストレートを気合いと共に打ち込んだ。

 クロスカウンターとなったお互いの攻撃は、リーチの長いマリアに分があったようだ。ハルナの顔はひしゃげているが、マリアは顔を(そら)せて()けている。

 余程(よほど)の力を込めているのだろう、手応(てごた)えのあったマリアの二の腕は、ボコリと(ふく)れて血管が浮いているのが生々しい。

 

 マリアの愛読する漫画のワンシーンを再現したような戦いに、マリアは、ニーッと野太(のぶと)()みを浮かべた。

 

 マリアは一歩下がって間合いを取るが、ハルナは何故(なぜ)か動かない。ハルナの焦った顔が如実(にょじつ)に物語っているが、ハルナは動かないのではなく動けないのだ。

 顔の表情から、ハルナが全身に力を入れているのがわかる。だが先程から左ストレートの形のまま、固まってしまったように動かないハルナに、観客席は水を打ったように静まり返っている。

 まるで神経が切断されたように、身体がピクリとも動かない状況に、ハルナが相当焦っているのが伝わってくるのだが、どうやら口さえきけないようだ。

 

(念話、マリア)

(あらあ、何かしらぁ。ハ~ルナちゃん)

(マリアてめえ、何しやがった。動けねぇぞ)

(前によぶちゃんに、使い魔と戦うことがあったらどうする? って聞いたことがあるのよぅ。その時のよぶちゃんの答えを実行しただけよぅ)

 

 マリアは念話でそう言うと、ハルナの(ひたい)を人差し指でトンと押す。ハルナは左ストレートを打った形のままバタンと倒れた。倒れながらも目だけは悔しそうにマリアを追っている。

 

 マリアが審判に判定を(うなが)すと、審判はマリアの手を持ち上げながら、勝者の名を叫んだ。シーンと静まり返った会場が一気に沸き立つ。

 これまで他を寄せ付けなかったハルナが、瞬殺されたのだ。どうしてこうなったかは誰にもわかっていないだろう。しかしハルナの焦った表情が、真剣勝負だったと観客に知らしめたようだ。観客はジワジワ押し寄せる痛快な感覚に心を震わせた。

 

 うわあああああ!

 

 

 こうしてマリアは、武闘大会の優勝者として国中に名を(とどろ)かせることになる。

 

 

 それはそうだろう、レフラーゾを子供扱いしたハルナに圧勝したのだ。そんな男が(うわさ)に登らないはずがない。

 素人目に見てもハルナは強かった。国で最強を(ほこ)る近衛騎士団長さえ、寄せ付けない圧倒的強さと豪快さに、観客の誰もが英雄の面影(おもかげ)を見て、陶酔(とうすい)していたのだ。

 

 その夢を一瞬でぶち壊したヒール顔のおっさん。

 

 流行病の治療を無償で行った乙女ピンクであるのは公然(こうぜん)の秘密であり、近衛騎士をものともしないハルナをあっさりと倒す怪物。

 

 大会の数日後には、そんな(うわさ)が国中を駆けたが、子供も大人も嫌悪感(けんおかん)があるわけでは無い。

 

 どこか愛すべきキャラクターのおっさんに、親愛の情を込めて「怪物」と呼んでいるのだ。

 

 

 

 (ちな)みに、優勝賞金は金貨100枚、準優勝は金貨50枚であった。マリアは、閉会式で賞金を王子から手渡されて、ご満悦(まんえつ)である。ハルナは逆に、不機嫌(ふきげん)(きわ)まりない態度で荒れている。

 第一王子はそんなハルナと、そのハルナを打ち負かしたマリアに、終始(しゅうし)ビビっていたが、何とか式典(しきてん)を終えたのは、あの事件で少しは成長したおかげであろう。

 

 賭け金の方はマリアの指示で、いままでの全額をマリアに賭けて、金貨15000枚近くを得た。賭け率がマリアに圧倒的有利だったのだ。

 マリアも危なげ無く、勝ち進んできたのだが、召喚獣任せの戦いで、自身はあまり戦闘をしなかったため、スピードに加えパワーもあるハルナに、下馬評が集まるのは必然だろう。そんなハルナが負けるとは誰も考えなかったようだ。

 

 

 

 その夜、ディータの街のとある酒場では、金貨を思い浮かべて「グフフゥ」と笑う怪物と、不機嫌そうな英雄の姿を大勢が目撃したという。

 

 

 

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