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閑話 蛇足、

 

◆精霊の悩み

 

「ハアーッ」

「どうしたんだ班長、ため息なんか吐いて」

 

 俺とエルゴが農園を見回っていると、いつも陽気で悩みなど無いと思っていた精霊が、ため息を吐いているのを見かけて、少し驚いた。

 いつもは、空中をスーッと動く班長が、右にフラフラ左にフラフラしている。人間なら風邪を引いたか、酔っぱらいかと思うが、精霊の場合、どうしてこうなったのか予想がつかない。

 

「それがでしね、呼人(よぶと)さん。あたちの兄弟精霊がでしね…」

 

 班長の話では、この箱庭にいる7人の精霊たちが、ふたつの悩みを抱えているらしい。ひとつは「役職」だそうだ。7人の精霊は、4人の中級精霊と、3人の下級精霊に分けられる。

 中級精霊の4人の中で、2人に「班長」「主任」(研究主任)の役職が与えられている。精霊や魔物は名前が無いので、区別するために、俺が遊びで付けた役職だ。

 他の2人の中級精霊も役職が欲しいらしく、どうすれば役職がもらえるかと、7人で頭を悩ませているのだとか。

 

「なんだそんなことか。悩まずに俺に相談してくれたら話が早いのに。なあエルゴ」

「そうですよ、班長。悩んだ時はまず相談です」

「本当でしか? 箱庭で一番の大問題を解決できるでしか?」

「任せてくれ班長。それでエルゴ、残りのふたりの得意分野は何か教えてくれるか?」

「ひとりは、料理に興味があるみたいですね。もうひとりは、農作業全般(ぜんぱん)に力を入れているようです」

 

 エルゴの話では、料理の(たび)に手伝いにくる精霊がいて、結構レシピなどを覚えているらしい。小さい体で料理できるのか不思議に思ったが、人間の調理器具を魔法で器用に(あつか)うのだとか。呼人が使う空気魔法を手足のように(あやつ)り、包丁を空気で掴んで野菜を切ったり、鍋をかき混ぜたりするそうだ。

 

 ん? ラーメン作りの時に手伝ってくれた精霊か? あの時は忙しくて、あまり気にしてなかったよ。

 しかし、その魔法の使い方は良いなぁ。俺も今度やってみよう。

 

 もうひとりは、班長の補佐役(ほさやく)としていろいろと働いているが、特に農作業全般に力を入れているのだとか。

 

「ひとりは『シェフ』で決まりだな。もうひとりは『副班長』か『農園頭(のうえんがしら)』かな?」

「呼人様、副班長では、班長より格下に聞こえます。公平を()すために、農園頭の方が良いかもしれません」

「そうだな。それで行こう」

 

 俺は班長に精霊を集めてもらう。班長が念話している間に、穴の開いた小さな木札(きふだ)を作り、筆とインクで「班長」「研究主任」「シェフ」「農園頭」「隊長」と書き込む。釣り糸を適当に切って、首に掛けられるようにしたら出来上がりだ。時間があれば腕章(わんしょう)の方が良さそうだが、今は間に合わせだ。

 

 そうこうしていると、精霊たちが集まってきた。みんな何があるのかと思案顔(しあんがお)だ。俺がいつもしない行動を取っているので、魔物や子供たちも集まってくる。マリアや使い魔たちはエルゴが呼んだらしい。

 

 仕事中にやることじゃないな。お遊びだと思っていた役職が大事(おおごと)だ。ついでなので、それっぽく芝居するか。

 

「ええ、皆さんお集まりの様なので『役職授与式(やくしょくじゅよしき)』を始めたいと思います」


 みんなキョトンとしている。マリア(おっさん)は「なんなの?なんなの?突然」と怒りだし、エルゴに「まあ、まあ」と()なされており、ハルナがヒューヒューと口笛を吹く。

 

 俺が、それではと言って班長の前に立つと、エルゴが(うやうや)しく木札を渡してくれる。急な芝居なのに絶妙なコンビネーションだ。周りのみんなは、まだポカンとしている。

 

「あなたの役職は班長です。精霊たちのまとめ役として頑張って下さい」

 

 俺は班長の首に「班長」の木札を掛ける。使い魔やマリアがパチパチと拍手しているので、子供たちも真似している。

 班長は一礼してから、嬉しそうに木札をスリスリしている。他の精霊が、羨望(せんぼう)眼差(まなざ)しを向けているのが可笑(おか)しい。

 

 俺は、一歩横にズレて主任の前に立つ。同じくエルゴが木札を渡してくれる。

 

「あなたの役職は研究主任です。普段は略して主任と呼びます。発酵(はっこう)食品の研究開発を頑張って下さい」

 

 俺が同じく木札を掛ける。「主任の名に掛けて!」と言う主任に対して、拍手が()き起こる。

 他の2人の中級精霊の顔は複雑だ。まさか自分たちにも、役職が授与(じゅよ)されるとは思っていない。仲間は祝福したいが(うらや)ましさもあるのだろう。

 

 俺は、また一歩ズレる。人形のように小さな精霊の目が見開かれる。え? 自分? って感じで、班長の方を(うかが)っているのがかわいい。女の子の精霊は、班長が(うなず)いたのを見ると、空中でピシッと折り目を正した。

 

「あなたの役職はシェフです。美味しい料理の研究やレシピ開発を頑張って下さい」

 

 同じく木札を掛けると拍手が湧き起こる。シェフは嬉しさにプルプル震えだした。最後の中級精霊も緊張でプルプルしている。

 

 俺がまた一歩ズレると、最後の男の子の中級精霊が、ビクッとして直立不動(ちょくりつふどう)の姿勢となった。

 

「あなたの役職は農園頭(のうえんがしら)です。普段は略して、お(かしら)と呼びます。農園の管理を頑張って下さい」

 

 同じく木札を掛けると拍手が湧き起こる。お頭は、木札と俺の顔を交互に見比べて、ペコペコとお辞儀(じぎ)をしている。

 

 そして俺は、グリフォン隊長にも同じく大きな木札を掛けた。「ぬっ、我もか?」と微妙な表情の隊長にも、()しみない拍手が降り(そそ)ぐ。

 

「以上を持ちまして役職授与式を閉会致します。お忙しい中、ご足労頂(そくろういただ)き、ありがとうございました」

 

 会がお開きとなり、子供たちは狐に()ままれた様な面持(おもも)ちで、散らばっていった。俺はマリアや使い魔たちに事情を説明し、突然思いつきでやったことを(あやま)った。マリア(おっさん)は「事情がわかれば納得ね」と言っていた。

 

 精霊たちは大喜びでブンブン飛び回っている。「さすが班長でし」とか「さすがオーナーでし」とか「この大問題をあっさり片付けるとは恐るべき才能でし」とか、ワイワイガヤガヤかしましい。

 

 

 

 俺はマリア達に、精霊たちにはもうひとつ悩みがあることを()げ、ついでに相談に乗ってあげて欲しいと言った。マリア達は「なにかしら?」と乗り気だ。(さわ)ぐ精霊たちを集めて話を聞いてみた。

 

「それがでしね、あたち達の間で戦隊ごっこが流行(はや)っているでし」

「ええ、知っているわぁ。魔法乙女戦隊はみんなの(あこが)れよ。それがどうかしたのかしらぁ?」

 

 マリア(おっさん)と使い魔(3馬鹿トリオ)が胸を張る。うーん、戦隊の話で良いことがあった試しがない。嫌な予感がするぞ。

 

「あたち達も戦隊に入れて欲しいでし」

「「「ええー!」」」

 

 まさかの入隊希望者かよ。精霊は小さいから目立たないし、普通の人間には見えないから無理だろう。

 

「…よぶちゃん、なんとかなさい」

「俺かよ! 戦隊リーダーはマリアだろ。思考停止するなよな」

「オーナーの方が(えら)いのだから、よぶちゃんの仕事よぅ」

「農園オーナーと戦隊は無関係だろ、まったく。ええと班長、戦隊が出動したときにマリア達の肩に乗って、一緒に戦うのはどうだ?」

「それは良いでしねぇ。でも活躍して新聞に乗りたいでし。インタビューを受けたいでし」

「だって小さいから目立たないし、他の人間には見えないじゃないか。どうにもならないよ」

 

 班長たちが「そうでしか」としょんぼりする。

 

「呼人様、ロボットに乗せるのはどうでしょう」

 

 エルゴの提案に、精霊たちが神に祈るようにこちらを見ている。ヘーデがピクリと動いた。あー、これは「ヘーデも欲しい」って言うパターンだぞ。面倒臭い。エルゴと精霊には悪いが回避(かいひ)だ、回避。

 

「うーん、重機(じゅうき)ゴーレムは、作るのが凄く大変なんだ。まだ研究中で早く動けないしな。それにあれじゃあデカ過ぎて、街ごと破壊するだろう?」

 

 俺は誤魔化(ごまか)しに掛かる。確かに重機ゴーレムを作るのは大変だ。だが精霊たちは物質のすり抜けができるので、ハッチなどの乗り込む機構はいらないし、いっそ農作業用のゴーレムを改造しても良いくらいなのだ。

 改造すれば早く動けるし、「軽量」や「飛翔」の魔法を組み込めば飛べるだろう。新しく作るなら、小さくも大きくも出来る。ただ作るのが面倒だ。

 

 俺の言葉に精霊たちは、しょんぼりりたーんずだ。 

 

「なんとかならないのぅ? よぶちゃん」

「うーん…」

「旦那、新しく作るなら、小さいのにすればいいじゃねぇか。作るのも少しは楽だろうし」

「早く動けなくとも、遠距離攻撃や支援はできるわぁ」

「うーん……」

 

 まずいぞ、誤魔化し切れない。ぐぬー!

 

「…わかった、1機ならなんとかしよう。だがそれ以上は嫌だぞ。どうせお前達は便乗(びんじょう)して、私も欲しいとか言うんだろう。そんな面倒なのお断りだぞ」

 

 ヘーデリアがビクッとする。やはり余計なことを考えていたようだ。先回りして(くぎ)を刺しておけば、大丈夫だと信じよう。

 

「呼人よ、精霊たちは7人じゃ。1機を使い回すのか?」

「ルミア、マリアくらい大きさの重機ゴーレムに、全員で乗ってもらおうと思う。専用機が欲しいなら合体ロボでもいいな」

「合体ロボとは何じゃ」

 

 俺は魔石を出し、手をかざして俺の脳内情報から合体ロボの映像を転写する。

 俺は前に、鑑定の魔法をいろいろと改造している時に、自分の脳内情報を閲覧(えつらん)できるようになった。コピーして持ち出して、魔石に移植(いしょく)したりもできるのだ。

 

 俺が合体ロボの映像を写しだすと、魔石の上に20インチくらいの厚みのないモニターが現れ、俺が子供の頃に見たアニメが始まった。ちゃんとこちらの言葉に吹き替えられているところが凄い。自動的に脳内変換されているみたいだ。

 

 精霊たちと年少組が、モニターの前に座ってアニメを見る。大事(だいじ)なところだけなので10分ほどだ。3人の正義の味方が、それぞれの専用機に乗って、ピンチになると「合体」と言って変形しながら合体して、大きなロボットになる。

 正直、変形しながら合体するようなのは無理だが、左右の手足、腰、胸、頭の7パーツに別れたり、くっついたりするのは出来るだろう。

 

「これは面白いのう。他にはないのか?」

「ルミア、今は映像の話じゃないだろう」

 

 ルミアは、チェッと言って不満顔だ。精霊たちは「合体」と言いながら、トーテムポールみたいに縦に並んだりしている。ヘーデは何か思案顔だ。お前の分は絶対作らないからな。

 

「呼人さん、あたち達に合体ロボを作ってくるでしか」

「まあ、変形とかはしないぞ。手足が離れて合体するだけだ。それで良ければの話だけどな。班長たちは、箱庭をくれたから恩返しだよ」

「いいでし、それでも欲しいでし」

「ただし、作るのに少し時間が掛かるのは、勘弁(かんべん)して欲しい。それとさっき言ったように、マリア達のようには動けないと思うぞ。後方から遠距離攻撃か仲間の治療だ」

「いいでし、いいでし、十分でし。魔法は得意でし」

「まあ、戦隊の支援ロボとして、『魔法乙女戦隊プラスワン』とか『精霊合体:ロボ班長』とか、名乗れば良いんじゃないか」

「プラスワンでしか。カッコいいでし。何から何まで完璧でし。呼人さんは神様でし」

 

 

 こうして俺は、また馬鹿らしい仕事が増えてしまった。しかし箱庭をくれた精霊たちには感謝している。頑張って要求を満たしてあげたいと思う。

 

 

 

マリア(おっさん)の悩み(俺達の1日)

 

「ハアーッ」

「どうしたんだマリア、ため息なんか吐いて」

日々(ひび)(しあわ)せ過ぎてね。思わずため息が出たわぁ」

「なんだそりゃ。ぎっくり腰にでもなったかと思って、心配して損したよ」

「嫌だわぁ、乙女がぎっくり腰なんかになるわけ無いじゃないのぅ」

「まったく、乙女って何だよ。どっからどう見てもおっさ「何かしら?」」

「……」

 

 クワを地面に突き、麦わら帽子を(かぶ)ったガチムチなおっさんが、ニヤけ(づら)で汗を(ぬぐ)っている(さま)はかなり気持ちが悪い。

 

 今日も箱庭は快晴だ。陽光と風が気持ちいい。

 俺の周りには農作業に精を出す、農作業用ゴーレムや、それをのんびりと手伝う子供たちがいる。寝そべる魔物や、追い掛けっこをする精霊の姿も見える。

 

 この大陸には時計がない。街では、2時間毎に(かね)を鳴らして、時を(しら)せてくれる。

 朝の6時が1の鐘、それから2時間毎に、2の鐘、3の鐘、そして昼の12時が4の鐘、次が5の鐘、6の鐘、最後は夕方の6時が、7の鐘という具合だ。


 街の住人は大体、1の鐘で起床し朝食を取って仕事を始める。4の鐘で昼食、7の鐘で仕事を終えて夕食を取ると言う。

これを週7日繰り返すのが一般的らしい。休みは1ヶ月に1回とか、季節毎(きせつごと)に1回だそうだ。

 農家、商人、職人、軍人など、職業によって多少の違いがあるそうだが、皆さんなかなか勤勉(きんべん)なようだ。

 

 しかし時計も無いのに、正確な時間はどうやって知るのか不思議だ。やはり魔法なのだろうか。実は、俺は時計を得ている。魔物の魔法陣を解析(かいせき)中に、体内時計の魔法を発見したのだ。

 

 (ちな)みに、ドワーフ村には街の鐘の音が聞こえるが、箱庭内には聞こえない。街の鐘と同じ時刻に、魔法拡声器(かくせいき)から鐘が鳴るように魔法を仕込んでいる。

 

 

 街の住人は生活を楽にするためか、真面目なのかわからないが、結構ハードな生活をしているみたいだ。

 俺達は、もっとのんびりやるつもりだが、一応時間割りは決めてある。農園の1日はこのような感じだ。

 

 6時:起床、朝食

 7時:農作業

 8時:農作業

 9時:休憩

 10時:農作業

 11時:農作業

 12時:昼食

 13時:昼寝

 14時:勉強

 15時:実技、休憩

 16時:実技

 17時:雑務(ざつむ)

 18時:夕食

 19時:温泉、自由時間

 20時:温泉、自由時間

 21時:就寝(しゅうしん)

 

 見た目、子供にはハードな感じだが、労働と言うよりは、勉強や実習の意味合いが強い。農業関係は、精霊と農作業用のゴーレムだけで問題無いので、子供たちは経験を積ませるためのお手伝いだ。

 最初は嫌がる子や、街に帰りたがる子供が出ると思っていたが、(ふた)を開けてみると、みんな真面目に取り組んでいる。国民性が真面目なのかもしれないとマリアと一緒に驚いた。

 

 農作業の時間は、農園で仕事だ。農園の作物は穀物(こくもつ)や野菜、薬草に香辛料(こうしんりょう)など多彩(たさい)だ。果物もある。畑や田んぼの大部分は、精霊の魔法やゴーレムが(たがや)す。しかし子供たちも道具を持って耕して、実体験から学ばせている。まだ小さいので、本格的にはやっていないのが現状だ。

 

 勉強の時間は、読み書き、計算、歴史、地理、一般常識などを、大人も一緒に勉強している。たまに音楽、美術(写生)なんかもやる。

 おばば様の薬局で、商売や接客の手伝いもする。なるべく多くの選択肢を与えたいと、マリア(おっさん)は言っている。

 教材となる本作りも、自分たちでやっている。サトウキビの絞りカスから素材を得て、紙すきを行い紙をつくる。そして印刷魔法で本を作るのだ。これも何かの役に立つといいと思う。

 

 実技の時間は、男の子に剣術、鍛治、木工などを教え。女の子は料理、機織(はたお)り、陶芸(とうげい)などを教える。

 ハルナが剣術、エルゴが料理を教えている。2人は意外と子供たちに人気がある。


 鍛治と木工は、ドワーフ村で体験学習(大人が付き()って、一緒に習う)を、月に何度かお願いしている。仕事を引退した爺さんドワーフが、親切に教えてくれるので安心だ。

 今はまだ道具に慣れる段階で、積み木などおもちゃを作ったりしている。農具や家や家具なんかはまだまだ先のようだ。

 将来的に見込みのある子供が、弟子にしてもらえたら良いと思う。

 

 俺は、ドワーフ村の村長のゴンゴスには講習料金を払うと言ったのだが、ウォータードッグの薬の件でチャラだと言われてしまった。

 余談だが、ドワーフは仲間意識が強い種族だ。孤児になった子供も村全体で育てるそうだ。俺達のやっていることも、事情を話たら理解してくれた。ただ箱庭のことは話せない。こんなに大勢の子供が、どこで暮らしているのか(いぶか)しむかもしれないが、その辺はおばば様に任せておこうと思う。

 

 機織りも、ドワーフのお婆ちゃんに教えてもらった。箱庭の子供ハウスに、機織り機を作って練習している。

 陶芸は、ゴーレム工芸でろくろを作り、風魔法というか空気魔法で、昇り(がま)を作ってやってみた。まあ、体験程度だ。窯の火は魔石に魔法を仕込んで、魔物が監視(かんし)してくれる。

 

 雑務の時間は、乳絞(ちちしぼ)りをしたり、野菜や果物、玉子の収穫、ハチミツ採取、プリンやフルーツ牛乳作りを各班に別れて行う。そして週に一度は、温泉清掃を全員で行っている。

 魔物酪農(らくのう)(牛さん、鶏さんの世話)だけではなく、将来的には動物の、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマなども購入して放牧させたいが、子供たちが大きくなってからだ。とにかくいろいろ体験しながら、勉強した方が良いと思っている。

 

 

 農園は基本的に、週休2日としている。しかし休みの日でも、班に別れて順番に、農園の見回りを行っている。完全休日の班もあれば、半日ほど休日が潰れる班もあるというわけだ。

 休日には、お花畑で遊んだり、川で釣りをしたり、いろいろ習ったことを復習したり、街に買い物に行ったり、各々(おのおの)がやりたいことをやる。

 数人のグループに別れて、大人に監視を頼むのが(つね)だ。一見面倒そうに見えるが、交渉の勉強だとマリアは言っている。俺はマリア(おっさん)が、子供たちにお願いされたいだけなんじゃないかと疑っている。

 

 給料も払い始めた。2週に一度、子供、魔物、精霊を集めて、俺から銀貨1枚を渡す。すぐあとにマリア銀行に預けてしまうので、使うことは無いのだが、みんな楽しみにしている。そんな子供たちを見るのが大人の楽しみだ。

 おっさんがむしり捕ったゲフン、マリア銀行に預けられたお金は、将来独立したときの()しになれば良いと思う。

 

 

 子供たちの実収入は、ドワーフ村で野菜、果物、調味料を販売して得ている。子供の勉強も()ねているので、少し安い値段で売っている。利益など(すずめ)の涙ほどだ。とても農園の仲間全員を食べさせることなど出来ない。

 

 だが実際のところ金には困っていない。衣食住は、ほとんど手作りで自給自足(じきゅうじそく)みたいなものだし、肉は森で取れるからだ。

 

 それに、この大陸にきて数ヵ月だが、金儲(かねもう)けのアテがいくつかある。チートと言われても仕方がないほどの、金を得る方法を俺達は持っている。

 例えば、必要なら持っている素材や宝石を売れば良いし、ハルナに頼めば、ダンジョンでいくらでも素材が手に入る。素材錬金が可能なほどの戦力がうちにはあるのだ。

 そして、そのうちビールなども売りたいが、ドワーフの酒と競合(きょうごう)するので思案している。

 

 魔法で(きん)を出して売っても良い。魔法で水がジャバジャバ出せるように、金も魔法で出せることは確認済みだ。イメージでは水ほど簡単には金は出てこないのだが、ゴールドゴーレムを作って魔力を流すと、簡単に増えることが判明した。この裏技を使えば、正直言って働かなくても良いほどなのだが、そこは自重している。

 

 

 今は、育毛剤がバカ売れしているので、当分金には困らないけどね。

 

 

 

 

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