前説 拉致
俺の名前は呼人。23才、アウトドアショップの店員をしている。身長170㎝、中肉中背の量産タイプの人間だ。
今日から3日間は仕事が休みなので、趣味のソロキャンプをする為に、バイクを走らせているところだ。
ここは都内の一般道で、これから3時間ほど掛けてキャンプ地に到着する予定だ。
片道3車線の広い道だが車が多く、左右はビルだし上には高速道路が走っている。圧迫感しかない退屈な道だ。
空はどんよりと曇っている。雲なのか排気ガスなのかわからないような、濃い灰色だ。天気予報では、キャンプ地は晴れマークが出ていた。都内を抜ければ、青空も拝めるだろう。
「ああ、早く山に着かないかなぁ」と独りごちるのも何回目か。
黄緑色のオフロードバイクに股がり、黒いヘルメットに、オレンジ色のパーカーとジーパン、ゴツいワークブーツ、背にはバックパックを背負っている。
いつものキャンプスタイルで決めた俺は、キャンプ地を思いながら、バイクのスロットルをあおる。
前方の交差点の信号が、停止信号に変わったのを確認した俺は、ゆっくりと停止線に近づきバイクを停車させた。そしてクラッチを操作して、ギアをニュートラルへと切り替えハンドルから手を離す。
チラリと見上げた視界の先には、左側のビル群や右上の高速道路が映るばかりで、空など1/3も見えない。
目的地に着けば気持ちいい空の下、のんびり趣味を楽しむことができるだろうと、そんなことを考えながら呑気に伸びをする。
目の前を左右から行き交う車、信号のメロディー、横断歩道を渡る人波、いつもの交差点の風景だ。
ん?……異質な物が目に入り、俺は思わず二度見する。
ゆっくりと近づく大柄な車体。人混みを掻き分け、自分の目の前に横付けされたのは、
軍用車両だった。
道をふさぐように止められた車は、トラックのように大きな迷彩柄のボディ、一般車にはない異様な形状、6輪のゴツいタイヤ、窓がほとんど無い。
装甲車というやつだろうか、街中では明らかに異質だ。
なんだ? 車線封鎖か? 周りの通行人も隣の車の運転手も、意図がわからなくてザワめいている。
停車から1分ほどして、軍用車両に動きがあった。車両から人がバラバラと降りてきたのだ。全身が迷彩柄の帽子、シャツ、ズボン。
……自衛官? なんで? と考えたが答えは出ない。行動を開始した彼等は、指を差しながらお互いに何事か確認し、キビキビと動き回る。
そして俺の悪夢が始まった。
「対象確認、行動を開始せよ!」
突然のスピーカーからの掛け声と共に、数人の自衛官が一斉に俺につかみかかる。
パーカーの肩の部分を鷲掴みにして、バイクから引きずり降ろされ、バイクの倒れる音や怒号と共に、腹を踏みつけられ手足を押さえ付けられ、ヘルメットを乱暴に脱がされる。
あれ? 嘘だろ? 警察じゃないし自衛官はこんなことしないだろ? じゃあ偽物? どういうこと? なんで俺が?
いっきに頭がパニックとなる。
俺は、顔を左右の自衛官に交互に向けながら、何かを叫んだ。端からは、怯えた目でイヤイヤをする、子供のように見えたかもしれない。
しかし彼等は、淡々と職務をこなすのみで、俺を省みない。
俺の頭を押さえ付け、鼻と口を覆うようなカバーがついた麻酔スプレーを噴出する。
「何だ! 何なんだよ、あんたら。ちくしょう離せ!」
俺は必死に抗ったが敵うはずもなく、薬が効いてきたのか、意識が朦朧としてきた。
そして今度は両腕を持って引きずられる、周りからは怒声がひびき、スマホのフラッシュがパシャパシャ焚かれる中、俺は軍用車両に運び込まれたのだろう。
その時には、すでに意識を手離していた。
『作者のつぶやき:初投稿です。よろしくお願いします。
練習にと思って作った作品ですので、大したテーマも無いのですが、一応「異種族間の友情」をテーマにしています。
異種族と言っても「◯◯と人間」ばかりでは無く、「量産型青年と特殊趣味のおっさん」とか「男と女」とか「大人と子供」なんてのも、広義で異種族みたいなものと捉えております。
初めは拙い文章だと思いますが、日々成長していければ良いなと思っています。
物語的には、主人公がビール飲みたさに農業を頑張っちゃったり、たまに本筋とは違うところで魔法乙女戦隊なるユニットが活躍したりと、基本ほのぼののんびりのほほん路線を目指していますが、ちょくちょく戦闘シーンやグロシーンも出てきます。
ではでは量産型青年と特殊趣味のおっさんが、ボーイミーツオッサンすることで、たまにスパークするストーリーをお楽しみ下さい(BL要素はありません)』