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動かずに同じ姿勢を保っていた体は、ちょっとした石像になったように固まっている。
しかし、それはチャイムの音とともに解放され、天井に向かって手を、床に向かって足を伸ばす。
「んー! 終わったぁーー!!」
最後の授業である6限目まで、なんとか眠気と戦いつつも終わらせた私。
エライぞ、私。やればできる子。
しかし、私の1日は、これからが本番なんだから、早く家に帰って、ボイマスくんをやらなきゃ。
「のぞみー。私、今日、部活あるから、また来週だね」
伸ばすことによって体は開放感を感じていると、慣れ親しんだ声が近づいてくる。
一限目ではかなりお世話になりっぱなしであった感謝すべき声の主、愛美。
教室で深い眠りにつきそうなところ、鉄拳という名の、愛のムチで目を覚まして、今のこの時間まで頑張れました。
「いい? 土日だからって、あんまりゲームに夢中になりすぎないよーにね!」
人差し指を立てて、言い聞かせるように指を上下に揺らす。
放課後になった瞬間、早速、カバンから出した携帯を出した私に苦笑しつつも、優しく気遣いを忘れない愛美はバスケ部に所属していて、1年生ながらエース候補で近寄りがたい存在に思われがちだけど、教室では、私の面倒を見てくれる、切っても離れたくない頼れるお姉ちゃん的な存在である。
「はーい。いってらっしゃーい。また来週〜」
帰宅部である私はそんな期待のホープであり、お姉ちゃんを見送る。
大きなスポーツバックを肩に体育館へ向かう愛美の姿が見えなくなり、声は遠くになると、私は帰宅の準備をはじめた。
なんと言っても、声オタの私は部活に参加している時間はない。
顔を上げれば、いつのまにか、部活や帰宅する人でまばらになった教室。
窓の外からは準備運動をはじめる声が聞こえはじめてくる。
決して運動が苦手なわけでも、嫌いなわけでもない。
ただ、好きなことに時間を割きたいだけ。
意外だと言われることがあるけれど、こういう”青春”を感じる空気、私は結構、好き。
だって、アニメや漫画の世界を体感してるってことでしょ?
それって”すごく素敵なこと”だと思う。
もちろん、それが自分自身に起きるとは思ってない。
なぜなら現実男子と青春なんて、想像がつかない。
それに、今の私は推し事だけで充実しているんだから。
帰りの準備が終わって少し膨らんだカバンに影ができた。
「ん?」
不思議に思って顔を上げてみる。
「す、鈴木さん……このあと時間あるかな?」
そこには、愛美との話に出ていたクラスメイト、佐藤祐希くんが立っていた。
なんというタイミング。
これって噂をすれば影ってやつ?
話したのは休み時間だけど。
「えっと? 一応、ある、けど??」
とは言え、ほぼ話したことのないクラスメイトからこんな急に声を掛けられるものなのかな?
驚きつつも答えると、ホッとしたような息が漏れて聞こえた。
佐藤くんは、どちらかというとおとなしいグループにいる。
グループと言っても、基本、ソロ活動(という名の一人)をしていて、授業や何かグループを作ろう!となると、そう言ったソロ活動をしている数人が集まってグループになるという感じ。
だから、誰かとはしゃいだりしているようなこともなくて、見た目は、校則通りの黒髮に、着崩すこともなくキッチリ。オシャレとは言い難い、重めの前髪にメガネをしていて、暗いわけじゃないけど、印象に残らないというか、頭もすごく良いわけでも、悪いわけでもなく、本当に、平均的なごくごくフツーの真面目な生徒な印象しかない。
「その、ちょっと、相談したいことがあって……」
そんな佐藤くんが、私に相談。
思い返しても、相談されるような出来事だってないし、悪く言えば、クラスメイトとして必要最低限の会話しかしていないように思う。
そんな関係性がほとんどない私に、なんの相談なんだろうか?
「えっと、別にイイけど……私に相談って?」
信用してるしてないとかじゃない「なぜ、私?」という頭の中はクエッションマークが踊っている。
そんな不思議そうにした私をみてどう思ったのか、意を決したように口を開いた。
「そ、その鈴木なら、いいアドバイスをくれるんじゃないかって思って……」
「アドバイス?」
意を決して口を開いてくれた言葉。
しかし、まったくもってわからない。
ますますクエッションマークが飛び交うが、控えめな声量と裏腹な真剣な眼差しに。
「うん? お役に立てるかどうか分からないけど」
気づけば答えていた。




