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「ただいまー」


 部活に所属していないので、私の帰宅は早い。

 パートに出ている母よりも早く。中学の弟よりも早い。

 だからと言って、家事のお手伝いをするような優良な娘でないので、学校から帰宅すると、情報収集を開始する。

 情報収集……それは、声オタならば欠かせない、日々新たに発信される情報を逃してしまうと、情報戦の今の時代、負けてしまう。

 残念ながら我が家には父が仕事で使うパソコン以外ないため、主に携帯を使っている。授業終了とともに電源ONにしてはあるけれども、情報収集は落ち着いた場所でやらないとね。


 画面隅にいるウィリアムのアイコンを横目に、インターネットブラウザを開く。

 

 私の一番の推しは、もちろん、諏訪さまなんだけど。

 声オタとしての私は、それだけではない。アイドルの箱推しに近い声優全般を広く浅く応援していて、特に、新人さんを発掘して応援するのが、その中で一番充実していると言っても過言ではない。


 と、いうわけで、新人さんチェック!

 さっそく、アニメ系や声優系のニュースをチェック。と言っても、公式HPホームページやSNSを使って、新作アニメやゲーム情報を収集するだけなんだけど。


「ん? また、プロデユースする系のアプリゲームが配信されるんだ……」


 目に止まったのは、新人の声優をプロデユースするアイドル育成型のアプリゲーム「ボイスマスター」のリリースニュースだった。

 いまや、アイドルはもちろん、王子様だったり、俳優だったりと、いろんなキャラクターの世界観でプロデュースするゲームがかなり乱立していて、声優系アプリも戦国時代の厳しい時代なのだ。

 だからこそ、”声オタ”としては、新人さんを応援して行きたいわけです!!


「とりあえず、ポチる」


 ニュース記事の下に貼られていた公式サイトのリンクをクリックして、大まかな情報を確認して、そこからさらにアプリゲームのダウンロード画面にいく。こういった、思わず気になるゲームや動画を見つけた時にかかるデーター容量がなかなかのクセもので、うっかりWi-Fiが飛んでいない場所でダウンロードすると、月末前に、データ制限をされてしまい、インターネットを周るのも、ゲームをプレイするにも、動作が遅くなってモヤモヤする原因になる。そういったこともあるので、Wi-Fiがある自宅で情報収集をするのもある。


 画面上にはアイコンに重なるようにできた丸い円が徐々に染まっている。


 ダウンロードにはまだ時間がかかりそうなので、アプリの詳細に目を通した。

 ・・・読んだ限り、初めてきく名前が多い。たぶん、多くの新人さんが起用されているようだ。ますます、新人さんを応援し隊(会員は私1名だけど)としては、推し要素ができた!


 数分のダウンロード後に起動すると、画面にコメントが表示された。


「ふむふむ……『あなたは新人マネージャーです。マネージメントする新人を一人、選んで下さい』とねぇ。キャラ設定も大事なんだけど、うーん、やっぱり好みのボイスの子を応援したいから、声を聞かせてもらおうっと」


 画面に出た案内にそって、画面をタップしていくと、3人のキャラクターが表示された。

 現れたキャラクターを容姿やひとことプロフィールから判断するに・・・THE好青年系。キラキラしたチャラい系男子。メガネをしたクラスの委員長系。キャラクターに触れると短い挨拶が再生されて、声を確認することもできる。


 個人的な見た目的には好青年系なんだけど、声的には、メガネくんなんだよなぁ。


 数分、悩んだ結果。声オタとしてもプライド(?)を崩すことはできなかった。

「まだまだ荒削りだけど、芝居もできてるし、なんか伸びしろが期待できそう!

 よしっ! 君に決めた!!」

 母がいたら「声が大きい!」と注意されるところだが、この高鳴りは抑えられない。


『僕は、桜木さくらぎ しん。マネジャーさん、よろしくお願いしますね』


 私の声の高鳴りなど知らない彼、桜木くんはキャラ設定通りの真面目な挨拶。やはり、硬すぎず、柔らかい声もいい。


「ふんふん。いいねいいねぇー! よーし、イベント頑張ろうっと」


 スタートキャンペーンと言う名の<はじめまして! マネージャーさん>というイベントがあり、このイベントを通して、ゲーム操作や内容を理解してもらおうという目的もあるようだ。


「そう言えば、担当している声優さんの名前は……佐藤、ユキ? くん。かぁ。……検索しても出てこないし、初メインなのかなぁ?

 でも、なんか、聞いたことあるような・・・?」


 何か引っかかりを感じながら、うんうん唸る。


「のぞみー! ご飯できたわよー」


 情報収集やゲームに夢中になっている間にどうやら母が帰ってきていたらしい。

 やばい。叫んだとき、いたかな?

 冷や汗が背中を通る感覚になりつつも、”触らぬ神に祟りなし”というように、あえて確認しない方向にした。


「はーい!今、行くー!!!」


 新人声優さんのことは気にかかるが、情報チェックしすぎて、気のせいかもしれないし。

 とりあえず、ご飯食べなくちゃね!


 温まった携帯を冷却するのも含めて机に置いて、美味しいホカホカご飯が待っているキッチンへと向かった。


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