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ふわふわの白いベット。
薄い天竺から溢れる初夏の日差しは眩しい。
まだまだ眠り続けることができるけど、彼の声が、私を覚醒させてくれる。
『姫、朝です。起きてください』
「っんー……」
耳が覚醒しているけど、頭はまだ眠いと言っている。
ちぐはぐな状況。
彼が起こしに来てくれるのに、早く起きなきゃって思う反面、もう少し寝てた方がいい。とも思う。
だって、ベットでぐずると……
『姫? まだ起きられないのですか?
あぁ……分かりました、アレがまだでしたね。姫もまだまだ子供なんですから。
では、姫さま、おはようのキスをーー』
近く吐息を感じて、ドキドキとその時を待つ。
「のぞみっ! いい加減にしなさい!!
もう起きないと朝ごはん抜きだし、遅刻するわよっ」
大きな衝撃音とともにドアが開かれた。
その音に一瞬にして、頭も覚醒して、二頭身キャラが描かれている掛け布団とともに起き上がる。
「あー! お母さん!! 朝はウィリアムの声が起こしてくれるって言っといたじゃん!」
その音を出したのは、紛れもない母である。
「あのねぇ。ウィリーだの、なんだのなんて言うなら、ちゃんと自分で起きなさい!
ご飯、もう準備してあるから、早く台所に来なさい」
母はそう言うと、ドアを開けたまま、隣の部屋にある弟の部屋に入っていた。
「・・・はぁ」
そう私は姫なんかじゃなくて、ただの高校2年生、鈴木のぞみ。17歳。
もちろん、天竺なんかないし、ふわふわの白いベットでもない。
ただの女子高生。
でも。
携帯画面を開いて<起床>のボタンを押す。
画面でパチパチと瞬きをしていた、金髪碧眼の王子ことウィリアムは
『姫、おはようございます。今日も公務を頑張りましょう』
今日も素敵な1日をスタートさせてくれる。
「うん、頑張るね! ウィリアム!!」
画面越しでは、私は姫なのである。