やり方の違い、人の違い
「助手、目的の場所まで後どれくらいかかる?」
通信が終わった途端に、ソフィが口を開いた。
「んー。通信では十分て言ってたすけど……、灰トカゲやハイイロヘビに目をつけられないようにスピード抑えて、車列組んでるんで、二十分はかかると思うっす」
グレンからの回答を聞き、決まりだな。とソフィが小さく呟いた事に彼女が気付いた。
「ソフィ?」
彼女からの呼びかけに、ソフィは視線を傾けるだけだ。そして
「助手、車列を追い越し、最短、最高速で現場へ向かいたまえ、出来るだろう?」
「出来るっすけど、いいんすか? 他のチームを置いていく事になるすけど」
「状況は切迫している、あの隊員の取り乱しようから考えても十分ですら、保つかどうかわからないだろう? 遅いやつらに合わせている場合ではない」
ソフィが言い切る。彼女はその言葉を聞いて、ほんの少し息を吐いた。
「アレタ、キミはどうだい? ワタシの考えについてどう思う?」
ソフィが、彼女を見つめる。彼女はソフィのその瞳と、レンズから目を逸らさない。
「……賛成よ。急ぐべきだとアタシも思う。間に合わないって言うのはありえないわ」
「……へえ! そうか、そうか! てっきりキミには、こういうやり方は反対されるやもと思ったが?」
ソフィの声が少し高くなっている事に彼女は気付いた。
「確かに、不必要なスタンドプレーは良くないわ。そして能力の足りない人間によるスタンドプレーも害悪よ。ただ、人命がかかっているこの状況においては違う」
彼女はソフィから目を離さずに言葉をつづける。
「アタシ達にはスタンドプレーを完遂できる能力がある。だからソフィの意見に賛成」
彼女はニヤリとソフィに笑いかけた。ソフィもそれを受けて、右手の親指をパチンと鳴らす。
「よし! 聞いていたね、助手! さあ、全速前進ーー」
「待って、ソフィ」
彼女はソフィの言葉を遮るようにぴしゃりと言い放つ。
「なんだい? アレタ、賛成してくれたんじゃなかったのかね?」
「ええ、ソフィの意見には賛成。でもやり方はアタシに任せてくれない?」
ソフィが、その真っ白な唇を少し、もごもごさせた。
「まあ……アレタがいうのなら。任せるよ、何をするつもりだい?」
「いずれ、ソフィにも出来るようになって欲しいことよ」
彼女は、少し納得していないような雰囲気を醸し出しているソフィに柔らかく笑いかけた。
そして、
「グレン、先頭車両に無線を繋いでくれる?」
彼女がグレンへ声をかける。
「先生?」
彼女がグレンに呼びかけると、グレンが許可を求めるような声を上げる。
ソフィが手を振る。肯定と受け止めたのだろう。グレンがナビ周りを操作し始めた。
彼女はソフィのチームにグレンという青年がいて良かった。彼女よりもソフィの意見を優先するグレン・ウォーカーに彼女は好感を抱く。
「アレタさん、繋がるっす」
「ありがとう。グレン」
砂嵐のような音が車内に渦巻く。彼女は再び、バランスを崩さないように前席へもたれかかるように体を前傾させた。
「聞こえる? 隊長、こちらアシュフィールド特別少佐です」
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