24話(最終話)
夢。そうこれは夢である。
夢の世界なのに、南が出てくると夢の中の俺はそれを夢だと自覚する。
それはあまりにも夢のないこと。しかし、もし南が出てくる夢を夢と自覚できない状態であれば、目が覚めたときの俺はとてつもない虚無感に襲われていただろう。俺の中の深層心理的な何かが自己防衛的なことでもしたのだろうか。よく分からん。
つまりこれも夢。どうやら町子に追い出された後、気が抜けて寝てしまったようだ。
「南……」
そして俺は目の前の南に話しかける。
これまでの夢と違うのは、今までの夢は当時の俺と当時の南の姿。しかし、今回の夢は今の俺と当時の南の会話のようになっている。俺の目線も今までの夢より大きいし、南の目線も俺を見上げるようになっている。
「桂くん、やっと私を吹っ切れそうだね」
そして夢の南も今の俺に話しかけてくる。
「ああ、俺はずっと南のことを忘れられなかった。でも、それが原因で俺の周りにどれだけ迷惑をかけてたかやっと分かった」
「私から言ってもよかったんだけどね。でも前までの桂くんだと、私が拒絶したら女性不審になっちゃいそうだしね」
「面目ないです」
「ううん、それだけ私のことを大切に思っててくれたのは分かったし、今でもその気持ちが変わってないことも分かって、私は嬉しかったんだよ。それはほんと。でもね、私はただ嬉しいだけでいいんだけど、まだ生きてる桂くんのことを死んじゃった私がしばっちゃうことはよくないことなんだ」
「それでも、南のことはやっぱり特別だったんだ」
「本当に嬉しい。でも私はその気持ちをもらえてるだけで本当に十分。後の私の望みは桂くんが幸せになることだよ」
「俺の幸せ?」
「うん、桂くんが私のことを気にしないで新しいパートナーを見つけて、幸せな人生を生きて未練のない人生を歩んでほしい。桂くんがそんな誰から見ても幸せな人生を歩んでくれれば、私はそんな人の人生に関われた、そんな人に好きになってもらえたって思えるから」
「…………南、ありがとうな。ずっと迷惑かけたな。俺のことが心配で時々夢に出てくれたんだろ?」
「それはどーかな? 今いる私は自分の意思でここにいるかもしれないし、桂くんが自分なりに私をふっきろうとして出てきた桂くんの中の私かもしれない。とにかく私はもういないの。でも桂くんの人生に私が大きく関わったってことは、桂くんが生きてる間は私の心も生きてるってこと。それだけわかってくれれば、私は満足だから」
南の優しい笑顔。俺にいつも見せてくれた屈託の無い笑顔だ。そして、それが当時の俺ではなく、今の俺に向けられたことで、俺は感極まった。
「……俺、もっともっと南と過ごしたかった……。一緒に校内デートがしたかった。一緒に下校デートがしたかった。一緒に将来について悩んだり、一緒にいろんなところに出かけたりしたかった……。大人にならなくても、高校生くらいになればもっともっといろんなことができたのに」
俺は溜め込んでいた言いたいことを言った。1番俺が傷ついていたときでもこれだけは口にしなかった。これだけは南本人に言わなければ意味のないことだったから。当時の俺でもそれはわかっていた。
「うん……、私も同じ気持ち。本当にごめんね……。先に死んじゃって……。もし反対の立場だったら、私もすごく辛かったと思う。だから……ごめんね」
「南は謝ることじゃない……、結局は俺がけじめをつけられなかったのがいけなかった、もう大丈夫だ。俺は前を見て歩く。南のことは忘れないけど、南のことに縛られないようにはしていく」
「うん、もう大丈夫そうだね。じゃあもう桂くんの夢には出てこないようにするね」
「そんなことできんのか? リアリストだった南らしくないな」
「リアルなのは現実だけで十分だよ。ここは夢の中なんだから、なんでもありだよ」
「そっか。じゃあたぶん本当に出てこないんだろうな。南はそういうやつだもんな」
「うん、だから、これで本当にさよならだよ」
「ああ」
「桂くん、私に出会ってくれてありがとう。私を好きになってくれてありがとう。私に楽しい時間をありがとう。そして、私のことをずっと好きでいてくれてありがとう。私ね、未練はあったけど後悔とか無念な気持ちはなかったんだよ。短い人生でも本当に好きになれるパートナーと出会えることって、幸せなんだと思うから。後は桂くん頑張ってね。桂くんにとって、私がいたことがいい人生になりますように」
そして目の前が真っ白になり、俺の意識は現実に戻った。
見慣れた景色、南とである夢を見た後はいつもこの天井を見上げる。
普段は虚無感を感じるが、今日に限っては少しすっきりしていた。
俺は4年以上かけてようやく南のことを吹っ切ることができたのかもしれない。
南、ありがとう、そしてさよならだ。俺は自分の人生を歩く。そして、南に誇れる人生の終わらせ方をするんだ。
こうして、俺を縛り続けた南への気持ちは、瓜二つな彼女である町子と過ごすことで起きたさまざまな事件により、解決することになった。
この後、町子がさらに積極的になったり、会長をグループが解散になったことで、栞那と呼んだら、急激に栞那が俺にデレてきたり、千代を運ぶとき髪とか首根っこじゃなくて、手を握ったり、おぶったりして、千代がちょっとしおらしくなったり、栄子が髪を下ろして、ストレートになったら、南とそっくりになって、俺がどきどきしたりと一気に俺ととりまく環境は変わった。
南しか見てこなかった俺にとって、彼女達ももちろん魅力的に映るが、そのせいで誰が1人に決めづらい。
俺は誰を選べばいいのか。これからじっくりと考えていかなければならないのだろう。南との問題を解決したが、また別の問題が発生してしまった。さて、俺はどうすれば正解なんだろうな。
俺にとってたった1人しかいなかった運命の人。その運命の人がいないのだから、俺が決めなければならないのである。
そう考えて、俺は彼女達と接していくのであった。
自分のやりたかった、過去に縛られてちょっと面倒なことになった主人公の話は書けましたし、ここからは普通のラブコメになりますので、これで完結です。
ブックマーク、評価、感想感謝しております。
短編か長編かは決めておりませんが、また書いていますのでご縁がありましたらまたお付き合いください。
ありがとうございました。




