23話
~サイド町子~
「はぁ、じゃあお話しましょうか、会長さん、千代ちゃん」
「栄子はいいの?」
「栄子ちゃんはまだいいでしょ。いずれそうなるだろうし」
ああ、とても面倒くさいことになった。
私もいろいろ覚悟を決めてきたのよ。
桂太郎はとてもいい人だ。
出会ってから1ヶ月も経っていないし、付き合ってからとなると2週間も経っていない。それでも私は彼に惹かれた。
栄子ちゃんや千代ちゃんが頼るのもよく分かるほど頼りがいはある。
グループメンバー以外でも、悪い評判を聞くことはまずない。
ここがいいよ! と言われるわけではないが、それで十分だと思う。あれだけ可愛い子に囲まれて、そこそこいろいろ何でもできているのに、妬みとか悪口が飛んでこないのは彼の人柄があってこそ。力とか知識と比べて、人柄、つまり徳というのはなかなか努力ではつかめないもの。
まぁ簡単に言うと、すばらしい長所があるよりも、どうしようもない欠点がないほうが、私は好きだなって思うってこと。
そして、1日デートしただけでよく分かる。私をいろいろ気遣ってくれたし、私の意見にも全く否定的な感じがない。
おそらくうまくやっていけるだろうと思った。だから、いきなりだけどちょっと強引な手段に出ようと思った。
だけど、邪魔は入るは、へたれだわ、挙句の果てに人の名前を間違えて、ついうっかり切れてぶん殴ってしまった。そして、何かいろいろカオスなことになって、今に至る。
「まぁなんというか、正直死人の代わりって大変ですね」
「こっちのフォローもいろいろ足りなかったわ」
「いいえ、そういう問題でもないと思いますよ、じゃあ本題を」
「ええ、別れたくなっても仕方ないわ。今回は縁がなかったと……」
「はい? 何を言っているんですか? 別れませんよ」
「「え」」
あら、会長さんに千代ちゃん。余裕がある会長さんと、マイペースな千代ちゃんの驚き顔は珍しい。
「そんなに驚くことですか?」
「いえ、だって、死人の代わりは重いとか大変とか言ってたから」
「大変だとは思いますよ。でもそれだからと言って、桂太郎を手放そうとは思いません。桂太郎は正直かなりのいい男ですし、もったいないです」
「もったいないって……」
「正直あなた達ももったいないことしてると思いますよ。桂太郎とあれだけ一緒にいて、桂太郎をものにできてないんですから」
「そ、そんなことはないわ。言ったでしょ、私はもう桂太郎のことは……」
「はい、聞きました。今でも好きなことも知っています。私と一緒になって幸せになってくれるなら、自分の手から離れてしまってもいいくらい彼のことを思っていることも」
「……」
「そして千代ちゃんも。いろいろ理由をつけて恋愛を断ってるけど、実際に好きでしょ。桂太郎のこと」
「……」
本当にこの2人は桂太郎のことが好きだと思う。しかも普通の好きより一段階上の。自分と違う人と結ばれることで、その人が本当に幸せになれるなら、自分は我慢できるというほど。それほど彼が大事なのだ。
「でですね。その辺りをいろいろ清算しないと、桂太郎は南さんのことを吹っ切ることはできないと思うんですよ」
「清算って言うのは?」
「このグループの解散をきっかけに、恋愛面でも決着をつけましょう。南さんのことを桂太郎が吹っ切るためには、南さんのことを吹っ切るだけじゃだめなんです。この南さんがいたグループのなぁなぁになってる関係を全てきっちりさせて、完全に南さんから卒業させる。それで、私は桂太郎がしっかりと自分のものになると思うんですよ」
「つまり、私達にどうしろってこと?」
「簡単です。私と勝負しましょう。誰が桂太郎をものにできるかってことで。そして、あなたたちも桂太郎に対して1歩進んでください」
「ならば、ケー君と町ちゃんが別れないのはフェアではないのでは?」
「いいえ、あなた達は桂太郎と過ごしてきた長い期間がある。私はまだ30日もない。これくらいのアドバンテージはもらわないと、勝ち目がないわ。結局ね、桂太郎はあなた達のグループのもの。栄子ちゃんほど露骨じゃなくても、桂太郎は誰かと付き合うと、このグループと敵対する。なら、あなた達と戦って正々堂々と勝たないと、桂太郎は手にできないんです、では、また友人として会いましょう」
そして私は宣戦布告した。桂太郎という存在を彼女達から奪うために。




