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19話 

~サイド千代~


「なかなか楽しめたな」


「うん、楽しかったー」


私はえっちゃんと一緒に遊園地で楽しんだ。


ケーくんのデートを監視したいということで、えっちゃんに付き添いでつれてこられたわけだ。


私を連れて来て何になるかと思ったが、1人だと不安らしい。ケー君にはそう言うところをあまり見せないが、彼女は寂しがり屋だ。


「ってー違うー! 先輩とあの女の尾行をする話がどっか行ったじゃないですか!」


1回見失ってから、結局1度も見つからず、ただ2人で普通に遊園地を楽しんだだけになってしまった。


私が早く歩けないから、のんびりと会話しながら帰ってきたのだが、遊園地の途中からついさっきまでえっちゃんの口から、ケーくんと町ちゃんの話は出てこなかった。基本的に2つ以上のことを同時に考えられないんだな。


「途中からすごく楽しんでいたから、てっきりあきらめたのかと思ってたよ」


私は別に邪魔しようと思っていないし、えっちゃんと遊べるなら、遊園地でも尾行でも構わなかったから突っ込みはいれなかったが。


「先輩をなんとか助けないと!」


「しかし、もう暗いし、デートは終わっているんじゃないか? というより、えっちゃんは本気で邪魔をしたいと思っていないようにも感じるが?」


えっちゃんは見た目はおバカ系だが、やっと君、あ、これは颯斗のことだが、血があるので、頭は悪くない。単純ではあるが、目的をここまで見失うのはちょっと不自然にも感じた。


「…………、絶対に誰にも言わないでくれますか?」


「ああ、私は体は軽いが、口は重い」


「……私は先輩と会長がくっつくのが1番いいと思ってます。でも、先輩がそれを意識的か無意識的にか分かりませんが、望んでいないのも分かっています」


会長とケー君。付き合っている噂はあるが、そうなることはまず難しい。会長は間違いなくケー君が好きだが、そのアプローチが全くうまくいっていないことで、最近はあきらめている。ケー君は意識的に特に会長にはそういう感情を向けないようにしている。


「百歩ゆずって、チー先輩でもいいと思いました。でも、それも厳しいのは分かっています」


私についても同じだ。おそらくだが、南ちゃんとの関係の近さの問題がある。南ちゃんに近かった女の子と付き合うことをケー君は深層心理的に拒否している。私であれ、会長であれ、南ちゃんと関係の会った子と付き合うことは、どこか彼に不安を与えるのだろう。


「…………私達は先輩のことを支えて、助けてきたつもりでした。でも、先輩に本当に与えてあげたいものを与えることはできませんでした。それをいきなり出てきた人ができてしまうことが辛いです。あの女の横で先輩が笑顔なのを見るのが辛いです。それを邪魔することが、先輩のためにならないと思い知らされるのも辛いです。あと、理由が分かりませんが、心も辛いです」


「えっちゃん……」


「す、すいません」


途中からえっちゃんは泣いていた。ケー君を思う気持ちがいろいろごちゃごちゃになった状態。それが今の彼女なのだ。邪魔はしたいが、邪魔をしに行って、ケー君が笑顔なのを見るのも辛いということだ。


「……えっちゃん。こうは考えてみたらどうだ? ケー君は町ちゃんが来てから、笑顔も増えたし、今日のデートのことも楽しそうにしていた」


「だから、あきらめろってことですか?」


「いいや違う。私達の大事な友人であるケー君のことを、本当に幸せにできるか、心の底からお互いを愛し合っているかを確認する。そう言う名目でいいじゃないか」


「私はそれでも、あの2人を見るのは辛いですが」


「えっちゃん。現実から目を背けることはしちゃいけない。私はできないことが多いが、できることはやるようにしている。後悔するようなことがあっても、それはせめて行動してから後悔したほうがいい。行動しないでする後悔は辛いんだ」


「……私も先輩に幸せになってほしいです。お姉ちゃんがいなくなった頃の先輩は見ていられませんでした。それでも頑張って立ち直って、私やチー先輩のことを支えてくれている先輩には、幸せになる義務が……」



「おや?」


「あのー。私のいい台詞を無視しないでください」


「あれはケー君と町ちゃんでは?」


「え?」


私とえっちゃんの遊園地からの帰宅ルートには、ケー君の家が岐路にある。


そういえばこの辺はケー君の家だった。


ケー君と町ちゃんが家の近くにいる。時間mも割りと遅い。ああ、そういうことか。初日デートにしてはずいぶんと進んだようだ。


「うっわー。やっぱきついです。親戚の家にお泊りに行って、夜その家でセッ○スレベルで見たくないもの見ました」


発言内容の女子力はともかくとして、どの程度えっちゃんがあの2人のいちゃいちゃを見たくないかがよく分かった。


「あの方向だと2人で家に帰る感じだろうか?」


「ならば家に先回りして、音声で何をしているか確認です!」


ぴゅーっ!


「あ、待って。そんなに早く走ったらついていけない……。後見るのはいいのに、音声はいいのかー」


まずいなー。カオスなことになる前に会長に連絡しようか……。



「よーし、先回り成功!」


「いつからそんなに走るの早くなったんだ……」


あろうことか、えっちゃんは私を抱えたまま、ケー君の家に到着した。


「まだ帰ってきてないようです」


「しかし先回りしたところでどうするんだ?」


「チー先輩。先輩の未来のために、少し犠牲になってください」


「えー……」


えっちゃんが何をするつもりかは分からないが、既に今日の私は動きすぎたので、何も抵抗はできなかった。





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