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16話

「おおぅ」


遊園地に到着するやいなや、町子は感嘆の声をあげていた。


「ありがと、ここ1回来てみたかったんだけど、なかなか来れなくて」


「おう、そっか」


ここはあのDのつく場所にこそ劣るが、日本でも有数な規模を誇る遊園地。


県外からも人が来て、ホテル等の宿泊施設やこの地方の名物を取り揃えた店舗も並ぶ、まずはずれの無い場所である。


映画館と迷った理由は、騒がしいのはどうかと思ったからだが、町子の反応を見る限りは、正解だったようだ。


「町子はこういうとこ好きなのか?」


「うーん、そうね。こういう日常から外れて、遊ぶ感じはいいわね、だから、映画館でも全然良かったわよ」


どうやら世界は俺に優しいようだ。選択肢が2つとも当たりとは。


「特にただで入れるのがいいわね。うん」


ちょっと毒のある台詞を最近言うようになったな。まぁそれだけ関係がよくなってきたということだろう。


「毎日デートしてもいいわよ」


「俺の金が持たんわ」


ちなみにこの場所は入園料があって、アトラクションに乗る費用は、パスポートか各アトラクションごとに乗るごとに費用を出すパターンの2つになる。俺が出したのは入園料まで、さすがにこれ以上は費用がないので、割り勘である。


これが少し難しいところだ、5つ以上乗るならパスポートの方が得だが、ここは絶叫マシーンが中心の場所。果たして町子が。


「じゃあパスポートでいいわね」


「はやっ。え、大丈夫か?」


「大丈夫って言うのは? こっちの方が得でしょ」


「でも5つ以上絶叫マシーンに乗らないと損するぞ。パスポートは払い戻し不可だからな」


「余裕よ余裕。桂太郎こそ怖がってるんじゃない?」



「なにをー。よし、その喧嘩乗った。パスポート購入だ!」


というわけで、乗り放題のパスポートを俺と町子は購入した。


「ふふっどれから行こうかしら?」


「っつ?」


町子がパスポートを口元にあてる。両手で持って口元が隠れている。


まじか。その仕草は南の仕草と同じ……。なぜか笑うときにものを持っていると、それを口元に持っていて口を隠す癖があった。


町子は性格的な面では、要所要所で異なるのだが、見た目と細かい仕草はまさに南そのもの。


…………、南がもし生きていれば、こうして2人きりで遊園地とか来たのかな……。子供の俺達には対したデートは………。


バコッ。


「ちょ、ちょっと、何で自分を殴るのよ?」


「少し意識が飛びかけてな。昨日楽しみで寝れなくて」


「そ、そう?」


いかんいかん。このときどきなるトリップ状態を反省しないといけない。仮にも付き合った彼女の初デートで、違う女の子のことを考えるなど失礼にも程があるわ。


「さーて、まずはどれに乗ろうかしら?」


「どれっつっても、絶叫系ばっかだ」


1番人気の日本最大の高低差を誇るジェットコースター。スピードはそこまでだが、やたら横向きサイクロンの多いトロッコ式のジェットコースター。アトラクション式で、速度が急に速くなったり遅くなったりするジェットコースター。足が宙ぶらりんになるジェットコースター。ここジェットコースター多いな。


「1番人気は……、あら? 今空いてない?」


最大落差が100m近く、ほぼ直角に落ちる日本でも有数なジェットコースター。別に今日は平日でもないのだが、確かにやけに空いている。


「そうだな。あまりここに来たことはないが、あれが1番人気って聞いてるから、1番並んでるもんだと思ってた」


一般的にその遊園地の目玉というのは、待ち時間も1番だと思ったが。


「うーん、あ、分かった。きっと1日に2度乗れないほどこのジェットコースターは怖いのよ!」


「なるほど」


確かに日本でも有数のジェットコースター。近くで見ても迫力はある。実際乗ってみたら怖いのかもしれん。


「それならなおさら乗ってみたいわね! 2回乗れるなら、それはそれでチャンスよ!」


町子のテンションが上がって、並び始めたので、俺もそれについていった。



「うーん、さすがに日本有数のジェットコースター。迫力が違ったわね」


「ああ、マジで怖かった」


落下速度も去ることながら、本当に地面にぶつかるかとも思えるギリギリを攻めた恐怖感。


「何より、あのガタガタ感のある演出ね。あれは怖かったわ」


「あれは怖すぎるな……。あれって故障じゃないよな」


ジェットコースターが1番高い地点に上るまでの間、妙にコースターが揺れて落下しそうになっていた。その後も、急にガタンと音がしたり、一瞬浮きかけたりと、演出がすごかった。


「まさかー。あそこまであからさまなのは演出でしょ。でもジェットコースターで故障かとも思わせる演出はクレーム騒ぎギリギリね」


「確かに、一緒に乗った人何人か係員の人に故障してないか聞いてたもんな」


迫力と演出で確かにもう1度乗るのは勇気がいる。


「じゃあ、もう1回乗りましょうか」


「ああ、俺もさっき一瞬故障かと思って、少し意識が飛んじゃったからな。よし、今度は演出も楽しむぞ」


もう1度並ぼうとしたが、点検中の看板が出ていた。そ



「そっかー、残念」


「そういえば俺達の後ろの人並んでなかったもんな」


町子は連続で乗りたかったようだが、まぁ仕方ない。あれだけ激しい動きをするのだから、点検もこまめなのだろう。


「他のに乗って、また乗りましょ! 他のも楽しそうだし」


町子はテンションが上がっていた。


『ピンポーン。1番人気のジェットコースターですが、整備ミスが発覚したため、点検をさせていただいております』


「…………」

「…………」


俺と町子は無言で目を合わせた。


「さーて、他のはどんなのかしら?」


「あ、聞かなかったことにするんだ。大丈夫か?」


「せっかく遊園地に来たんだし、楽しまなきゃ損よ。本当に故障してたって聞いたときは一瞬ひやっとしちゃったけど、何もなかったんだから、演出ということにするわ」


思いのほか町子はずぶとかった。




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