15話
「桂太郎、おはよう」
朝になると最近毎日町子が迎えに来てくれている。
「ねぇデートしない?」
「いきなり脈絡が無いな」
「いろいろと雲行きが怪しいからね。この前のいざこざがあったでしょ。会長さんがいろいろ動いてくれてはいるみたいだけど心配だわ。こういうのは早めに既成事実を作るところまで持っていくために、積み重ねをしていかないと」
「まぁな」
「せっかくお試し期間とはいえ、付き合うようになったわけだし、彼氏彼女らしいことの1つもしてもいいじゃない」
「確かにな」
実際学校ではどうしても栄子の邪魔が入るし、未だ千代の問題が解決しきっていないので、下校も2人きりではないことも多い。
ぶっちゃけ、友人関係ぽいことすらしていないに近い。
「私も彼氏を作るのは初めてだからさ。探り探りなの」
「え、町子ってそうなのか」
「なーに、私経験豊富に見えた?」
「いや、そういうわけじゃないけどさ。俺の告白をいきなり普通に受けてたからさ、慣れてるかと」
俺の告白に対して、かなりあっさりと答えていたから、そういう経験があると思っていた。
「そんなことないって、あれはむしろ桂太郎が堂々としすぎてて、私も冷静になっちゃただけ。どうしていいか、今悩んでるところだよ」
「そっか」
「そこはむしろ、仮にも彼女がいた桂太郎に本当はリードしてほしいところだけどね」
「その辺りにつきましては、すいません、何もできません」
正直南におまかせ状態だった。
「いいって、下手にこなれてるよりも、真面目にやってくれたほうが私は好きだよ。お互いの相性を調べるために、デートしよ」
「そうだな、ああ」
「じゃあ今週の土曜日にお願いね。まずは君の手腕を見せてもらうから」
「え。一緒に考えるんじゃないの?」
「それでもいいけど、まずは桂太郎が一生懸命デートプランをどんな感じで考えるのか見てみたいんだ。次は私が考えるからさ。お願い、やってみたかったんだ」
可愛い顔でおねだりされて、俺は断れなかった。
「はぁ……楽しみだけど憂鬱」
いろいろ調べて何とかプランを決めてデート当日になった。
会長に相談したが、自分で考えろと却下。千代は参考にならない、栄子は聞くまでもない。というわけd、自分の力しか頼れなかった。
とは言っても気分は悪くない。楽しみ6割、不安4割くらいのテンションだ。
そのテンションは、集合時間の40分前についてしまっているところが全てである。さすがにまだ来ていない。
まぁ俺の数少ない男の甲斐性として、女性を待たせないのはいいことだろう。
「……大丈夫だよな」
なまじ時間があると、自分のことが不安になってくる。
普段はそのままにしている寝癖は直したが大丈夫だろうか。あまり気にしないファッションにも気を使って(これだけは颯斗に頼んだ。あいつ私服センスはいい)みたが、似合っているか。歯は磨いたし、顔も丁寧に洗ったし、何もやらかしはないはず……。いかんな、反応が気になる。中学生になったくらいまでは、親の言うとおりの服を着ていて、そのまま大きく成長しなかったので、その時の服も多いから、今回のように考えて服を選んだのは初めてに近い。
「だーれだ?」
「ヴォっ」
俺が意識を完全に飛ばしていると、視界が急に失われた。
こ、これは伝説のあれか。南にもやってもらったことはない。暖かい手とこの香りは……。
「……町子か」
「ふふっ。正解。何あのヴォって、桂太郎って驚くと、低い声が出るんだね」
「脅かすなって、あーびっく……。え……」
「どう? 似合うかしら?」
その姿に俺は驚愕した。
少し長いタンクトップに、カーディガン、下がショートパンツ。活動しやすいカジュアルな服装である。足が長く、制服姿が似合っている町子は、スカートで来ると思っていたので驚いた。
だが、南もほぼ同じ格好をすることが多かった。南は割りと活発に動く女の子だったので、スカートを履くことは少なかったからである。しかし、足が長くて綺麗だった南には、ショートパンツは似合っていた。
南に似合うということは、自動的に町子にも似合っているということだ。ならば、ファッションが似るというのも、おかしい話ではない。そうだ、冷静になれ。
南は中学に入って本当にすぐ事故に合ってしまったので、制服姿というか、スカートを履いた姿にあまり覚えがなかった。
だが、目の前にいる町子は完全に服装まで一緒になってしまったので、本当に南がそのまま成長したような見た目になってしまった。まずい、我を忘れそう。
「う、うん、似合ってるに決まってるじゃん」
「ふふ、良かった。私の1番自信のある服装を選んできたんだよ。前の学校の女友達にも褒められてたんだ」
「ありがとな。俺のために」
「全力を尽くすのは当然だよ。彼女ですから」
……、彼女。そうだ、目の前にいるのは町子だ。一瞬どころか、かなりの秒数の間、彼女に南を重ねてしまったことに、すごい後ろめたさを感じてしまう。いかん、このままでは颯斗の言ったとおりになる。あいつに啖呵を切った以上は、しっかしせねば。
「で、デートプランは決めてあるのかしら?」
「ま、まぁな。ちょっと迷ったが、やっぱりこれだ」
俺は遊園地のチケットを渡した。
「ふーん、けっこう手堅く来た感じ?」
「映画館と迷ったけどな。でもある程度お互いを知って話すことを考えるとこっちかなって。動物園か水族館も考えたが、町子が動物嫌いだったらまずいし、ショッピングはお互いの趣味を確認してからのほうがいい。神社とか有名スポットは遠い、というわけで、2択になって、これを選んだ。遊園地嫌いなやつはいあにと思う。町子が人ごみとか並ぶのが嫌いだったらいけないけどな」
「ううん、そんなことないわ。けっこう真面目に考えてくれたのね。私は動物も好きだし、ただ買い物をするのも好きだし、静かな場所も好きよ。それだけ候補があるなら、どんどん行きましょうよ」
どうやら遊園地は正解のようだ。それに、俺の考えたプランへの反論がない。いつか行ってくれるということは、それは俺の考えた時間が無駄になっていないということ。それが嬉しかった。
「じゃあさっそくしゅっぱーつ!」
「おー」
俺達は意気揚々と遊園地に出発した。




