表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/28

12話

「はいはーい、道端でいちゃいちゃしなーい」


いい雰囲気の中で、食べすぎリタイアしたはずの栄子が乱入してきた。


「な、なんだ栄子」


「なんだじゃありませんよ。この公道、これすなわち公の場ですよ。ここでいちゃいちゃするのは公序良俗に反します」


「栄子ちゃんおはよう。体調はもう大丈夫なの?」


「ふん、いーっだ」


「おい、挨拶と気遣いを悪態と威嚇で返すな」


「私はまだ納得していない! 会長は協力しろって言ってたけど、私の意志は尊重される。基本的人権の尊重だ!」


「町子のご飯に満足してるくせに?」


「もうそういうところが可愛くみえてるけどね」


「可愛くない! いや、見た目は可愛いけど!」


こいつ自己評価高いな。確かに可愛くなくはないが。


「見てろー。今に目にもの見せてやるー! ぱくっ」


するとカバンから肉まんを取り出して口にくわえる。


「ふぉーふぁ。ふぉふぇふぇふぁふぇふぉふぉふぁふぇふぇふぃふぇふぉ、ふぁいふぉうふふぁ」


「ふぁしか聞こえないんだけど……」


「多分な、『どーだ、これでで食べ物が出てきても、大丈夫だ』って言ってるんだと思う」


俺が説明すると、人差し指を俺に向けて、栄子がうなづく。どうやら正解のようだ。


がさっ。


そしてカバンの中を見せてくる。肉まんがたくさん入っている。ここまでしないと、食べ物の誘惑に勝てないということか。根本的な発想があほすぎる。


「ごくんっ。さぁどうする偽者! 私を懐柔せずに先輩を手に入れることは不可能! 食べ物作戦が効かない以上は、私は無敵モード!。さぁ後は先輩が現実を見せるだけ。どうぞ」


片手に肉まんを持ったまま、俺を笑顔で見てくる栄子。


「栄子、それなんだが……」


「そうです! ばっちり聞きますよ」


「俺さ、町子と付き合ってみることにするよ」


「そうそう、聞いたか、偽者、先輩はお前と付き合うんだって、良かったなー、ってなんでやねん!」


栄子が見事なまでのお手本のようなノリ突っ込みを決める。顔も、笑顔→真顔→憤怒とコロコロ変わっていた。


「すいません、もう1度言ってもらっていいですか? 聞き間違えたみたいです」


「町子と付き合うことに……」


「もう1回」


「町子と付き合う……」


「もう1回!」


「町子とつ……」


「しつこいです!」


「お前が言わせたんだよ! 現実を受け止めろ!」


「すいませーん、肉まんが耳に詰まって聞こえないみたいです」


「どういう状況なんだ。なんで耳に肉まんが入るんだよ」


「さっきまでこうしてたので」


「肉まんで遊ぶな」


栄子が肉まんを2つ取り出して、耳にあててヘッドホンみたいにする。世界でも肉まんをこのように使う人間は存在しまい。


「まぁ全部聞こえてましたよ。私は耳かきをかかしていませんからね」


なんという時間の無駄。


「それよりも、桂太郎、付き合ってくれるんだね」


「先輩正気ですか! この人はお姉ちゃんじゃないんですよ。質の悪い廉価版ですよ」


「…………」


あ、さすがに町子がむかついた顔をしている。廉価版はひでぇ。


「大丈夫だ。俺は正気だ。町子を南と勘違いして付き合うわけじゃない。あの我を忘れた日とは違う。ちゃんと町子を相手にして付き合うつもりだ」


「う、嘘だ――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!」


大音量で叫びながら、頭を抱えてしゃがみ込む栄子。


……少し気の毒ではある。行動の内容の良し悪しはおいておくとしても、こいつに悪気は無い。


「くそー、いったいどうやって……、薬? 催眠術? 怪しい光? 超音波? フラフラダンス?」


「途中からポケ○ンの技になってるぞ。俺は混乱しとらん」


「わけも分からず、先輩を攻撃した」


パァン!


「いってぇ! 俺を叩くな! 自分を叩け」


「先輩、目が覚めましたか?」


「最初から覚めてるわ!」


「あの女への感情も冷めましたか?」


「冷めんわ」


「あえて言うなら、女子力で落としたわ」


おお、まさかの町子インターセプト。


「ぺっ、反吐が出る」


おい、うら若き高校生が、つばを吐くな。


「先輩、私には正直になっていいんです。脅されてるんですね……。きっと言うことを聞かないと、私の身柄が危ないって……」


「仮にお前の身柄が危なくても、俺はかばわんぞ」


「まぁまぁ、落ち着いて、付き合うって言っても、期間限定のお試しってことになったの。だから、1週間くらいで別れるかもしれないし……」


「1週間もあれば、種を仕込むことが可能じゃないですか! せめて3時間にしてください!」


「短すぎるわ!」


「性行為をして既成事実ができたら、律儀な先輩は責任を取るに決まってる! 愛なんて後からついてきますもん!」


「落ち着けって」


「英語の授業でもあったじゃないですか! Hの後にIが来るって」


「ちょっと頭のいいボケをかますんじゃない」


なまじ成績のいい栄子のボケは、ちょっとうっとうしい。


「そんなに怒らないで。ほら」


町子は肉まんを取り出す。


「お、出たな、肉まん。その手は食わないといったはずだ。肉まんは食べるけどな」


栄子はかばんから予備の肉まんを取り出して、口に加える。予備の肉まんってなんだ。というか、何で町子も肉まんを持ち歩いているのだ。


「ふふふ、これをただの肉まんだと思ってるのかしら……」


「そ、それはなんだ……」


「これは、あんまんよ」


具が違うだけじゃん。それじゃあさすがに……。


「うう、あんまん……」


「懐柔されかけるんかい!」


そういえば超甘いもの好きだったな。


「くそー、罪のない肉まんを見せてくるなんて……、肉まんに罪はない……、肉まんを憎まん……」


余裕があるのかないのか分からん。


「ぐはぁ! だめだだめだ!」


お、耐え切った。


「ここは戦略的撤退だ! 命拾いしたなー」


見事なまでな捨て台詞を残して、走りさっていった。


「うーん、問題の解決は大変そうだな……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ