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11話 

「おっはよーございまーす!」


どーん!


恐ろしいほど勢い良く俺の腹に衝撃が来た。これは……。


「栄子、それやめろって言ったじゃん……。朝俺弱いんだからさ、嘔吐したらどうすんだ」


「オートマチックですね」


「勢いだけで言うのはやめろ」


ぴんぽーん。


「あ、誰か来客だ……」


「私でまーす」


俺は全く着替えていないが、栄子はしっかりと着替えを済ませているので、ここは任せよう。あいつは朝強いしな。


「げげー!」


すると玄関から栄子の女子には似つかわしくない声が聞こえる。


「なんでお前が来てんだ! 私達の愛の巣から出てけー」


言いたいことはいろいろあるが、悲しいかな誰が来たか分かってしまった。


なので俺はさっさと着替えて、軽く顔を洗って歯を磨いて、うがいをしてから玄関にいった。いや、だってさ、来てるの多分あの子じゃん。会長とか千代とか栄子とは少し違うから、あまりみっともない格好じゃ出れない。


「おはよう、桂太郎」


その彼女はやはり町子だった。両手には買い物袋これはおそらく。


「おはよう、朝作りに来ちゃったよ」


「帰れー。私は先輩と一緒に食パンにマヨネーズをかけたやつ食べるんだ」


ちょっとでも張り合うなら料理をするとは言えないんだな。あれはあれで美味いんだが。


「そんなのじゃなくて、いいものを作ってあげるから♪」


「はっはっは。私に素朴な朝食は通用しないぞ」



30分後~。


「ホクホクでうまー」


「普通に食ってんじゃないか」


「だって、こんなんずるですよー」


町子が作ってくれたのは、これまさかの中華料理。ワンタンスープと肉まんである。どうやって作ったのか。しかも、あっさりしてて朝食向き。


「どうかしら?」


「本当に中華にこだわりがあるんだな。朝から中華なんて初めてだ」


「気に入ってくれたみたいね。栄子ちゃんもどう?」」


「ぐぬぅ、これは戦略的に食べているんだ。この女が変なものを先輩に食べさせてないか、自ら毒見してるんだ」


「顔と量が毒見じゃないけどな」


超笑顔だし、俺の1.5倍くらい食ってるし。


「ふふふ」


それはさすがに町子にも分かるのか、笑顔で栄子が食べるのを眺めていた。


「はいはい……、病人の回収に来ました……」


結果。栄子が食べ過ぎて腹痛になったため、会長により回収されました。


「め、名誉の負傷です……」


「まぁ結果的には栄子を合法的にこの家から出せるからいいのかしら……、それじゃあお2人さんは、のんびりどうぞー」


とは言っても、ムードもへったくれもあったものではない。


なんとなく俺は意気消沈していtた。


「ねぇねぇ。1ついいかな?」


「へ?」


俺のテンションが少し落ちていたところに、町子が話しかけてきた。


「提案があるんだけど、私達、ちょっとお試し期間みたいな感じで付き合って見ない?」


「ん? どういうことだ。俺と町子はもう付き合ってるんじゃ」


「別に本当に好き同士なら気にしないけど、どうも桂太郎はいろいろ気にしてることが多いみたいだからね。それで私に何か引け目を感じちゃってるでしょ」


「分かるもんか?」


「女の子はそういうのにはめざといものです」


「でもさ、栄子はあんなんだし、ついうっかり千代には手をだしちまうし、迷惑をかけるのはな」


「だから、お試しっていうこと。それにね、あなたは理由はどうあれ、私に告白してきた。だから、少し苦労してでもそれに対する誠実な答えは必要だと思うの。その答えを出すための適切な形が、一定期間お試しで付き合ってみるっていうことなの。これなら、お互いに問題があっても、振られるというよりは、お試し期間が終わったみたいな感じになって気まずくないし」


町子の話は確かに分かりやすい。恋人関係に近い状態でありながら、問題があっても別れ易い。


あの子に似た少女でなくても、これだけ俺に配慮してくれるなんて。


なら、正直に俺も気持ちを言う必要はある。


「えーとさ、正直俺は南の思い出を君に重ねているだけかもしれない。だから……」


「そんなの気にしないわよ」


「え、気にしないの」


俺が1番悩んでいた部分なのに、あっさりとしたものだ。


「南ちゃんだっけ、あの子との付き合いは7年くらいだったかしら? だったら、それ以上に付き合いを続ければ、きっと変わることもあるわ」


まじか……。南はそんな長い目で俺を……。


「それに面白いじゃん。いきなり告白された相手が、実は昔の恋人に重ねてただけ。そんなに気の無い相手をその気にさせる。刺激的だよ」


「ちょっと町子は変わってるんだな」


「普通の子は多分嫌がるかもしれないけど、私は面白いほうが好きだから。少なくとも、あなたといてつまらなくはないから」


「!!」


つまらなくない。俺の心に残っている南の大切な言葉の1つ。それを彼女が言ってくれることが嬉しかった。同じ容姿の彼女が同じ言葉を言ってくれている。やはり運命を感じてしまった。


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