表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/123

97.寝る子はよく育つ

 闇から生まれるように、そいつが実体化した瞬間、不協和音が頭の中に響いた。



「くっ!」



 俺は、思わず両耳を押さえて、その場で片膝をつく。


 すると、背後で『ズサッ』という音がして、ほかの3人も同じように、膝をついたのが分かった。


 魔物たちの気配はしない、どうやらみんな、掃討は終えていたらしい。



 

「セイヤお兄ちゃん、あれ!」



 コリンの言葉で、俯いていた視線を上げる。



 黒いローブのフードを、頭からすっぽりと被った奴が、空中に浮かんでいた。


 手には杖のようなものを持っており、フードの奥の表情は全く見えない。


 体型からして、男だろうか?



「誰だ?!」



 ほかに良いセリフも思い浮かばず、ベタな言葉を言ってしまう。


 だが、相手は何も答えない。


 相変わらず、不協和音が鳴り続けている。


 ・・あっそうか、調べればいいんだ。



「・・ネクロマンサー。」


「「エッ!」」



 俺の言葉に、エルとスザンヌさんが同時に声を上げる。



「ネクロマンサーが、こんなに膨大な魔力を持っているはずないわ。」


「ええ。」


「そうなのか?」



 でも、ステータスにはそう表示されているんだけどなあ。




しもべたちが次々と消滅するから、何かと思えば、()()ガキか。・・・それなりではあるが、まだまだだな。」



 おもむろに、全身黒ずくめのそいつが、俺の方を向いて言ってきた。


 ただそれは、通常の声ではなく、直接頭の中に聞こえてくるものだった。



「お前は何者なんだ?俺のことを、知っているのか?!」


「フッ、そんなことはどうでもよいではないか。・・おお、そちらのお嬢ちゃんは、まだ生きておったようだな。ガキと一緒にいるとは、面白い。」



 今度は、エルの方を向いて、楽しげに言っている。



「なによ!あたしは、あんたのことなんか知らないわよ!」


「それも、どうでもよい。いずれにしても、これから愉しくなりそうだな。今日のところは、失礼する。また会おう!ふはははは。」



 ネクロマンサー?は、一方的にひとりで納得して、現れた時と同様に、霧散するように闇に消え去ってしまった。




「どういうこと?あなたたち、アイツとお知り合いなの?」



 ようやく、不協和音から解放されて、安堵の溜息を漏らしたあと、スザンヌさんが俺とエルの顔を見ながら言った。



「「知りません!」」


「そうお?向こうは、知っているみたいだったわよ?」



「あの~。」



 そのとき、アイリスが、馬車から出てきておずおずとした感じで言ってきた。



「ボク、あの声に聞き覚えがあります。」


「エッ、ほんとに?」



 みんなの視線が集まって、アイリスは顔を赤らめる。



「ハイ、ボクの故郷を乗っ取った奴らの中に、ああいう声の持ち主がいたような気がします。姿に見覚えはないですけど・・。」



 声だけに、覚えがあるか・・・。


 う~ん、今は考えるだけ無駄か。


 材料が少なすぎる。



「とりあえず、もう襲っては来なさそうだし、早めに出発しましょうか?」


「そうね、そろそろ明るくなってくるし、ちゃっちゃと朝ごはん食べて、ここを引き払いましょう。」



 俺の提案に、スザンヌさんが賛成してくれる。




****



 しばらくして、朝食の用意が出来上がった。


 あたりに、肉の焼けるいい匂いが漂う。



「なあ、そういえば。ライアンは?」



 俺は、みんなの顔を見回した。


 一斉に、ある方向を指差す。




「ミャーあーああ。」



 するとそこには、大きなあくびをしながら、馬車から降りてくる、ライアンの姿があった。



 ・・・大物過ぎる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ