95.テッテケテケテケテッテッテー ○ぴー3分間クッキング!
全体の3分の2を進んだところで、暗くなってきたので、今日はここで野宿をすることになった。
あたりは鬱蒼とした森で、王都へ向かって左手奥の方向からは、エンキドゥのせせらぎが聞こえてくる。
街道から少しそれた場所で、木がまばらになったちょっとだけ開けた所に馬車を止め、そのそばに焚き火をたいた。
その焚き火を使って、スザンヌさんが夕食を作ってくれたのだが、これが思いのほか旨かった。
「将来の旦那様のためにも、こういうことは当たり前にできないと。それが、乙女のタシナミってものよ。」
スザンヌさんが、料理をしながら自慢げに言うと、エルがポツリと言った。
「あたしだって、切るのは得意。」
たしかに、めっちゃ食材を切るのは速いけど、シャムシールを使うのはどうかな?と思うぞ。
だって、それで魔物とか場合によっちゃ人も斬るんだろ?
「コリンも、料理のお手伝いは得意なのー!」
そう言って、ホニオン(玉ねぎみたいな野菜)の皮を、一生懸命にむいている。
「スザンヌさん、味付けはこれでいいですか?」
「ん、バッチリよ!」
意外だったのは、アイリスが料理が上手かったことだ。
「アイリス、結構やるじゃないか。」
「ボクは3姉妹の末っ子だったから、将来のために小さいときから料理とかの家事を一通り習っていたの。」
俺がアイリスを褒めると、嬉しそうにはにかんで、頬を赤くした。
「(どうせ、あたしは戦うしか能がないわよ。)ほら、切ったわよ!セイヤ、はやく串に刺してちょうだい!」
「お、おう!」
ん~エルさんの機嫌が悪化している・・・。
「肉の切り口が綺麗だと、余計に美味そうに見えるねえ!」
「バ~カ。焼けばみんな一緒でしょ!」
くだらんフォローしか出来ない、自分が情けない・・・。
***************
野宿の見張りは、俺とエル、そしてスザンヌさんの3人で交代ですることになった。
最初にエル、2番めにスザンヌさん、最後に俺だ。
見張り役は焚き火の番を兼ねて、そのそばに待機し、そのほかの者は馬車で休む。
当然、馬車の馭者も馬車で寝る。
「・・ん?・・・・うわぁー・・んグッ。」
ふいに、背筋に悪寒が走ったような気がして、薄目を開けると、青い瞳の大きなタレ目が、すぐ目の前にあった。
俺は、思わず悲鳴をあげそうになったのだが、すぐに真っ赤なマニキュアをした大きな手で、口を塞がれてしまった。
--マニキュア、あるんだ・・。
そんな、マヌケな感想を抱いている間にも、無駄に肉感的な唇をした大きな口が、耳元へと近づいてきた。
「お、は、よ。セイヤくん、あなたの番よ。」
『ゾ、ぞわ~~。』
本当に寒気が・・・。
「わ、わかりましたから。そんなに、顔を近づけないでください!」
俺は、慌てて飛び起きると、アイテムボックスから武器を取り出しながら、馬車を出て、焚き火の方へと向かった。
「うふふ、お願いね。」
スザンヌさんが、うしろから声を掛けてきた。
「・・まったく!ほんとうに、俺の寝顔を見ていたのか?」
おお、寒い!
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夜明けまで、あと3時間くらいだろうか?
川の流れの音以外、ほとんど何も聞こえてこない。
鳥や獣の鳴き声さえしない。
日本でいえば、丑三つ時を過ぎた頃だ。
『カサカサ、カサカサ・・。』
街道とは反対方向の草むらの向こうから、小さな物音が聞こえてくる。
「なんだ?」




