93.君の名は?
シカルをしこたま飲んで、おとなたちがヘベレケになる頃、子ども組は部屋の隅で、ライアンを囲んで遊んでいた。
いつの間にか、ガイヤさんや『銀狼』のメンバーも合流しているし、みんな違和感なく騒いでいた。
当然俺も飲まされたわけだが、未成年のはずのエルまで平気で、グビグビ飲んでいる。
しばらくして、ライアンを囲む輪の中にいた、アイリスに俺は何気なしに尋ねたのだった。
「ところでさ、アイリスはいま、何歳なんだ?コリンと同じくらいかなあ。」
「コリンはね、5歳なの!」
コリンが右手をパーの形にして、高々と上げる。
そして、みんなの視線がアイリスに集まった。
「あの・・・ボク。」
うつむきながら、頬を薄っすらと赤くして、小さな声でポソリとつぶやく。
「ボク・・・15歳です。」
「「「「ええーーー!!!」」」
スザンヌさんとガイヤさん以外の全員が、絶句した。
「あ、あたしと同い年?!」
シカルのたっぷり入ったジョッキを持ったエルが、空いている方の手で、自分の顔をゆび指して言った。
「アイリスちゃん、お姉ちゃんだったんだ~!」
コリンは・・・どっちにしても嬉しいらしい。
「あんたたち、なにそんなに驚いてんのよ。ドワーフ族なんだから、当たり前でしょ。」
スザンヌさんが、無駄に身体のラインにフィットしていて薄い、なんなら、透けている服を腕まくりして、超特大のジョッキを持ち上げながら、言い放った。
あらわになった、その太い腕には、もじゃもじゃの毛が・・・。
そういえば、胸毛、手毛、腕毛、すね毛・・・とにかく毛が濃いのに髭は薄い?・・綺麗に剃っているのか?
色白だから目立つなあ・・・。
「というか、事情聴取で聞いてましたから。」
ガイヤさんが、冷静に種明かしをした。
「もう!ガイちゃん。言わなきゃ分かんないのに!」
大きなタレ目で、ウインクをする。
いま一瞬、悪寒が走ったような・・・。
それにしても、さすが異世界の種族、分からないものだなあ・・・。
「そういえば、これをお返しするのを忘れておりました。」
感心している俺に、ガイヤさんが突然思い出したように言ってきた。
「なんでしょう?」
「更新したギルドカードです。先ほどは、時間がなくてお渡しできませんでした。ご確認ください。」
そう言って、真っ白なセラミック製のギルドカードを渡してきた。
渡されたカードを見てみると、ランクがBになっていた。
「あれ?なんか書いてあるな。」
『名前:セイヤ 年齢:17 種族:人族 適正属性:全属性 職業:冒険者 ランクB(仮認定:認定者=ローリー) レベル:19』
『ローリー』?・・・ダレデスカ?
「あの、ガイヤさん。ランクBのあとに、変なことが書いてあるんですが、『ローリー』ってだれですか?」
俺は、目の前のガイヤさんに尋ねた。
「え~と・・・ギルド長のことです。あっ!元ギルド長です。」
「え?」
頭の中が真っ白になった。
「いやーねー。あんまり大声で言わないでちょうだい。仮の名よ、あたしの。」
よくわかんないんですけど。
「仮の名じゃないわ、本名よ。」
キョトンとしている俺の背後から、エルが冷たい声で言ってきた。
「ほんみょう?」
「そう、本名。スザンヌは、このひとが勝手に名乗っているだけ。」
「ううん。あたしはスザンヌ、ローリーなんて知らないわ!」
はーーーっ・・・疲れる。




