89.すみれの花~咲く~頃~
「それで、ギルド長さん・・。」
「スザンヌよ。」
「すいません、す、スザンヌさん?」
ガイヤさんを除いて、みんながソファーに座ったところで、俺はギル・・スザンヌさんに、切り出した。
「俺たちを呼んだのは、何か聞きたいことがあるとか?」
「そうね、まずはお礼とお詫びをしなくちゃね。」
スザンヌさんは、そう言って頭を下げた。
「えっ?べ、別にそんな・・。」
「いいえ、あなたたちがいなければ、今回の討伐は、失敗してたわ。だから、そのお礼を言いたいの。」
困惑している俺に、スザンヌさんがそう言った。
「それに、サブマスのガイちゃんが付いていながら、多くの冒険者たちを犠牲にしてしまい、その上、あなたたちを含めて、残りの人たちを危険な状態にしたことは、ギルドとして責められるべきものだわ。だから、お詫びなのよ。」
「そんな・・あの時は、不測の事態というか、不可抗力だと・・。」
俺がそう言うと、スザンヌさんはかぶりを振った。
「いついかなる時も、不測の事態にさえ備えるのが、集団をまとめるものの勤めなのよ。」
隣では、ガイヤさんも頭を下げていた。
「・・分かりました。でも、あの時は、みんなが全力を出し切った結果であって、誰か1人のおかげとか、せいとかじゃなかったと思っていますんで、もう、頭をあげてください。」
「「ありがとう。」」
2人は、ようやく頭をあげてくれた。
「でね、本題なんだけど。」
「はいぃ?」
スザンヌさんが、ニッコリと微笑んで、ソファーから身を乗り出してきた。
俺は思わず変な声を出して、のけ反った。
本題って・・。
「ねえ、セイヤくんて・・・何者?」
「何者って、べ、別に、平凡なただのCランク冒険者ですが・・?」
「ほんとうに?」
やべっ、やっぱりこの流れになってきた。
それにしても、でかい顔が近いっす。
「ほんとうも何も、そうとしか。」
「ふう~ん。」
変な汗かいてきた。
「エルも、なんか言ってくれよ。別に普通だよな?」
「普通。(でも、あたしに振らないで。あんまり、関わりたくない。)」
助けを求めたのに、全く感情のこもっていないお返事。
その上、心の声がダダ漏れ。
「だったら、ステータスを見せてもらってもいいかしら?」
きたーっ!
圧が凄すぎて、断れる雰囲気じゃねえし。
「い、いいですけど。」
思わず、okしてしまった。
冷や汗が止まらねー。
「言っておくけど、あたし、『鑑定』のユニークスキル持ってるから、変に隠そうとしても無駄よ?」
「は、ハイ。」
スザンヌさんが、さらに近寄って来て、膝の上の俺の手を握った。
俺は思わず、両肩をビックっと震わせてしまった。
「セイヤお兄ちゃん大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫だ。」
隣に座っていたコリンが、心配そうに、俺の顔を覗き込んできた。
「じゃあ、見せてくれる?」
「はい。」
俺は、自分のステータスを表示した。
例の、隠蔽したステータスだ。
「・・・なるほどね。想定していたのより、そんなに特異なものじゃなかったけど・・。」
スザンヌさんはそう言って、宝ジェンヌのようなアイメイクの目を細めた。
「・・・擬装は、していないようね。でも、レベルとあまりにも、アンバランスなステータスだわ。」
バレてはいないようだけど、疑いは晴れていないみたい。
「経験の差よ。」
横から、エルが言った。
「まだ冒険者になったばかりで、実戦経験不足。スキルがあっても、使いこなせていない。だから、チグハグ。」
エル姐さん、それ、軽くディスってるでしょ?
「なるほど。」
そっちも、納得するな!
「じゃあ、もうよろしいでしょうか?」
釈然としないけど、この流れに乗るしかない。
「ええ、いいわ。」
「ありがとうございます。」
「ただね、ひとつ問題があるわ。」
すんなり行かねえ。
「問題、ですか?」
「やっぱりね、今回の実績と、このステータスからいったら、Cランクっていうのはちょっとねえ・・。」
それって、まさか?
「Bランク、でもいいと思うんだけど?」
やっぱり。
「でも。俺、レベルまだ19ですよ?」
「ギルマス権限ていうものがあるのよ。ただし、条件があるわ。」
条件?




