表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/123

78.敗者は俺

 エア村の城門が見えてきた。


 実際は、途中一晩だけ野営をして、ほんの2日離れていただけなのに、やけに懐かしく思えてくる。



 門の前には、小さな人影が一つ。


 その前に馬車が止まった。



 俺たちが馬車から降りると、茶色いかたまりが、俺の懐めがけて飛び込んできた。



「・・・ただいま、コリン。」



 無言で額を俺の胸にこすりつけてくるコリンに、俺は優しくそう言った。



「・・お・・り、・・お・えり、・・おかえりなさい!」



 ケモミミがふるふる揺れる頭を、ぽんぽんと叩いてやると、コリンはそう叫んで強く抱きついてきた。



「迎えに来てくれて、ありがとな。」


「うん・・。」



 胸に顔を埋めたまま、うなずくコリン。



「みゃゥ!」


「エ?」


 

 そのとき、俺の背後からライアンの可愛い鳴き声が聞こえた。


 コリンが顔を上げて、左右を見ている。



「ミャ~ぅ!」


「あっ!」



 どうやら、エルが抱いているライアンに気づいたようだ。


 すぐに、俺の懐から離れて、そちらへ駆けていく。



「か~あいい~~!」



 ん~~・・・なんだろう?この敗北感は・・・。



「コリン、あたしも帰ってきたんだけど?」


「ん、おかえり~。」



 敗者がもう一人いたみたいだし、まあいいか・・・。


 コリンは、エルからライアンを奪いとるように受け取ると、頬ずりしながら抱きしめていた。





「セイヤさん、我々は、ギルドへ報告に行きますので。」



 俺たちの様子を、黙って見守っていてくれたガイヤさんが、言ってきた。



「分かりました。俺たちは、ひとまず宿に戻ります。」



 俺は、初めての討伐遠征で、精神的に結構疲れていたし、いろいろなことが有り過ぎたこともあり、そう答えた。



「そうですか・・・たぶん、あとでギルドからお呼びすると思いますので、そのときはよろしくお願いします。」


「は、はい。」



 呼び出し?


 なんだろう・・・。



「あっ!アイリスは?」


「今回の件の証言をお願いしないといけませんし、なにより今後のこともあります。まずは、ギルドへご一緒していただき、そのあとに村長にもご報告します。」


「そうですか。・・・でも、なるべくあまり無理はさせないであげてください。」


「気をつけます。では、のちほど。」



 そう言って、ガイヤさんたちは再び馬車に乗り込んで、門をくぐっていった。


 馬車に乗り込む前に見えた、アイリスの不安そうな顔が胸に引っかかった。



「さあ、俺たちも帰るぞ。」



 いつの間にか、二人してライアンをいじり倒しているエルとコリンに声をかけた。



「「ふわぁ~い。」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ