75.神殿ツアー
「それぞれの国の町に行ったら、必ずその町の神殿を尋ねなさい。わかった?」
そんなこと、ひとことも言ってなかったぞ、エア神さま。
「は、はい分かりました。もしかして、だから待っていたと、おっしゃったんですか?」
「そうなんだけど・・・こんなに早く、この村がこんなことになるのは想定外だったわ。こうなると、出発は早めてもらわないと、いけなくなったわね・・・。」
ニンフルサグ神さまは、人差し指を顎に当てて考え込むような素振りをした。
「あの・・・ニンフルサグ神さま?」
「あ、ごめんなさい。この村は、この国にとって重要な拠点だから、すぐに再建されると思うから、この神殿も元通りにしてくれるでしょう、気にしないでね。それより、あなたにしてあげなければならない事があるわ。」
なんか勘違いされたような気もするが、なにをしてくれるというのだろう?
「さ、これをお飲みなさい。」
そう言ったニンフルサグ神さまの手には、もう一つワイングラス・・いわゆるシャンパングラスがあった。
「い、いただきます。」
薄い黄金色に輝く液体が入ったグラスを受け取った俺は、それを鼻先に持ってきて香りをかいでみた。
凄くいい薫りだ。
「コクッ・・・う、美味い。」
一口飲んでみると、口の中に芳醇な香りが微炭酸の発泡で、ふわりと広がった。
「うグッ、ウグッ・・。」
一気に飲み干す。
すると、全身が淡い水色の光に包まれた。
「あの、これって?」
「新しい能力ちからを授けたわ。あとで確認するといいわ。」
ヤッパリそういうことか。
・・ということは、これから神殿をひとつ尋ねるたびに、スキルを授かるってこと?
今でさえチートなのに、一体全体どうなっちゃうんだろ?
「あ、ありがとうございます。」
「別にいいのよ。(決まっていることだから)」
「え?」
いまなんて言った?
『きまってる』?
「ん?なんでもないわ。それより、ライアンがあなたのこと気に入っちゃってね。」
「は、はあ・・・。」
なんか気になるなあ・・。
「どう?一緒に連れて行って、あげてくれない?」
「ええーー!!だってその仔、神界ここにいるってことは、神獣なんじゃないですか?そんな、勝手に外界したで連れまわしたりしていいんですか?」
「そう、神獣よ。・・ああ大丈夫だから、気にしないで。魂の本体は神界ここに残るから。一緒にいくのは言わば、分体ね。」
いや、そういうことを言っているんじゃないんだけど・・。
「ね、行きたいのよね?」
「ミャーぉ!」
めちゃくちゃ、嬉しそうな顔してるし。
「・・・ハァ。分かった、よろしくなライアン。」
「ミャー!!」
俺は、そばに寄ってきて、脚にスリスリ顔をこすりつけてくるライアンの頭を、撫でてやった。
「じゃあ、そろそろ時間ね。・・あ!分かってるとは思うけど、当分の間はヒタト国には入らないほうがいいわ。」
「行くつもりは無かったですけど、どうしてですか?」
得体の知れない勢力に支配された国だし、国境にはワイバーンとかがうろついているし、危険なのは分かるけど、なんかニンフルサグ神さまの言い方には別な意味があるような・・。
「ん?べつに、行かなきゃそれでいいのよ。・・じゃあ、そのうちまたお会いしましょ。」
「あっ!ちょっと待ってください!」
俺とライアンの身体が、青い光に包まれた。




