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70.バーン、バーン、バン

 今さらですけど、タイトルに意味がある場合とない場合があるので、あまりお気になさらないように、お願い致します。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 --ワイバーン。


 その姿は、巨大な蜥蜴(とかげ)のようにも見える。


 赤銅色をした硬い鱗に覆われた身体。


 鋭く、大きな鉤爪を備えた四肢。


 前脚と一体となった大きな翼。



 ドラゴンの亜種、劣化版などと言われることもあるが、(れっき)としたSランクの魔物である。


 先ほどの攻撃は、長い尻尾の一振りだったようで、地面には筋状の深い溝ができていた。



 完全に、俺をターゲットにしているな・・・。


 紅の混じる金色の大きな目で、ジッと見つめてくる。


 爬虫類特有の縦に長い瞳のせいで、喜怒哀楽はわかりづらい。



「グギャーオ!!」



 一声鳴いて、またしても火炎を吐いてきた。


 俺は、飛び退りすさりながら、特大のウォーターボールをお見舞する。



「「「セイヤ!」」」


「「セイヤさん!」」




 エルやガイヤさん、銀狼のメーバーが、一斉に叫んだ。


 火炎と水球がぶつかり、盛大に水蒸気を撒き散らしながらも、水球の勢いが勝ってドンドン押し返していく。



「大丈夫!」



 俺は、エルたちにそう返すと、水球がワイバーンの巨大な顔面にぶつかる寸前で、サンダーバレットと放った。


 それと同時に、ショートソードに氷属性の魔力を付与して、跳躍によって一気に詰め寄っていった。



 水球が顔面にぶつかって四散し、その視界を妨げた直後に、強烈な雷撃がワイバーンの濡れた身体に直撃する。


 反撃に移ろうとしていた身体は硬直してしまい、懐に飛び込んできた俺の動きに対応できなくなった。



「いっくぜーーっ!!」



 俺は、鱗が比較的薄くて軟らかい、首の内側部分を十文字じゅうもんじに切り裂いた。


 思いの外抵抗の少ない手応えで、銀色に光る刃がワイバーンの首に吸い込まれ、傷口が大きく開いていく。



「・・・・・!」



 咆哮をあげようとしたワイバーンだったが、もはやそれは叶わなかった。


 ーーそして、切り開かれた傷口から全身へと、白色化が瞬く間に広がっていく・・。


 完全に全身が霜で覆われて、白っぽく変色した瞬間、ワイバーンの身体から浮力が無くなり、地面へ向かって落下していった。



「ガッシャーーーン!!」



 地面に衝突した瞬間、ガラスが砕けるような音がして、ワイバーンの身体は粉々になった。


 着地して、バックステップで落下地点から離れた俺は、四方八方に飛び散る破片に、片膝をついて、右腕をかざして頭部をを守る。 




 ・・・・数十秒後、あたりに静寂が戻るのを待って、俺はゆっくりと顔を上げた。



「セイヤ!」



 エルが駆け寄ってきて、飛びついた。



「大丈夫?怪我はない?」


「あ、ああ。このとおり、大丈夫みたいだ。」



 俺は、立ち上がって手を広げてみせた。



「良かった!」



 エルは、天使のような笑顔で言った。


 めちゃくちゃ、カワイイ・・・。



「あ、ありがとう。」



 俺は、あまりの顔の近さと、その可愛さで、ドギマギしながら何故かお礼を言っていた。



「おう、お二人さん。仲が良くて、イチャイチャするのは構わんが、いつまでそうしている気だい?」



 銀狼のシンさんが、ニヤニヤ微笑いながら、腕を組んで言ってきた。



「「え?」」



 俺とエルが、顔を見合わせる。



「「あっ!」」



 抱き合ったままの状態だったのに気づき、慌てて離れた。


 他の冒険者たちも、微笑っている。



「まあ、ご無事で何よりでした。・・それにしてもセイヤさん、あなたはいったい・・・。」



 ガイヤさんは、ギルド職員としては冒険者に対して『様』付けだが、ギルドの外では『さん』呼びだ。


 --そんなことはどうでもいいが、やっぱり、つい1ヶ月前に冒険者登録をしたばかりの俺が、Sランクのワイバーンを、1人で倒してしまったことに、戸惑いが隠せないようだった。



「ま、いいじゃない。これで、依頼は完了よね?」



 エルがいつもの表情に戻って、まだ何かいいたげなガイヤさんに言った。

 


「・・・いや、この先に最後の村があるはずですので、そこの様子を確認して完了です。」



 ガイヤさんは、緊張した面持ちでそう言った。


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