69.蒲焼き食べてたらゴメンなさい
一瞬俺は、帰りたくなった。
だって流石に、地面を埋め尽くす細長い物体を見たら、普通、生理的にキツイでしょ?
サーペントは・・まあ、いいですよ。
顔はドラゴンだし、ヒレみたいなの付いてるし、それなりに風格がある。
でも、ワームはねえ・・。
デカイのはいいんですよ?
大蛇らしくて。
でもね、そいつらの間の隙間を埋めるように、うじゃうじゃ、うねうねしているミミズのデッカイの?
まじで、吐きそうになったわ・・。
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戦いは、先制攻撃に続いて、範囲魔法の攻撃で、徐々にではあるが、敵の数が減って行った。
ただ、火属性の魔法で焼かれたワームの残骸を見すぎた俺は、当分の間は、蒲焼きは食べれないなと思った・・・この世界にあればの話しだけど。
ーーそして、いよいよ俺たちの出番となる。
シャムシールを構えたエルと、ショートソードを手にした俺は、魔法攻撃によって、一瞬開いた空間に、素早く飛び出した。
互いに背中を合わせ、右周りに回転しながら敵を次々に斬り伏せていく。
小さかった俺たちの周りの空間は、その回転に合わせて、徐々に広がっていった。
ーーそして。
俺たちは、いつの間にか、敵の集団のど真ん中で、輪舞曲ロンドを踊るようにクルクルと軽やかに舞っていた。
魔物たちは、行進をやめ、エルと俺の踊りの輪の中に吸い込まれて行く・・・。
・・・やがて、魔物たちの歩みの変化に気づいた、他の冒険者たちは、自分たちの攻撃の手を止めて、その不思議な光景に目を奪われていた。
灯火に誘われて、吸い寄せられる羽虫のような光景に・・・。
「グギャーーーーオ!!」
最後のサーペントが、エルのシャムシールによって、斬り伏せられる瞬間、冒険者たちの頭上から、耳をつんざく咆哮が聞こえた。
エルの姿に見とれていた冒険者たちは、一瞬、反応が遅れた。
咆哮のした方を向いた時には、目の前に紅蓮の炎が迫っていた。
冒険者たちが、その炎に一瞬にして包まれる。
エルは、目を見開いてその場で固まってしまっている。
俺は慌てて、みんなの頭上に、ウォーターウォールを全力で展開した。
紅蓮の炎は、水の壁に阻まれ、ぶつかり合った場所から、凄まじい水蒸気が発生する。
「みんな、大丈夫ですか?!」
俺は、魔法を維持しながら、冒険者たちに声をかけた。
「だ、大丈夫だ・・・。」
「ガイヤさん!無事だったんですね。」
「ああ、ちょっと油断してしまったようだ。他の人たちは・・・。」
俺とガイヤさんは、周りを見回す。
「俺たちも、なんとか・・・。」
「良かった!」
銀狼のメンバーも、無事だった。
でも・・。
「残ったのは、たったの18人か・・・。」
ガイヤさんが、肩を落とす。
「ガイヤさんすいません。俺がもっと早く魔法を・・!」
「セイヤ、危ない!」
俺が、仲間たちの惨状に気をとられて、自分の反応の遅れに泣言を言おうとしていた時、エルの叫ぶ声と共に、彼女に思いっきり突き飛ばされた。
「ズザシャシャシャー!」
さっきまで俺が立っていた地面が、何かに大きくえぐり取られた。
上空を見上げると、炎は消えていて、立ち込める水蒸気の間から、巨大な影が姿を現した。
「ワ、ワイバーン・・・。」
ガイヤさんが、掠れた声で呟いた。




