68.ニョロニョロはお好き?
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「?!!」
突然、エルが無言で御者台に移っていった。
「どうした?エル!」
「帰ってきたわ。」
エルが指差す方向を見ると。
遠くから、こちらへ向かって高速で駆けてくる人影があった。
「ピューッ!」
エルが、短い口笛を吹いて合図を送ると、周りを走っていた馬車が一斉に止まった。
「魔物の居場所を、確認しました。」
人影は、俺たちの乗った馬車の、一つ前に止まった馬車に近づくと、その馬車から顔を出した男の人に告げた。
「ご苦労さまでした。では、一旦ここで集まって、作戦会議を開きましょう。」
報告を聞いた男の人 ~サブマスのガイヤさん~ が、エルの方を振り向いて見て言った。
「分かった。」
エルはうなずいて、馬車からとび降りると、ガイヤさんの乗った馬車の方へと歩き出した。
その様子を見て、他の馬車からも、次々と冒険者たちが降りてきて、集まってくる。
今回の討伐依頼は、ここ最近では最大の規模で行われるため、全体のまとめ役として、冒険者ギルドから、ガイヤさんが来ていたのだった。
普段であれば、唯一のAランク冒険者である、エルが指揮をとっていたそうだが、今回はいつにも増して他の町からの新参者が多いため、若いエルでは、従わないものも出てくる可能性も懸念しての措置だった。
俺はその話を聞いた時、プライドの高いエルが怒り出すんじゃないかと、内心ハラハラしていたのだが、意外とあっさりしたもので、ひとこと「あたしの邪魔をしないんだったら、どっちでもいいわ。」と言っただけだった。
さっき戻ってきた、斥候に行っていた人(ちなみに、山猫の獣人さんでした。)の情報では、いま辿っている、ヒタト国へと続く街道が谷あいに差し掛かったあたり・・だいたいここから10000キュピ(5キロメートル)ほど行ったあたりに、おびただしい数のワームがいるらしい。
さらに、数十匹のサーペントも混じっているという。
どちらも、蛇の魔物の一種でドラゴンの眷属だ。
「おいおい、下手したらワイバーンまで出てくるんじゃねえのか?ガハハハハ!」
ダンさんが、だみ声で軽口をたたいた。
・・いや、それ・・フラグだし・・・。
「あたしが、そんなデカブツ見逃すわけ無いだろ!」
斥候の山猫の獣人のお姉さんが、ダンさんを睨んでいる。
それも、フラグ・・。
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作戦と言っても、街道の両側は切り立った崖で、敵の背後にまわりこむ余地は無く、正面から行かざるを得ないため、選択肢は限られていた。
馬車はこの場に留めて、最低限の見張りを残し、徒歩で近づくことになった。
そして、敵の数が尋常でないため、まずは敵の姿を視認したら、慎重に近づき、遠距離攻撃が可能な者が最大射程から先制攻撃を加える。
その後、相対距離が縮まった段階で、広範囲の攻撃魔法を放てる者が、できるだけ多くの敵を殲滅し、その援護に中距離攻撃の得意なものがつく。
当然さらに距離が縮まる前に、ヘイト担当のタンクたちが前面に出て、近接攻撃の得意なアタッカーが突出してくる敵を潰していく。
補助担当は適宜、バフ、デバフ、ヒールをかけていく。
・・・と、そんなところだった。
俺は、エルからあらかじめ、今回は魔法を極力使わないで、エルとともに前線でアタッカーをするように言われていた。
「だって、あんたが手加減無しで魔法を、ぶっ放しまくったら、どうなると思っているの?」
だそうだ。
たしかにまだ、魔法操作に慣れていないけど、そんな言い方しなくても・・・。
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「さて、ではみなさん。準備ができたら、出発しましょう。」
ガイヤさんの指示で、俺たちは魔物たちの元へと進みはじめた。




