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ヒタト国との国境地帯は、4000キュピ(2000m)級の山々が連なり、河と渓谷が縦横に走る荒涼とした土地だった。
エア村を、Bランク以上のパーティー数組と、Cランク以上のソロの冒険者たち数十人と共に、国境へ向けて北上した。
馬車に乗り合って、半日ほど進むと、標高が高くなり、木々もまばらになってくる。
数日前に、魔物の目撃情報のあったあたりだ。
「おい坊主、エルちゃんの足を引っ張るんじゃねえぞ。お前のせいで、怪我させたら、ただじゃおかねえからな。」
目の前に座った、4人組のBランクパーティー『銀狼』のひとり、シンという名前の若い男が言った。
人族の、20代半ばくらいで、爽やかなイケメンだ。
彼がこのパーティーのリーダーで、Bランクの冒険者らしい。
「ええ、気をつけます。こういう、大規模な討伐依頼は初めてなんで、ご迷惑をお掛けしないように頑張ります。」
「シン、あんまりプレッシャーをかけるんじゃないよ。エルがパートナーに選んだんだ、少なくとも足でまといにはならないだろうさ。ねえ、坊や。」
俺が、礼儀正しく頭を下げて答えていると、シンさんの隣に座っていた、猫の獣人のお姉さんが言ってきた。
20代前半の、ナイスバディな色っぽいお姉さんだ。
Cランクの冒険者で、ミーシャというらしい。
シャム猫っぽい。
「は、はい。そうならないように、努力しま・・うっ。」
「大丈夫。実戦経験を積ませるために連れてきたんだから、そうならないように、あたしがなんとかする。」
ミーシャさんのスラリと伸びた脚に、思わず目が行っていた俺の脇腹を、目立たないように肘打ちをして、エルが答えを横取りした。
「ま、そりゃそうだな。いつも、エルちゃんが最後は全部持っていっちまうもんな。がははは!」
対面の一番奥から、ザラザラした大声で言ってきたのは、虎の獣人の大男。
3人目のメンバー、ダンさんだ。
30代半ばくらいで、とにかく声がでかい。
「それはいつも、お前の詰めが甘いからだ。」
俺たちの座っている側、俺、エルときて、ひとつ席を開けて、ダンさんの向かい側に座る、ダークエルフのお姉さん~カリナさんが、ボソリとつぶやいた。
灰色のローブを着て、フードを目深にかぶっているので、あまり表情は見えないが、ものすごい美人なのは確かだ。
年齢は・・・きっと100歳は超えてると思うけど、怖くて聞けませんでした。
「がははは、目の前の敵に集中すると、周りが見えなくなってしまってな。面目ねえ!」
「ちっ、単細胞が・・。」
「ハハハハ。ダンさん、俺もそういうとこあるから、ちょっと分かります。」
なんかその場の雰囲気が険悪になりそうなので、俺はとりあえずフォローしようとした。
「は~~・・だから、あんたはいつ迄たってもヘッポコなのよ。」
なのに、横でエルが深い溜め息をついて、つぶやいた。
「「ぷっ!」」
すると、シンさんとミーシャさんが同時に吹き出していた。




