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66.よろしくですです

 ヒタト国との国境地帯は、4000キュピ(2000m)級の山々が連なり、河と渓谷が縦横に走る荒涼とした土地だった。



 エア村を、Bランク以上のパーティー数組と、Cランク以上のソロの冒険者たち数十人と共に、国境へ向けて北上した。


 馬車に乗り合って、半日ほど進むと、標高が高くなり、木々もまばらになってくる。


 数日前に、魔物の目撃情報のあったあたりだ。



「おい坊主、エルちゃんの足を引っ張るんじゃねえぞ。お前のせいで、怪我させたら、ただじゃおかねえからな。」



 目の前に座った、4人組のBランクパーティー『銀狼』のひとり、シンという名前の若い男が言った。


 人族の、20代半ばくらいで、爽やかなイケメンだ。


 彼がこのパーティーのリーダーで、Bランクの冒険者らしい。



「ええ、気をつけます。こういう、大規模な討伐依頼は初めてなんで、ご迷惑をお掛けしないように頑張ります。」


「シン、あんまりプレッシャーをかけるんじゃないよ。エルがパートナーに選んだんだ、少なくとも足でまといにはならないだろうさ。ねえ、坊や。」



 俺が、礼儀正しく頭を下げて答えていると、シンさんの隣に座っていた、猫の獣人のお姉さんが言ってきた。


 20代前半の、ナイスバディな色っぽいお姉さんだ。


 Cランクの冒険者で、ミーシャというらしい。


 シャム猫っぽい。



「は、はい。そうならないように、努力しま・・うっ。」


「大丈夫。実戦経験を積ませるために連れてきたんだから、そうならないように、あたしがなんとかする。」



 ミーシャさんのスラリと伸びた脚に、思わず目が行っていた俺の脇腹を、目立たないように肘打ちをして、エルが答えを横取りした。



「ま、そりゃそうだな。いつも、エルちゃんが最後は全部持っていっちまうもんな。がははは!」



 対面の一番奥から、ザラザラした大声で言ってきたのは、虎の獣人の大男。


 3人目のメンバー、ダンさんだ。


 30代半ばくらいで、とにかく声がでかい。



「それはいつも、お前の詰めが甘いからだ。」



 俺たちの座っている側、俺、エルときて、ひとつ席を開けて、ダンさんの向かい側に座る、ダークエルフのお姉さん~カリナさんが、ボソリとつぶやいた。


 灰色のローブを着て、フードを目深にかぶっているので、あまり表情は見えないが、ものすごい美人なのは確かだ。


 年齢は・・・きっと100歳は超えてると思うけど、怖くて聞けませんでした。



「がははは、目の前の敵に集中すると、周りが見えなくなってしまってな。面目ねえ!」


「ちっ、単細胞が・・。」


「ハハハハ。ダンさん、俺もそういうとこあるから、ちょっと分かります。」



 なんかその場の雰囲気が険悪になりそうなので、俺はとりあえずフォローしようとした。



「は~~・・だから、あんたはいつ迄たってもヘッポコなのよ。」



 なのに、横でエルが深い溜め息をついて、つぶやいた。



「「ぷっ!」」



 すると、シンさんとミーシャさんが同時に吹き出していた。


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