65.パリピー?
ボアのシンジャー焼き・・ようするに、豚の生姜焼きが今日の夕飯だった。
「おいひい。」
「うん、うまいな。」
コリンは相変わらず、口の中がいっぱいになるまで、詰め込む主義だ。
「俺さ、もうそろそろこの村を出て、ほかの町へ行ってみようと思うんだ。」
ベトベトのコリンの手を拭きながら、俺はエルに言った。
「どうして?」
「え~と・・ほら、俺たちすごく遠いところから旅してきたって言っただろ?」
「そういえば、そう言ってたわね。・・ふっ。」
ん?
いま、ちょっと微笑った?
「で、この国にもだいぶ慣れてきたし、ほかの町とか・・・例えば王都とかに行ってみたいなと思ってさ。」
「そう・・・。ほかの国には行かないの?」
「あ、いや。そのうち行こうと思ってる。」
「コリンも行く~。」
「ああ、もちろん一緒に行こうな。」
俺は、コリンの頭をナデナデする。
「あたしも行こうかな。」
「え?」
いま、なんて言った?
「あたしも、一緒に行ってあげてもいいわよ。」
「エルは、この村唯一のAランクの冒険者で、ここを拠点にしているんだろ?」
「今はね。」
「だったら、この村を離れたら不味いんじゃないのか?それに、国境近くに出現する高ランクの魔物のこともあるし・・。」
さっきのサルクさんの話の続きを、エルから聞いた所によると、ヒタトと国境を接する国は、いまいるハルバト国ともう一つウルト国があるらしい。
そして、最近、頻繁に現れるようになった、上位ランクの魔物の討伐に両国は苦しんでいるという。
ただし、ウルト国は国境の2/3が川であるため、残りの北側の1/3を守ればよかったし、近くに大きな集落はなかったため、大きな被害はでていないらしい。
一方で、ハルバト国は国境の近くに、この辺では大きい集落のエア村があり、王都イシュタルも比較的近いため、正規軍が定期的に討伐にまわっているのだった。
ただし、正規軍が来ていないときには、地元のエア村のギルドが、正規の討伐依頼としてAランクのエルはじめ、B、Cランクの冒険者に依頼して対応していたのだった。
「別に冒険者には、そこにずっと留まっていなければならないという決まりはないわ。それに、最近は王都からBランクの冒険者が結構な数やってきているし、いざとなれば、ギルマスやサブマスがいるわ。」
どうりで、最近この宿にも初めて見る冒険者が多いのか。
「サブマスって、黒髪イケメン・・・ガイヤさんか。ガイヤさんてランクはなに?」
「Aランクよ。」
おー!
さすが、冒険者ギルドのサブマスター。
だてに、イケメンじゃないな。
「そいうえば、ギルマスさんて、まだ会ったことないなあ・・。」
「会わないほうがいいわよ。」
いつも無表情なエルが、すごいイヤな顔をした。
「どうして?ギルマスになるくらいだから、Aランク以上なんだろ?」
エルが言い澱んでいる。
「・・・・そう、Aランクよ。実力はSランクでもいいくらいなんだけど・・・。」
???
実力があるのになっていない?
ギルドマスターになれてるのに?
????
「でも、エルを連れて行くなら、さすがに挨拶ぐらいしとかないと・・。」
「不要よ。」
この話は終わりとばかりに、断言されてしまった。
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話題を変えよう。
「でもどうして、一緒に来てくれるんだい?」
「あたしと一緒じゃ、嫌なの?」
「イヤじゃない、嫌じゃない。エルみたいなカワイイ娘とこれからも一緒にいられるなら、むしろ、嬉しいくらいで・・。」
「だ、だったら、いいじゃない。」
顔を真っ赤にしているが、怒っているわけじゃなさそうだ。
むしろ、恥ずかしがってる?
「でも・・。」
「あんたの戦い方が、いつまでたってもヘッポコだからよ!」
「スイマセン。」
そっぽを向かれてしまった。
「それより、この村を出る前に、あたしとパーティーを組んで、国境付近の討伐依頼を受けるわよ。」
「だって俺まだE・・・。」
「パーティーは、パーティー内最上位ランク者のランクが、そのパーティーのランクよ。だから、あたしたちのパーティーは、Aランク。」
「あ、そうか。」
「そういうこと。」




