61.ずう~~~~~~っと。
「ふにゅ~~~。」
エルに色々とレクチャーを受けて、ようやく開放された俺は、コリンと自分たちの部屋へ戻ってきた。
シカルを結構飲んだので、腹がパンパンだ。
「にゅにゅにゅ~~。」
「コリン~。一緒に寝るとは言ったけど、なんでベッドの上で転がっているんだ?」
「にゅ?だって、楽しいんだもん。」
「さよデスカ・・・。」
それにしても、本当にこの子がエルと手合わせできたのか?
「なあコリン、できたらでいいんだけど、お願いしてもいいか?」
「ぷは~~!にゃに?」
俺の枕に顔をうずめて、香りを堪能していたコリンが、キョトンとこっちを見る。
何をやっているんだか・・。
「お前のステータスを、見せてくれないかな?」
駄目なのは分かっている。
だが、見ておかないと駄目なような気もするんだ。
「・・・・・セイヤお兄ちゃんになら、見せてもいいけど。・・・そのかわり、コリンのお願いも聞いてくれる?」
コリンが、なぜかとても不安そうな顔で聞いてきた。
どうして、そんな表情をするんだろう?
「あ、ああ。・・聞くよ。な、なんだ?」
「・・・・コリンのこと嫌いにならないで欲しいの。そして、ずぅーーと一緒にいて欲しいの。」
ベッドの上に四つん這いになり、俺の顔を覗き込む。
「・・・・き、嫌いになるわけ無いだろう。コリンは、可愛くてとってもいい子だし・・。」
「何があっても、一緒にいてくれる?」
なぜ、そんなに不安そうな顔をするんだ?
可愛いと言われたコリンの表情は、嬉しそうに微笑んではいたが、それはとても儚い笑顔だった。
「大丈夫だ、どんなことがあっても、一緒にいる。」
俺は、そんなコリンの頭に手を置いて、優しく撫でてあげながら言った。
「ほんと?コリンのこと、独りにしない?」
「ああ、ホントだ。」
「良かった!」
コリンは、心底安堵したような表情で、笑った。
「じゃあ、見てもいいよ。」
「ありがとう、見せてもらうな。」
「うん。」
俺は、コリンに『鑑定』スキルを使った。
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「・・・・・突っ込みどころが多すぎる。」
全体的に、チートスキルなのはいい・・・良かないけど。
「ウカノミタマの加護ってどういうことだ?」
「だってコリン、きつねだもん。」
そうじゃなくて、ウカノミタマさまって地球(日本)の神様だろ?
それに、俺と同じ加護・・・。
「それに、称号が「追いかけしもの」?」
何を、誰を追いかけるんだ?
「・・・。」
コリンが、両手の人差し指を突き合わせて、モジモジしている。
「・・・を追いかけてきたの。」
「ん?」
「セイヤお兄ちゃんを追いかけてきたの!!!」
それって!
え!?
「俺、きつねに知り合いいないぞ?」
「助けてくれたじゃない!黒くておっきくて、目玉がこ~んなのに!」
コリンはそう言って、人差し指と親指で、まぶたを広げてみせた。
「ああ!あの時の!!」
あの子ぎつねが、コリン?
「まさか!」
「えへ。」
コリン、おまえ・・・どうして・・。
「なんでこんなとこまで、追いかけてきたんだよ!せっかく助かったのに!」
「だって・・・。」
異世界に来たということは、地球では、死んじゃったってことだろ?
「それに、親きつねとか、兄弟とかが、悲しむだろ。」
「みんな死んじゃったもん・・。」
「なっ、だからってお前まで死ぬことは!」
「コリンは、ちゃんと長生きしたよ。セイヤお兄ちゃんのおかげで。」
え?
「天寿を全うして死ぬときに、ウカノミタマさまが、あたしのお願いを聞いてくれたの。」
「お願い?」
「セイヤお兄ちゃんにもう一度会いたいって、会ってずっと一緒にいたいって。」
「コリン、おまえ・・・。」
俺は、頭が真っ白になって、胸の奥が熱くなる感覚がした。
「いいよね?一緒にいていいよね?」
「いいに決まってるだろ!!」
俺は、コリンのことを力いっぱい抱きしめていた。




