60.聞き捨てなりません
そのあと直ぐに、夕飯の準備が出来て、サリーさんが、料理を運んできたため、それ以上続けることが出来なくなってしまった。
「ところで、依頼の方は上手くいったの?」
食べはじめて暫くしたら、エルが聞いてきた。
「ああ、薬草もバッチリたくさん採れたし、ゴブリンも結構な数を討伐できた。」
「へー、どんな感じで?」
コリンは、あまり興味がないらしく、スプーンをもくもくと口へ運んでいるが、エルが詳しい話を尋ねてくる。
俺は、今日の様子をはじめから、一部始終話して、最後にこう言った。
「でも、魔物を斬るのは、初めてでもないのに、ゴブリンの首を斬ったときとか、ナイトを刺したとき、なんか人殺しをしたような気分になっちゃたんだよな。前のときは、無我夢中だったからかな?」
「まあゴブリンは、人型の魔物だし、ナイトなんて、普通のゴブリンよりも、知性があるし、より人っぽいからね。でも、そんなんじゃ、これから冒険者としてやっていけないわよ。護衛任務とかだと、人相手のことも多いし。」
「だよなぁ・・・。まあ、次からは大丈夫だと思うよ。」
精神異常耐性スキルがあるし、心構えの問題だろう・・。
「それよりも、あんたの戦い方とか、特に魔法の使い方だけどさ。」
「ん?やっぱ、なんか問題ある?」
色んな能力があるって言ったって、所詮、素人だしな。
使いこなせてない、自覚はある。
「ムダが多くて、単純過ぎる。」
「!」
でも、面と向かって言われると、結構ショックだ。
そんな俺の顔を見て、コリンは、キョトンとしている。
ソースが、口のまわりに付いてんぞ。
「魔法っていうのは、可変の能力なのよ。聞いている限りじゃ、どの魔法も、ほぼほぼ全力で放ってない?ゴブリン程度に、そんなことしてたら、魔力の無駄使い。」
「ハア、まあ、確かに。」
「それに、たぶんあんたの実力なら、剣技だけで、その程度の魔物はいけるはず。」
「そ、そうかな?」
「そうよ。疑うなら、明日あたしと、模擬戦してみましょう?」
「へ?」
Aランクのエルと?
「セイヤお兄ちゃんも、コンコンコンやるの?」
「あ?ああ、たぶんな・・・。」
笑顔で聞いてくるコリンに、俺は曖昧にうなずいた。
「それと・・・。」
「は、はい!?」
エルさん、ちょっと声色が怖いんですけど・・・。
「魔力操作とかなんとか言ってなかった?」
やべっ、固有能力バラしちゃった。
「どんな能力なのかな?」
「いや、ここではちょっと・・他の人もいるし・・・ね。」
食堂には、他の泊り客も夕飯を食べているのだ。
「じゃあ、明日の模擬戦のときにでもいい?」
「は、はい。」
目も怖いです。
そのあとも、『そういう場合は、こう。』とか、『そのときは、こう。』とか、色々とアドバイスをしてもらった。
正直、ちょっと疲れた。
だってエルさん、いつもよりものすごく真剣なんだもん。
有難いんだけど、・・・・何でだ?




