59.いや、聞いてないし
「ただいま~。」
俺は、『月のらくだ館』の扉を開けた。
「おかえり~~~!!」
「おかえり」
食堂の方から返事が聞こえたと思ったら、茶色い弾丸が飛んできた。
「ボスッ。」
飛んできた弾丸が、勢いよく俺の懐に納まった。
「うっ。」
「待ってたの!」
ケモミミの頭を、俺の胸にグリグリ押し付けて、コリンが言ってくる。
まるで、長い間離れ離れになっていたみたいだ。
「いい子にしてたか?」
俺はその頭を撫でてやる。
「してた!」
グリグリをやめて、顔をあげると、にっこり笑った。
「そうか、偉いぞ。」
「えへへ。」
俺に褒められて、コリンの笑顔がより一層大きくなった。
「で、今日は何してたんだ?」
俺は、抱きついたままのコリンを引き連れて、食堂へ向かった。
食堂では、エルが窓際のテーブルに着いて、シカルを飲んでいた。
「お疲れ。」
エルは、シカルの入ったジョッキを少し上げて、言ってきた。
口角が、僅かに上がっている。
「エルこそ、今日一日コリンの相手ありがとな。」
俺とコリンは、エルの向かいの席に座った。
「別に・・・結構楽しかったわよ。ね、コリン。」
「うん!楽しかった!!」
エルがそう言って、コリンのことを見て微笑んだ。
「そんなに楽しいことしたのか?あ、俺にもシカルください!」
「はいよ!」
俺は、2人の顔を見比べながら、厨房のサルクさんに声をかけた。
「うんとね、剣術とかの練習したの!」
「ほう、持ち方とか、構え方とかか?」
「ううん!コンコンコンて。」
「コンコンコン?」
コリンの言っていることが、よく分からん。
「模擬戦形式で、打ち合いをしたのよ。」
「は!?」
「そう、カンカンカンて!」
おいおい、どういうことだ?
「エル、だってコリンはまだ5歳で、武器すら持ったこと無いはずだぞ?なんで、打ち合いが出来るんだよ!」
「そうお?結構いい線いってたわよ。あたしでも、楽しめるくらいには。」
いやいやいや、そんなはずないだろ。
「ゴブリンとスライムに囲まれて、ボロボロになってたんだぞ?」
「なんかね、コリン強くなった・・・みたいな?」
そこで、小首をかしげられても、信じられないんですけど。
「ほらよ、シカル。エルのおかわりも、ついでに置いとくぞ。」
俺がコリンを見て固まっていると、サルクさんがドンと、ジョッキを2つテーブルに置いていった。
「ありがと。」
「あ、ありがとうございます。」
俺はとりあえず、ジョッキを持ち上げて、シカルを喉に流し込んだ。
「プハーッ!・・・で、強くなったってどういうことだ?」
半分ほど飲んで、コリンに尋ねる。
「ん~~~~と。え~~~~と。・・・・○ア○さまに貰った?」
「ん?なんだって?」
珍しく、コリンが歯切れが悪い。
俺は耳に手をあてて、コリンの口元に持っていった。
「・・・・・エア神さまに貰ったの。」
「え~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」
ということは・・。
「コリン、おまえ。エア神さまに会ったのか?」
コリンが、コクリとうなずいた。
まじか・・・。
「どうしておまえが、エア神さまに会えるんだ?」
「・・ヒミツ?」
顔を赤くして、はにかんでいる。
「なっ!・・しようがない。それで何故おまえが、エア神さまに力を貰えたんだ?」
ステータスを人に見せるのも、見るのも基本駄目だからな。
称号とかを見れば、何か分かるかもしれないが・・・。
「ん~それもホントはヒミツだけど、コリンがセイヤお兄ちゃんと、ずっと一緒にいたいってお願いしたら、くれたの。一緒にいるためには必要だからって。」
たしかに、これから俺は邪神たちと戦うことになる。
その時コリンがそばにいたら・・・・俺は全力で守ろうとするだろう。
そしてその時に、コリンに何の力もなければ、当然俺への負担は相当なものになるだろう。
だからか?
コリンにも戦わせるというのか?
自分自身を守れというのか?
「エア神さまは、何を考えているんだ!そんな危険なこと!!」
俺は、思わず大きな声を出してしまった。
「大丈夫だと思うよ。いまでも結構いけると思うけど、たぶんもっと強くなる。」
エルが、コリンの顔を見つめて、そう断言した。
その顔は、神々しささえ感じる、美しさだった。
「いや、そんな・・・。」
俺は、ジョッキを握りしめたまま、何も言えなくなっていた。
「うん、コリンは大丈夫!ぜったい、セイヤお兄ちゃんと一緒にいるんだもん!!!」
な、なんだ?
コリンの顔も、いつもの可愛いではなく、綺麗としか言えない顔だった。
2人のこの自信は、どこから来るんだ?
そもそも、なんか違和感が・・・・・。




