58.ご報告
「おう!あんちゃん、おかえり。成果はバッチリかい?」
城門まで来ると、門番が声をかけてきた。
「あっ!ど、どうも。なんとか、うまくいきました。」
ボーッと歩いていた俺は、突然声をかけられて、我に返った。
「そうかい、それは良かった。なんか、冴えない顔をしていたから、駄目だったのかと思ってな。」
「そんな顔してました?」
「ああ、酸っぱいもんでも舐めたような顔してた。」
「ハハハ、大丈夫です!依頼達成しましたから。」
「だったら、若えもんがそんな辛気臭い顔してねえで、シャンとして歩けや!」
「ハイ!そうします。じゃ、失礼します!」
「おう!がんばれよ!!」
俺は、背筋を伸ばすと、大股で門をくぐって、村内へ入っていった。
「まずは、達成報告しちゃうか。」
大通りを、冒険者ギルドへ向かって進む。
建物に入ると、例の黒髪イケメンのカウンターへ向かった。
「こんにちは、依頼の達成報告に着ました。」
「いらっしゃいませ。では、ギルドカードをご提示ください。」
丁寧にお辞儀をして、カードを請求してきた。
「はい、お願いします。」
「失礼いたします。・・・・セイヤさま、今回の受注依頼は、Eランク依頼のHP回復ポーション用の薬草の採取と、Dランク依頼のゴブリンの討伐ですね?」
「はい、そうです。」
「では、薬草と討伐部位をお出し願えますか?」
「えと・・結構、量があるんですけど。」
「あっ!左様ですか。では、中庭へ。」
隣のカウンターの猫人のお姉さんに言付けして、中庭へ向かったので、俺もあとを付いていく。
「そういえば、職員さんてお名前なんて言うんですか?」
いい加減、『黒髪イケメン』じゃあね・・。
「申し遅れました、わたくし、当ギルドのサブマスターを兼務しております、ガイヤと申します。以後、よろしくお願いいたします。」
「えっ!!サブマスターさんだったんですか?こ、こちらこそよろしくお願いします。」
俺は驚いて、頭を下げた。
「あっ、そんなにかしこまらないでください。村のギルドのサブマスターなんて、大したことないですから。普通にガイヤと呼んでください。」
「じゃ、じゃあガイヤさんで・・。」
そうこうしているうちに、中庭に着いた。
「さっ、ここに出して頂けますか?」
「はい。」
俺は、アイテムボックスから、採取した薬草と討伐した魔物を取り出して、中庭に並べた。
「・・・・・・・・。」
「あのう・・・ガイヤさん?」
固まっているガイヤさんに、声をかけた。
「はっ!あ、ああ、すいません。思ってたよりちょっと、数が多かったもので。」
ガイヤさんは、そう言うと少し顔をひきつらせていた。
「えーと・・・・・・。」
薬草の株を数え、魔石を何かの道具を使って鑑定しながら数えていった。
「・・・・お待たせしました、状態の非常に良い薬草が500株に、ゴブリンの魔石が150個、ゴブリンソードの魔石が10個、ゴブリンナイトの魔石が1個ですね?」
「そうです。」
ようやく確認を終えたガイヤさんが、こちらを見て言ってきた。
「では、カウンターで精算いたしますので、お戻りください。」
「分かりました。じゃあ、先に行ってますね。」
ガイヤさんは、係のドワーフさんに声をかけてから、カウンターへ戻るので、俺は先に行くことにした。
「セイヤさま、お待たせ致しました。では、報酬と魔石の買取分を合わせまして、575000シケルになりました。」
「そんなに?」
「申し訳ございませんが、ゴブリンソードとゴブリンナイトについては、依頼に入っておりませんので、買取分のみになってしまいました。」
「いや、それは全然かまわないんですけど。結構いきましたね。」
「ええ、薬草の数自体が、普通の方の50倍近いですので。ゴブリンも、10倍くらいですかね。」
「そ、そうなんですか?」
「はい。失礼ですが、セイヤさまは、いまレベルは?」
「えーと、確かレベル2じゃ・・あ!3に上がってた。」
「えっ!レベル3ですか!?それで、この成果ってありえないんですけど!」
ガイヤさんはかなり驚いたらしく、声が大きくなっている。
「レベル3!?」
その声を聞いた、隣の猫人のお姉さんが、こっちを振り向いて言った。
「な、なんか不味いですか?」
俺は、恐る恐るガイヤさんに聞いた。
「いえ、ゴブリンソードやゴブリンナイトにしたって、EやDランクの魔物なので、セイヤさまのランクで倒せないことはないのですけど、数が数ですし、あのコロニーをやったんですよね?」
ガイヤさんの口調が、微妙に砕けてきた。
あのコロニーって、やっぱりわざとだったんだ。
「あのコロニーが、どのコロニーのことを指しているのか分かりませんけど、結構近くにあったコロニーでした。」
「・・失礼しました。あの巣穴は、ダンジョンのように、定期的にゴブリンが湧いてくる場所で、かと言って過剰に
増え続けるわけでもないので、初心者冒険者のために残してあるんです。」
「そうだったんですね。」
「ただ、それは1匹2匹を相手にする場合であって、あの規模のコロニー自体を襲撃するというのは、Cランク以上じゃないと無理なんです。」
「そういうことですか。」
ん~・・若干やらかしたみたいだ。
「詳しいステータスは規定で伺いませんが、セイヤさまなら、あっという間にランクが上がりそうですね。」
「そ、そうかもしれませんね。」
「期待しています!」
「あたしも!!」
ガイヤさんだけじゃなく、隣のお姉さんにまで、キラキラした目で言われてしまった。
「じゃ、じゃあ、そろそろ行きますんで。」
「あっ!申し訳ございませんでした。こちらが、お渡しするお金です。」
いたたまれなくなった俺が、切り出すと、ガイヤさんが慌ててお金の入った革袋を、カウンターの上に置いた。
「ありがとうございます。じゃあ、また来ます!」
「「はい、お待ちしております!!」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
現在の所持金、888000シケル。




