表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/123

56.あちち

「□▲○◇!!」



 俺が距離を取るのを見たゴブリンナイトは、すぐに指示を飛ばした。


 9匹のゴブリンソードに、5~6匹のゴブリンが引き連れられて、俺のまわりを取り囲む。


 囲みの直径は30mほど。


 それぞれに、棍棒や木剣を構えて、囲みを狭める素振りを見せる。



『サンドウォール』



 俺は、ゴブリンたちの外側を囲むように、土の壁をぐるりと作り上げた。



「「「「「「「「「キシッシ!」」」」」」」」」



 それを見た、ゴブリンナイトたちが、狼狽えるどころか、奇妙な笑い声を上げた。


 俺がもう、逃げることができないと思ったのだろう。


 59匹が、ゆっくりと一歩を踏み出そうとした。



『ファイアウォール』



 その瞬間俺は、今度は自分とゴブリンたちの間、奴らの足元に火の壁を放った。


 凄まじい豪火にゴブリンたちが後ずさる。


 だが、土の壁に阻まれてそれ以上の逃げ場がない。



『ウインドウォール』



 土の壁を背に、爪先立つ奴らに、さらに内側から、風の壁を外側へ向かって吹き付けてやった。


 断末魔をあげたゴブリンたちは、数秒の後、消し炭となって燃え尽きた。


 炎の輪が消えた地面の上には、59個の魔石が円状に残っているだけだった。



「タアー!」



 俺が身体強化を使って、土の壁を駆け上がって、上から見下ろした時、仲間の断末魔を聞いて状況を悟ったゴブリンナイトが、巣穴へ逃げ込むべく、背を見せた瞬間だった。



「逃がすわけねえだろ。」



 俺はそのまま、一気に壁の上からゴブリンナイトのすぐ側に飛び降りると、その背中にショートソードを力いっぱい突き刺した。


 剣は、チェーンメイルを物ともせず、根元まで突き刺さった。



「どガシャン!」



 ゴブリンナイトは派手な音を立てて、背中に剣を立てたまま、前のめりに倒れた。








「ズサッ。」



 ゴブリンナイトが倒れたのを目にした俺は、なぜか全身から力が抜けて、その場に膝から座り込んでしまった。



「・・・・。」



 剣を放してしまった両手を、静かに目の前に持ってきてみると、ワナワナと震えている。





「おわっ・・・たのか?」



 手から目線を上げると、倒れ伏すゴブリンナイトが見えた。




「ブシュッ。」



 俺は両手を地面につくと、そのまま這い進んで、ゴブリンナイトの背中から生えたショートソードを、引き抜いた。



「クッ・・。」



 ショートソードを杖がわりにして、立ち上がる。




「土の壁・・・。」



 ゆっくりとうしろを振り向くと、壁の向こうから煙が立ち昇っていた。




「魔石を回収しなくちゃ・・・。」




 精神異常耐性が効いているはずなのに、体が重い。



 俺はそのあと、ノロノロとただ機械的に、魔石を拾い集め、死体から取り出す作業を繰り返した。




 ・・・・・ゴブリンナイトのチェーンメイルは、穴が開いてしまったし、剥ぎ取る気分になれず、そのままにした。




「さて・・・帰るか。」




 死体を一箇所に集めてファイヤボールで焼却し、全ての作業が済むと、俺はゆっくりとその場をあとにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ