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55.上も下も気をつけよう

「じゃあ、ゴブリン指定で索敵してみますか。」



 俺は川で手に付いた土を洗い落とすと、討伐依頼の方をこなすために、『空間把握』スキルを展開させた。



「10000キュビ以内に・・・いないなあ。倍に範囲を拡げるか。」



 お、反応あり!



「東に18500キュビに、100匹!?」



 なんで、こんなに村から近い所に、コロニーが?



「エア村の冒険者ギルドなにやってんだ?



 ワザとか?



「まあいい、行ってみよう。」



 俺は、とりあえずこの場所をマーキングしておいて、『身体強化』を使ったまま、ゴブリンのコロニーを目指した。




********




「巣穴?」



 目的の場所近くに着いて、岩陰から様子を伺うと、でかい岩がいくつか組み合わさった塊を入り口にして、地面に開いた大きな穴から、何匹ものゴブリンが出入りしているのが見えた。


 地上に出ているのだけで、100匹。



「あれ、もっと中にいるな・・・げっ!」



 他の個体とちょっと違うのが、出てきた。


 手に木剣を持っている。



「ゴブリンソードか。」



 この分だと、巣穴の奥にはゴブリンナイトくらい居ても、不思議はないな。


 ん~、それにしても、『空間把握』は地下にもある程度、範囲を広げておかないとだめだな。


 

「てか、今それやれよってことか。」



 ・・・やっぱり。



「ゴブリンがあと50匹と、ゴブリンソードが10匹にゴブリンナイト1匹ね。」



 さて、どうしますかね。



『ウインドバレット』



 俺は、自分の隠れている位置から、見える範囲の30匹ほどのゴブリンに対して、風の弾丸を放った。



「○△☓!」



 突然、まわりの仲間がバタバタと倒れたのを見て、何が起きたのか分からずに、混乱するゴブリンたちだったが、地表に出ていたゴブリンソードが、俺の隠れている岩を指差して何事かを叫んだ。


 すると、ゴブリンたちは一斉に俺の方を振り向いて、近づいてこようとする。



『ウインドバレット』


『サンドウォール』



 俺は、ゴブリンたちの動き出しよりも早く、岩陰から飛び出すと、直ぐ様、新たに目視できた20匹ほどをウインドバレットで倒した。


 そして合間に、新たに近づいて見えてくる奴らの、足元の地面を盛り上げる。



『ウインドバレット』



 盛り上がった地面につまずいて、倒れた奴らや、立ち止まった奴らを、さらに30匹倒した。



『サンドウォール』



 残りが20匹ほどになった頃、騒ぎに気づいた巣穴の中の奴らが、出てこようとした。


 俺は、一旦サンドウォールで入り口を塞いでやって、アイテムボックスからショートソードとジャンビーヤを取り出した。


 続けざまの魔法攻撃と、巣穴の入り口が突然塞がってしまったことで、ゴブリンたちの混乱はさらにひどいことになっている。



「ほら!いくぜ!!」



 俺は、20匹あまりのゴブリンが、ひとかたまりになって右往左往しているところへ、剣を構えながら突っ込んでいった。



「ザスッ!」



 最初の一撃目で、ゴブリンの首が吹き飛んだ。



「うっ。」



 一瞬、初めて生物を斬る感覚に、大きな違和感を感じた。


 ほんの僅かな罪悪感?


 それとも、快感?


 嫌悪感?



「とりゃ!」



 それも僅かな瞬間であって、すぐに何事もなかったかのように、間近に迫った奴の首筋にジャンビーヤを突き刺す。


 『精神異常耐性』の、おかげか?



 ゴブリンソードの木剣は、俺のショートソードと打ち合った瞬間に、簡単に折れてしまって、意味をなさなかった。


 戦闘は、1分足らずで修了した。



「ゴゴゴゴ・・・ドガン!」



 その時、巣穴の入り口を塞いでいた、土の壁が崩れ落ちた。


 舞い上がる土埃の向こうから、ゴブリンたちとともにニ回り大きい個体が姿を現した。



「ガシャン。」



 チェーンメイルを着ている。


 ゴブリンナイトだ。


 ゾロゾロと、残りのゴブリンソードも出てくる。



『サンドウォール』



 俺は、少し距離を取るため、土の壁で障害物を作った上で、後方に飛び退った。

 

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