42.願ったこと
いっぱい、なんか出てきた~!
「それが、お前さんのステータスじゃ。全言語スキルを持っとるから、読めるじゃろ?」
「うん、読める~。でも、意味わかんな~い。」
「ありゃりゃ、まあよいわ。その加護のところに、『ウカノミタマの加護』となっとるじゃろ。」
「うん。」
「そして称号に、『追いかけしもの(神の眷属)』となっておる。」
「ほ~。」
「いや、お前さんのことじゃよ?」
「そうなんだ~、で?」
「なんか、調子狂うのう。」
「ゴメンナサイ。」
「謝らなくてもよい。要するにお前さん、ウカノミタマに頼んで、こっちの世界に飛ばしてもらったんじゃろ?」
ウカノミタマ・・・・・・・・・あっ!
「ウカお姐さま!!」
「そうじゃ、そのウカお姐さまに、何か願わなかったか?」
「ん~とね・・。」
********
『キキキィー!』
ママに呼ばれて、道を渡ろうとしたら、おっきな音がした。
音のした方を見たら、黒い大きな奴が、目玉を見開いてこっちに向かってきた。
あたしは思わず、道の真中で竦んで、固まってしまった。
そいつは、そのままどっかへ行っちゃたけど、今度は反対側から、またおんなじ様な奴が走ってきた。
「ぶつかる!」と、思った。
その時、何かがあたしに覆いかぶさって、まわりが真っ暗になった。
『ガツッ。』
すごい音がして、あたしは僅かに衝撃を感じたけど、どこも痛くはなかった。
『い、痛てえ!』
誰かの声がした。
その瞬間、ふわっとした感じがして、自分の体重が無くなったみたいになった。
ふわふわした感覚の中、何かの暖かい体温を感じていた。
『茶色くて・・・ん、きつね色?モフモフしてて、とっても柔らかく肌触りがいい。子犬?耳が大きいな。シッポもふさふさ。・・・きつね?・・なんでこんな街なかに、キツネが?ん?狐?マジで?』
「ん?何言ってんの?これは、誰かの声?」
次の瞬間、ものすごい衝撃が来た。
でも、全然痛くない。
まわりが少し明るくなって、あたしの目に映ったのは、人間の男の子の瞳だった。
「きれいな目・・・。」
男の子が目をつむってしまうと、あたしを包み込んでいた力が無くなった。
男の子の鼻に、あたしの鼻をくっつけてみたけど、男の子は目を覚まさなかった。
唇を舌でナメてみたけど、もう何もしゃべらなかった。
「早く来なさい!」
ママが、向こうから呼んできた。
あたしは、何回も振り返りながら、ママのところへ走っていった。
その間も、男の子は、じっとしたままだった。
「だから、道を渡るときは気をつけなさいって、言ったでしょ!」
ママが、ものすごく怒ってきた。
「ゴメンナサイ、ママ。でも、あの男の子どうしちゃったの?」
「あの人は、あなたのことを庇ってくれたのよ。あの人のお陰で、あなたは生きているのよ。」
えっ!
「あの男の子は、あたしの代わりに死んじゃったの?」
「そうよ、でももう仕方のないことよ。いつまでも、こんな目立つ所にはいられないわ。お礼を言って、行きましょう。」
「・・・・・・うん。わかった。」
あのあとすぐに、ママやパパ、兄妹たちは皆んな、あの大きな奴に殺されたり、野犬に噛み殺されてしまった。
あたしは、ひとりぼっちになってしまって、一生懸命に神さまにお願いをした。
「あの男の子に恩返しがしたい。せめて、もう一度会いたい。ううん、ずっと一緒にいたい。」
それから、5年が経った。
あたしは、毎日、まいにち、神さまにお願いをしていた。
ひとりぼっちのまま、やがてあたしの寿命がくる時が来た。
あたしが目を閉じようとすると、あたりが白い光に包まれて、暖かくなるのを感じた。
『目を開けなさい。』
遠くから、女の人の声がした。
目をゆっくりと開けると、目の前に、真っ白な毛並みの、尻尾が9つあるひとが座っていた。
『ずいぶん待たせちゃったわね。』
「あなたは誰ですか?」
『ごめんごめん、あたしはウカノミタマよ。ウカって呼んでね。』
「ウカお姐さまは、もしかして神さまですか?」
『そうよ、よく分かったわね。』
「だって、すごく綺麗ですもん。」
『嬉しいこと言ってくれるわね。あなた、ずっとあたしにお願いしてたでしょ?』
「あ!聞いてくれてたんだ。」
『聞こえてたわよ。でもね、生きている間は、どうすることも出来なかったのよね。』
「じゃあ、あたしはもう死んじゃったの?」
『そうね、でもようやく、あなたの願いを聞いてあげれるわ。』
「えっ!ほんとう!?」
『うん、5年も待たせちゃったけど。』
「やったあ~!早く、あの男の子の所に行きたい!」
『その前に、一つだけ聞いて。いまあの子は、こことは別の世界にいるんだけど、あなたがあっちに行くには、そのままの姿では行けないわ。仮に行ったとしても、側にはいられない。』
「じゃあ、どうすれば?」
『あたしが、転生させてあげる。』
「転生?」
『そう、転生すれば、あの子と一緒にいても問題なくなるわ。』
「全然かまわない!あたし、転生する!」
『分かったわ、でもただ転生するだけじゃ、すぐに足手まといになるだけだから、あたしからのお詫びの印にも、能力を与えるわね。』
「お詫びって?」
『ん?こっちの話よ。じゃあ、もう一度目をつむって。』
「うん。」
********
「うん!お願いした!!」
「長い回想じゃのう・・・・。」
「ふへ?」
「いや、なんでもない。何を願った?」
「セイヤお兄ちゃんと、ずっと一緒にいたいって、お願いしたの!」
「そうか、やはりな。ウカは、他に何か言ってなかったか?」
「『お詫びの印』って言ってた。」
「なるほどの・・。なあ、コリンや。」
「なあに?エア神さま。」
「本当はな、こっちの神の了解なしに、転生や転移をさせてはならんのじゃ。」
「コリンは、来ちゃイケなかったの?」
「フム。いけない訳ではないが、どうやらウカのやつが、無断でお前さんを転生させたようなのじゃ。」
「そうなんだ・・・。ウカお姐さま、怒られちゃうの?」
「ま、今回はヨシとしよう。」
「やったー!エア神さまありがとう。」
「ところで、これから先もセイヤと一緒にいたいか?」
「いたい!!」
「では、そのままのステータスでは、難しかろう。特別にワシから、プレゼントをあげよう。」
「ぷれぜんと?」
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