39.おねがい
「お前さんは、イナちゃんに召喚された時、なぜ呼ばれたか聞かされたかな?」
「なんか、バリエーションがどうとか・・。」
「フム。それは表向きの理由じゃ。」
「え!違ったんですか?」
「表向きはと言ったじゃろ、それもちゃんとした理由の一つじゃ。だが、本当の理由は別にある。」
じゃあ、俺は何のために呼ばれたんだ?
俺が、心底驚いていると、エア神様は更に続けた。
「ところでお前さんに、ここで問題じゃ。」
「へ?」
いきなりクイズ?
「この世界を創造したのは誰じゃろう?」
いや、それはやっぱり・・・。
「エア神様じゃないんですか?あれっ、でも、イナンナ様も造ったって言ってたような?」
「無論、ワシじゃ。だが、答えは違う。ワシであってワシではない。イナちゃんであって、イナちゃんでもない。」
「???」
どゆこと?
「ワシらが新たに世界を創造する以前に、二人の神がいた。アプスとティアマトじゃ。」
「ハア。」
先代の神様ということか?
「最初に淡水から生じたのがアプスであり、塩水から生じたのがティアマトなのじゃが、ティアマトはアプスの妻でもあった。」
ティアマトは女神様ということか。
「ワシをはじめ、全ての神とこの世界の元になったのが、アプスとティアマトなのじゃ。」
「え、じゃあ二人は、エア神様の両親?」
「まあ、ちょっと違うが、あながち間違いでもない。」
んーよく分からん。
「理解しづらいかもしれんが、神というのは親子であっても、ある意味同格なのじゃ。」
「神様は神、ということか。」
「そうじゃ。そして、アプスとティアマトから生み出された神々は、世界を創造し、それぞれに自らが加護するものたちのために動きはじめた。」
「自分勝手に動きはじめたということ?」
「うむ。アプスは、それが許せなかった。」
「どうしてですか、神様同士、同格ならそれぞれの考えで行動してもいいんじゃないですか?」
さっきの話と違うじゃん!
「原初神たるプライドが、そうさせた、としか言えんな。」
「プライドですか・・・。」
「神々を許せなかったアプスは、彼らを葬り去ろうとした。・・・ワシを含めてな。」
コワ。
「そのことを察知したワシは、一計を案じて、アプスを倒すことに成功した。」
「お父さん殺しちゃったんですか!?」
「みなを助けるため、仕方なかったのじゃ。」
なんか、エグい。
「しかし、残されたティアマトは納得しなかった。」
旦那が殺されたんだ、当然だよな。
「ティアマトは邪神となり、息子の1人であるキングウに、至高神の権威の象徴たる『天命の粘土版』を与え、『11の魔物』を使役させて、神々を含めた全世界を滅ぼすよう命じたのじゃ。」
「まさか・・・。」
たしかイナンナが、『邪神はいるわ。もしかしたら邪神の討伐を頼まれるかもね。』って、言ってたな!
冗談かと思ってた。
「察しが良いのう。お前さんには、キングウに打ち勝って、『天命の粘土版』を奪い、『11の魔物』を倒し、邪神ティアマトを葬って、世界を救ってほしい。」
チートを貰って、ちょっと浮かれていた部分はあったけど・・・これは、相当重い使命だぞ。
どうしよう・・・。
「あの、これってキャンセルとか出来ないんですよね?(2回目)」
「すまぬのう・・・。」
ヤッパリ。
「・・・やるだけやってみます。」
「おお!さすがは、イナちゃんお墨付き。向こうの世界の前世でも大活躍だったらしいからの。」
「あ!それ気になってたやつ。その前世って、俺は誰だったんですか?」
「なんじゃ、知らんのか?最初は、塩土老翁じゃろ、次が日本武尊、最後が、武内宿禰だったかな。」
「なんだそりゃ!」
なんか、聞いたことのある名前ばっかじゃん!
何やった人かは、よく分かんないけど。
「で、具体的にどうすればいいんですか?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
武内宿禰だから、タケちゃんなんです。
※プロローグ参照




