38.待つわ~、まつわ~、いつまでも、ま~つ~わ
「司祭様、お久しぶりでございます。その節は、お世話になりました。」
エルが、その女性の前で片膝を曲げて、頭を下げた。
すげえ、なんか女王様と貴族のお姫様みたいだ。
その光景は、映画の中のワンシーンのようえ、俺は思わず見とれてしまった。
「今日はどうしました?」
「はい、友人を連れてきました。」
「ほう・・・、この方が。」
司祭様が、こちらを見た。
長い金色の髪、陶磁器のような透明な白い肌、金色を含んだアクアマリンの瞳、そして先の尖った耳。
いわゆる、ハイエルフというやつだ。
「司祭様・・。」
「エリスでいいですよ。」
「エリス様、彼がエア神様にお祈りを捧げてもよろしいでしょうか?」
耳にかかった髪を、白く細い作り物のような指でかき上げて、エリス様は俺の顔をじっと見つめた。
「・・・よろしいでしょう、お入りなさい。」
神殿の中は薄暗かったが、入り口の上に空いた小さな窓から、一筋の陽の光が真っ直ぐに奥へと差し込んでいた。
そしてその光の線の先には、大理石で造られた、長い髭を蓄え、威厳のある姿のエア神の像が立っていた。
「さあ、神の前で両膝をつき、祈りなさい。」
エリス様が、優しく低い声で言った。
三人で神像の前で跪き、両手を合わせた。
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そこは見覚えのある、白い空間だった。
「いや~、よく来たな。待っておったぞ。」
またもや、おんなじパターン。
うしろから声がした。
「あなただれ?」
振り返ると、さっき見た像にそっくりな爺さんが立っていた。
ただし、髪と髭の色は、白に近い銀色で、瞳の色は金色だ。
「分かっているくせに、ワザとじゃろ。」
「分かりました?あまりにも、同じパターンなもんで、つい。」
拗ねる爺さんに、俺は頭に手をやった。
「待ってたって、どういうことですか?俺がここに来ることを知っていたんですか?」
「そりゃあ、神じゃからな。大抵のことは、知っておる。」
「はあ、まあ、そうなんでしょうけど。」
「立ち話もなんじゃて、お茶でも飲みながらにしようかの?それとも、ビールが良いか?」
「いや、お茶でいいです。」
エア神様が、腕を一振りする。
テーブルと椅子が出現する・・・・ソファじゃないのかい!
「さ、座りなされ。」
テーブルの上には、ティーセット。
エア神様が、紅茶をカップに注いでくれる。
「ありがとうございます。」
お礼を言って、一口すする。
うまい。
「そうか、良かった。ではそろそろ、本題に入っても良いかな?」
「はい、ぜひ。」




