37.そこに何がある
表に出る前に、とりあえず、ジャンビーヤ(ダガーのこと)を除いて、邪魔になるので俺とコリンの武器武具は、アイテムボックッスに仕舞った。
あっそうだ、着替えた服も一緒に入れとこう。
エルは、一瞬驚いた顔をしたが、別に何も言わなかった。
「最後はジッグラトね。」
エルの歩いて行く方について行く。
大通りを、さらに村の中心部へと進む。
やがて、高さ15mほどの、小山が見えてきた。
「え?ピラミッド?」
小山と思ったのは、日干し煉瓦を積み上げた、2層構造のどでかい構造物だった。
先端は尖っていなくて、どちらかというと南米の古代文明のピラミッドに近い形だ。
四方から階段が上まで続いている。
「あれが、ジッグラト?」
「そうよ、守護神エアを祀る神殿が、頂上にあるわ。」
スゲー!なんか感動する。
世界遺産とか、平泉の中尊寺くらいしか行ったことないけど、こういう感じなんだろうな。
素直に感激した。
「ふわーー。」
近くまで来て、コリンがジッグラトを見上げ、感嘆の声を漏らした。
「デカい・・・。」
「そうね、でも王都のは、こんなものじゃないわ。」
マジか・・。
「行くわよ。」
エルが、階段の上り口へ向かっていく。
「こんにちは、お祈りですか?」
上り口には、浅黒い肌の若い神官が立っていた。
かなりの美男子である。
・・・おっ!ダークエルフ。
「こんにちは、司祭様はきょうはいらっしゃいますか?」
エルが珍しく、丁寧な口調になっている。
「はい、神殿の方にいらっしゃいますよ。」
「そうですか、良かったです。はい、これ。」
「ありがとうございます。あなたに、よいお導きを。」
ん?エルがなんか渡したぞ。
「なあ、エル。いま何渡したの?」
「拝観料よ。」
「えーー、拝観料取るのぉ!」
てか、なんでそこだけ日本風?
「昔と違って、人口が少ないから、寄付だけじゃこれを維持できないのよ。だから、いつからか拝観料っていうのを徴集するようになったのよ。たしか、噂では50年前くらいに、タロウとかいう人がこの方法を伝えたとかいう話もあるわ。」
それ絶対、日本人。
それ絶対、転移転生者。
「あれが神殿よ。」
そうこうする内に、ジッグラトの頂上に着いた。
頂上はやはり平になっていて、広さは学校のグラウンドくらいはある。
真ん中の奥の方に、大理石づくりの四角い建物がある。
その建物を指差して、エルが言った。
「なんか、あそこだけ空気が違う。」
「そりゃそうよ。あそこに、エア神様がいらっしゃるんですもの。」
俺が、思わず正直な感想をもらすと、エルが言った。
「いつまでも、ここから眺めててもしょうがないから、行くよ。」
エルはそう言って、四角い建物へ向かって歩き始めた。
「お、おい!待ってくれ。」
俺は、慌ててエルを追いかけた。
コリンはいつの間にか、俺の左腕に右手をからめて、ぶら下がっている。
おも・・く、ないか。
「久しぶりじゃな、エルよ。」
建物の入口には、綺麗な水色の衣装を纏った、美しい女性が立っていた。




