36.みつけにくいものですか~
服屋を出たあと、今度は大通りを村の中心部へと向かった。
月のらくだ館の前を通り過ぎ、さらに進むと、左手の一軒の店へ入った。
「親父さんいる?」
エルが、店の奥の方に声をかけた。
店の中は、武器、防具の類が、所狭しと置いてある。
雑然として、無秩序に置かれている状態を見ると、ドン・キホーテを思い出す。
ただ、商品も丁寧に磨き込まれており、ホコリは被っていない。
「おう。」
辛抱強く待っていると、野太い声が聞こえてきた。
ガタガタと、何かをひっくり返す音が聞こえたあと、ひげもじゃ、ずんぐりむっくりの爺さんが出てきた。
「なんじゃ、ウチに売りモンはないぞ。」
いや、ここにいっぱい並んでいるじゃありませんか。
「なに相変わらず、バカなこと言っているの。あたしよ。」
「おー、おー。エルじゃないか。元気にしとったか?」
「ん、元気。」
「そうか、そうか。相変わらずカワイイのう。」
ひげもじゃの厳つい爺さんを、バカ呼ばわりするエルも凄いが、そのエルの顔を見て、途端に目尻を下げてご機嫌をとる爺さんもなんだかなあ~・・・。
出てきたのは、道具関係でおなじみの、ドワーフの爺さんだった。
相当皺くちゃなんだが、いったい何歳なんだろう?
「今日は友達に、武具を売って欲しい。」
ん?いま友達って言ったよな?
おー!友達って思ってくれているんだ。
なんか嬉しい。
「ほう、お前に友達ができたか。それは、それは・・・フム。」
爺さんは、俺の顔をまじまじと見て、そのあとコリンのことも見た。
「フム。で、何がほしい?」
??なんかよく分からんが、合格らしい。
どうしようかな。
「ショートソードと、あと解体用にも使えるダガーみたいなやつを。」
「なるほど・・・・じゃあ、これじゃな。」
俺の要望を聞いて、奥の棚から二本の剣を出してきた。
どちらも、すこし透明感のある銀色の刀身をしていて、持ち手には何かの図象の象嵌が施してある。
「お前さん、レベルはまだまだじゃが、魔法もそこそこ扱えるのじゃろ?その剣は、ミスリルが20%含まれとる。最初に持つ分には十分じゃろ。」
「は、はい。ありがとうございます。」
なんで分かるんだ?
他人のステータスって見れないんだろ?
「フン、不思議そうな顔をしておるな。200年もこの稼業をしていれば、相手がどれくらいの実力かぐらい見れば分かるわ。」
「そ、そうなんですか?」
スゲー!
長寿族すげー!
「そっちのお嬢ちゃんには、これなんかどうじゃ?」
コリンに渡してきたのは、ショートスピアだった。
柄の部分が透明感のある真っ白な素材で、穂先は俺のと同じ素材のようだ。
「穂先は、あんちゃんの剣と同じ、ミスリル入りのもので、柄の部分は鋼よりも硬い焼物じゃ。」
もしかして、セラミックス?
でも強度がなあ、衝撃に弱いだろ・・・安定化ジルコニア、あれか。
なんでそんなもの知っているか・・・・うちの父さんが、某メーカーでファインセラミックスの研究やってたんだよね。
それにしてもどうやって作ったんだ?
まあ、ミスリルっていうファンタジー素材がある時点で、なんでもありか。
「わー、ありがとう!お爺いちゃん!!」
「こら、コリン。ここで振り回すな!」
嬉しいのは分かるが、こんな狭いところで振り回されたら、危なくてかなわん!
「あと、防具はあまり体の動きを邪魔しないのがいいんですけど。」
「じゃあ、革製のやつで要所をカバーするだけにしておけ。」
「分かりました。」
そう言って、レザー・アーマーを2セット出してくれた。
「あとは、何か必要になれば、また来ればいいわ。」
エルが言ってくる。
「そうだな、あの~お爺さん。」
「ガンツじゃ。」
「ガンツさん、全部でおいくらですか?」
「200万シケル。」
「ええっ!そんなに持ち合わせないんですけど・・・。」
「と、言うところじゃが、エルの友達ということで、くれてやるよ。」
そう言うと、ガンツさんは店の奥へ行こうとした。
「い、いいんですか?なんか、悪いような・・。」
「未来への投資じゃ。若いものが、細かいことを気にするな。」
言いながら、本当に店の奥に消えてしまった。
「ありがとうございます!」
「ます!」
俺が、ガンツさんの消えた方へ頭を下げてお礼を言うと、コリンも真似して隣で頭を下げた。




