表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/123

33.ようやく就寝?



「さあ、お前たちも、もう寝なさい。」



 サリーさんが、サム&サニーに声をかけた。



「「はーい。コリンちゃん、また明日ね~。おやすみなさーい。」」



 2人は、コリンに手を振りながら、奥に消えた。


 そういえば、ようやく2人の見分け方が分かった。


 右耳の先っぽが、折れているのが、サム。


 左耳が折れているのが、サニーだ。



「それじゃあ、お部屋へ案内しますね。」


「お願いします。」



 サリーさんのあとについて、二階へと上がっていく。


 階段を上がると、内廊下があって、両側に部屋が6つづつ並んでいる。


 サリーさんは、どんどん廊下を進んでいった。



「ここが、エルちゃんの部屋ね。」



 奥へ向かって右手に並んでいる部屋の内、突き当りから2番めの部屋を示して、サリーさんが教えてくれた。



「さあ、この部屋があなた達の部屋ね。6号室よ。」



 エルの部屋の隣、一番奥の部屋の前でサリーさんが立ち止まって、扉を示した。


 木製の扉には、大きく6と彫ってある。


 つまり、エルの部屋は5号室だ。


 サリーさんが、取っ手のところに魔力を流すと、カチャリと音がした。


 どうやら、あれで鍵が開くみたいだ。



「さあ、ここに二人で手をかざして、魔力を流してみて。」



 サリーさんに言われるまま、俺とコリンは、取っ手のところに手をかざし、せ~ので魔力を流した。


 すると、またカチャリと音がする。



「最初にあたしの魔力で初期化して、あなた達の魔力を登録したのよ。」


「へーすごいですね。」


「あら、あなたの故郷には無いの?」


「え、ええ。田舎なもんで、鍵が必要ないんです。」


「ずいぶんと平和なところね。」


「ま、まあ・・・ははは。」



 俺は頭に手を当てて、曖昧に笑ってごまかした。



「じゃあ、もう一度魔力を流してごらん。」


「コリンがやる!」


「やりたいのか?じゃ、やってごらん。」


「うん!」



 コリンが魔力を流すと、カチャリとなって鍵が開いた。



「さあ、ここがあなた達の部屋よ。」



 すると、サリーさんが扉を大きく開けて、中を見せてくれた。



「「わあ~。」」



 2人で感嘆の声を上げた。


 中は、15畳くらいの広さで、シングルサイズのベッドが2つ並んで置いてある。


 ベッドは木製のフレームで、マットレスは無いみたいだ。


 その代わり、あたたかそうな獣の毛皮が敷いてある。


 掛け布団はなく、畳んで置いてある、薄手の毛皮がその役目をするのだろう。



「バフッ。」



 コリンが、ベッドにダイブした。


 大きな窓にはガラスはなく、今は雨戸が閉まっている。


 窓際には、テーブルと椅子、テーブルの上には白い釉薬のかかった焼き物の花瓶に花がいけてある。



「あの水瓶の、水を使ってね。」



 サリーさんが、指差す壁際の方に水瓶があった。



「分かりました。」



 とても清潔で、居心地が良さそうな部屋の様子に、俺は安心した。



「それじゃあ、なにか分からないことがあったら、なんでもいいから言ってくださいね。」


「はい、ありがとうございます。」



 一通り中を確認した俺のことを見て、サリーさんが言ってくれた。



「コリンちゃん、おやすみなさい。」


「おやすみなさ~い。」



 ベッドでゴロゴロ転げ回っているコリンに、サリーさんは声をかけると、部屋を出ていった。




「さてと・・。」



 ひとまず、俺もベッドに腰を掛けると、相変わらず転げているコリンの姿をぼーっと眺めた。


 それにしても、こうして落ち着いてみると、なんの疑問もなく、コリンと一緒に宿屋に泊まることにしたけど、そもそもこれで良かったんだろうか?


 親兄弟も親戚もいないみたいなこと言っていたけど、この村のしかるべき機関なり、施設なりに、迷子とかの届け出みたいなことをするべきだったんじゃないか?



「・・・でも、ほっとけないよな。」


「ふぇ?」



 俺が、ボソリとつぶやくと、転げる動きを止めて、コリンがこっちを見た。



「コリンは、俺と一緒にいるんでいいのか?」


「うん!セイヤお兄ちゃんと一緒がいいの!!」



 コリンの目を見つめて、俺がそう尋ねると、コリンはこっちのベッドに飛び移ってきて、抱きついてきた。



「ちょっ、わ、分かったから、のいてくれ!」



 そのままベッドの上に仰向けに倒れ込む形になり、抱きついてきたコリンがのしかかって、肺が圧迫される。



「一緒がいいんだもん・・・。」



 コリンは、俺の訴えもむなしく、抱きついたままだ。


 ん?



「コリンおまえ・・・泣いているのか?」



 ブレザーをはだけ、むき出しになったシャツに、顔を押し付けるようにしていたコリンだったのだが、その部分のシャツが濡れているのに気がついた。



「・・がいいんだもん。」



 俺は、顔を押し付けたままのコリンの頭を撫でてやった。


 三角耳が小さく震えている。



「・・・分かった、一緒にいような。」



 コリンは、顔を押し付けたまま、無言でうなずいた。




 15分ほど、そのままの状態でいたが、やがて、規則正しい寝息が聞こえてきた。


 どうやら、泣き疲れたのか、あるいは安心したのか、抱きついたまま寝てしまったようだ。


 俺は、そっとコリンを引きはがすと、隣のベッドへ抱きかかえて移動して寝かせると、毛皮の毛布を掛けてやった。


 そして、コリンの頭をもう一度撫でてやり、自分のベッドに戻って、仰向けに寝っ転がった。



 見知らぬ天井を見つめ、今日あったことを思い出してみた。



「俺、この世界でやっていけるのかな?」



 元の世界のことも、考えてみる。



「みんなどうしてるかな?俺のことはどういう扱いになっているんだろう?心配してるのかな?」



 首を横にして、隣のベッドのコリンの寝顔を見る。



「こんな小さな子と一緒に、大丈夫だろうか?俺、ほんとはまだ高校生だし、自分のことだけで一杯一杯かもしれないのに。」


「セイヤお兄ちゃん。」



 その時、コリンがにっこり微笑んで、寝言を言った。



「やるだけやって、頑張るしかないか・・・。」



 俺は、その笑顔を見て、何かふっきれるものを感じて、そうつぶやいていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ